上巻のレビューに書いたけれど、じっくり読むという目標が、もろくもくずれ、下巻は3日で読み終えてしまっている。

これは退屈になって斜め読みになったのではなく、物語の面白さに追われてしまったため。

上巻のレビューに書いたように、大枠の展開は今までの作品と似たような感じなんだけど、それは読んだ後だから言えることであって、著者のストーリーテリングの手妻に翻弄されてしまった下巻の読書体験であったといえる。

加えて下巻になってからは展開も時制と語り手と場所が縦横無尽に入れ替わりたち替わり現れるため、じっくりと考えながら読み進めると却って混乱することになると思う。そう思えるほど大量に敷き詰められた布石がつぎつぎとひっくり返っては眼前に現れていくような下巻の展開だから。

本書は再読をし、何度も味わったほうがよい類の小説ではないかと思うし、再読を促すことこそがまさに著者の狙いなのではないかと勘ぐってしまう程だ。

物語の喜びを味わわせることのできることが作家の喜びであるとすれば本書は成功していると思う。何せ、本書は死んだ作家が生前に残した意思が、死後に大活躍する話だからだ。著者が死して後も、物語を読む喜びを読者に与え続けられるとすれば、それこそ作家冥利に尽きること間違いないだろう。

著者の作家としての意思が込められた小説として、後世に残る作品ではないかと思う。

’11/12/14-’11/12/17


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