魅力的な題名に加え、冒頭に並べられる記事抜粋や会話の切り取りに引き込まれる。さまよえるオランダ人、キューブリック監督の2001年宇宙の旅の当初の題名、新元号「光文」のスクープ記事、2万5千分の1の地図作成の方法、ボストンブラウンブレッドの作り方。

長崎の軍艦島を思わせる無人島が本書の舞台である。それぞれ違う死因で、ほぼ同じ時期に亡くなった三人の男。一人は、廃墟の屋上での全身打撲による墜落死。もう一人は感電死。残りの一人は老衰。彼らが持っていたものは、何の脈略もないように思える、上記に挙げた記事。電気のない無人島でどうやって亡くなったのか、そして記事の意味は・・・まさに魅力的なpuzzleのピースである。

登場人物はたった二人。事件の捜査のために島を訪れた二人の検事の会話でplayは進行する。

推理小説であるため、本稿ではこれ以上の内容には触れない。ただ、私にとっては出来上がったpictureで語られる謎解き部分に納得できないものがあった。推理小説は大きく拡げられた謎がすっきりと畳まれることにカタルシスを感じるもの。しかし、本書はその部分が少し弱い。魅力的なpieceが提示されていたが、出来上がった絵に驚きを感じられなかった。

本書は祥伝社文庫の15周年特別書下ろし作品ということだが、ちょっと書き急いだ感じを受けた。著者の他の著作には素晴らしい物が多いだけに残念である。

’14/2/7-’14/2/8


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