2014 FIFAワールドカップ Brasilの開催中に読んだ本書。旬なタイトルもあって手に取った。

著者はすでに「あるキング」という野球の不条理さと文化を逆手に取った興味深い一冊をものしている。本書もそれに連なり、サッカーに絡めたエスプリの効いた一篇であることを期待した。キッカーとキーパーの息詰まる駆け引きと、その周辺の思惑を絡めたような。

著者にかかると、こうなるか、という意表を突く展開である。精彩を欠いたサッカープレーヤーの逡巡。そこには何があったのか。脅迫や八百長など、可能性は様々に浮上する。著者の筆は時空を自在に行き、謎の登場人物や出来事を次々に繰り出す。SFめいた展開があるかと思えば、サッカーというスポーツの本質を突くような描写もある。単なる謎解きに終わらない展開もよい。それでいて、冒頭に提示された謎はさわやかな読後感を残して物語は閉じられる。

旬な時期に本書を読めてよかったと思えた一冊。

’14/06/18-‘14/06/19


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