難しい本を読んだ後は、軽めの読書を。バランスを取る上で重要なこと。有坂さんの著作は純粋に読書を楽しむには打ってつけの本である。本書のように分かりやすい勧善懲悪がテーマだとなおさら。

人生の後半戦に差し掛かった初老の3人のおっさんが、街の平和を守るという、ありきたりの設定。ありきたりだけど、そこは著者一流のストーリー展開で、面白く読める。著者のうまさは、その場の情景と会話のかみ合わせ方にあるので、するすると読めてしまう。情景とは、この場合、街に湧き上がるトラブルのことである。カツアゲや痴漢、家庭内暴力や非行や詐欺。どの街にもどの家庭でも起きそうな身近なトラブルが、いかにもありそうな感じで書かれている。日常からトラブルの場面転換も、登場人物の会話が活きているので、読者はすんなりと飛び越えられる。

内容はスカッと爽快。何も考えずに読み進むことができる。しかし、それだけでは何も後に残らない。あえて本書に込めた著者のメッセージを拾い上げてみる。

私が読み取ったのは、世代間ギャップの有り方についてだ。本書はただ単におっさんが暴れまくるアクション映画のような代物ではない。そこには、おっさん世代と若い世代の交流があり、その交流の進み具合が、本書の別のテーマである。若い衆がおっさんにファッションセンスを伝授し、おっさんは若い衆に積み重ねた年季の価値を見せつける。本書で一番情けなく書かれているのは、その真ん中のパパママ世代である。世代を超えて受け継がれる何かを、著者はもはや今の日本の中核を担うパパママ世代には求めていないかのようだ。バブルに踊り、高度成長期に寄り掛かった世代には。

国際関係を大上段に構えて考えずとも、国体の有り方について額にしわ寄せて考えずとも、まずは身近なことから解決していこうよ。そのためには年長者の知恵はまだまだ必要だし、おっさんも萎れている場合じゃないよ、若いもんに伝えていかないと日本の国を。という著者なりのメッセージではないかと思う。実際、会話の進め方や話題の取り上げ方など、孫とじいちゃんばあちゃんの世代の差を埋めるためのヒントが本書にはいくつも転がっていると思う。

’14/08/28-‘14/08/29


5 thoughts on “三匹のおっさん

  1. 水谷 学

    有坂さんの作品はkoboを購入した直後に著作の映画化やTVドラマ化が続き、ベストセラーになった作品群にはまりました。

    どの作品も良いのですが、「海の底」、「クジラの彼」で潜水艦モノが好きになり、名作ローレライに出会いました。

    NPO法人樹立に向け長井さんにおすすめなのは「県庁おもてなし課」です。

    観光業をなりわいとする自分にも少々関係があるのでこの本は、一度読んで終わりになる有坂さんの本の中で読み返したことのある数少ない一冊です。

  2. 長井祥和 Post author

    水谷さん、こんばんは。
    ありがとうございます。有坂さんの一連の作品は面白いですよね。
    県庁おもてなし課は既読です。面白いですよね。数えてみたら、三匹のおっさんの18冊後に読んでいるので、そのうちこのコーナーでも取り上げる予定です。

    それよりも図書館○○シリーズをまだ一冊も読んだことがなく、機会をみて読みたいと思っています。

  3. 水谷 学

    図書館戦争は文句なく面白いです。来週CSで映画版が見れるので楽しみです。
    榮倉奈々と岡田准一がハマリ役ですね。
    調べたら映画版で続編が今年の秋に上映されるようです。
    先日ネット上でこんなものを見つけて驚きました。
    有坂さんはこれをネタにしていたんですね。

    図書館の自由に関する宣言

    日 本 図 書 館 協 会 1 9 5 4 採 択 1 9 7 9 改 訂

    図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする。
    1. 日本国憲法は主権が国民に存するとの原理にもとづいており、この国民主権の原理を維持し発展させるためには、国民ひとりひとりが思想・意見を自由に発表し交換すること、すなわち表現の自由の保障が不可欠である
    知る自由は、表現の送り手に対して保障されるべき自由と表裏一体をなすものであり、知る自由の保障があってこそ表現の自由は成立する。
    知る自由は、また、思想・良心の自由をはじめとして、いっさいの基本的人権と密接にかかわり、それらの保障を実現するための基礎的な要件である。それは、憲法が示すように、国民の不断の努力によって保持されなければならない。

     

    2. すべての国民は、いつでもその必要とする資料を入手し利用する権利を有する。この権利を社会的に保障することは、すなわち知る自由を保障することである。図書館は、まさにこのことに責任を負う機関である。

     

    3. 図書館は、権力の介入または社会的圧力に左右されることなく、自らの責任にもとづき、図書館間の相互協力をふくむ図書館の総力をあげて、収集した資料と整備された施設を国民の利用に供するものである。

     

    4. わが国においては、図書館が国民の知る自由を保障するのではなく、国民に対する「思想善導」の機関として、国民の知る自由を妨げる役割さえ果たした歴史的事実があることを忘れてはならない。図書館は、この反省の上に、国民の知る自由を守り、ひろげていく責任を果たすことが必要である。

     

    5. すべての国民は、図書館利用に公平な権利をもっており、人種、信条、性別、年齢やそのおかれている条件等によっていかなる差別もあってはならない。
    外国人も、その権利は保障される。

     

    6. ここに掲げる「図書館の自由」に関する原則は、国民の知る自由を保障するためであって、すべての図書館に基本的に妥当するものである。

    この任務を果たすため、図書館は次のことを確認し実践する。

    第1 図書館は資料収集の自由を有する
    1. 図書館は、国民の知る自由を保障する機関として、国民のあらゆる資料要求にこたえなければならない。

     

    2. 図書館は、自らの責任において作成した収集方針にもとづき資料の選択および収集を行う。その際、
    (1) 多様な、対立する意見のある問題については、それぞれの観点に立つ資料を幅広く収集する。
    (2) 著者の思想的、宗教的、党派的立場にとらわれて、その著作を排除することはしない。
    (3) 図書館員の個人的な関心や好みによって選択をしない。
    (4) 個人・組織・団体からの圧力や干渉によって収集の自由を放棄したり、紛糾をおそれて自己規制したりはしない。
    (5) 寄贈資料の受入にあたっても同様である。図書館の収集した資料がどのような思想や主 張をもっていようとも、それを図書館および図書館員が支持することを意味するものではない。

     

    3. 図書館は、成文化された収集方針を公開して、広く社会からの批判と協力を得るようにつとめる。

    第2 図書館は資料提供の自由を有する

    1. 国民の知る自由を保障するため、すべての図書館資料は、原則として国民の自由な利用に供されるべきである。
    図書館は、正当な理由がないかぎり、ある種の資料を特別扱いしたり、資料の内容に手を加えたり、書架から撤去したり、廃棄したりはしない。
    提供の自由は、次の場合にかぎって制限されることがある。これらの制限は、極力限定して適用し、時期を経て再検討されるべきものである。
    (1) 人権またはプライバシーを侵害するもの
    (2) わいせつ出版物であるとの判決が確定したもの
    (3) 寄贈または寄託資料のうち、寄贈者または寄託者が公開を否とする非公刊資料

     

    2. 図書館は、将来にわたる利用に備えるため、資料を保存する責任を負う。図書館の保存する資料は、一時的な社会的要請、個人・組織・団体からの圧力や干渉によって廃棄されることはない。

     

    3. 図書館の集会室等は、国民の自主的な学習や創造を援助するために、身近にいつでも利用できる豊富な資料が組織されている場にあるという特徴を持っている。
    図書館は、集会室等の施設を、営利を目的とする場合を除いて、個人、団体を問わず公平な利用に供する。

     

    4. 図書館の企画する集会や行事等が、個人・組織・団体からの圧力や干渉によってゆがめられてはならない。

    第3 図書館は利用者の秘密を守る

     

    1. 読者が何を読むかはその人のプライバシーに属することであり、図書館は、利用者の読書事実を外部に漏らさない。ただし、憲法第35条にもとづく令状を確認した場合は例外とする。

     

    2. 図書館は、読書記録以外の図書館の利用事実に関しても、利用者のプライバシーを侵さない。

     

    3. 利用者の読書事実、利用事実は、図書館が業務上知り得た秘密であって、図書館活動に従事するすべての人びとは、この秘密を守らなければならない。

     

    第4 図書館はすべての検閲に反対する

    1. 検閲は、権力が国民の思想・言論の自由を抑圧する手段として常用してきたものであって、国民の知る自由を基盤とする民主主義とは相容れない。
    検閲が、図書館における資料収集を事前に制約し、さらに、収集した資料の書架からの撤去、廃棄に及ぶことは、内外の苦渋にみちた歴史と経験により明らかである。
    したがって、図書館はすべての検閲に反対する。

     

    2. 検閲と同様の結果をもたらすものとして、個人・組織・団体からの圧力や干渉がある。図書館は、これらの思想・言論の抑圧に対しても反対する。

     

    3. それらの抑圧は、図書館における自己規制を生みやすい。しかし図書館は、そうした自己規制におちいることなく、国民の知る自由を守る。

     

    図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。

    1. 図書館の自由の状況は、一国の民主主義の進展をはかる重要な指標である。図書館の自由が侵されようとするとき、われわれ図書館にかかわるものは、その侵害を排除する行動を起こす。このためには、図書館の民主的な運営と図書館員の連帯の強化を欠かすことができない。

     

    2. 図書館の自由を守る行動は、自由と人権を守る国民のたたかいの一環である。われわれは、図書館の自由を守ることで共通の立場に立つ団体・機関・人びとと提携して、図書館の自由を守りぬく責任をもつ。

     

    3. 図書館の自由に対する国民の支持と協力は、国民が、図書館活動を通じて図書館の自由の尊さを体験している場合にのみ得られる。われわれは、図書館の自由を守る努力を不断に続けるものである。

     

    4. 図書館の自由を守る行動において、これにかかわった図書館員が不利益をうけることがあっては ならない。これを未然に防止し、万一そのような事態が生じた場合にその救済につとめることは、 日本図書館協会の重要な責務である

    (1979.5.30 総会決議)

    1. 長井祥和 Post author

      水谷さん、こんにちは。ありがとうございます。

      図書館の自由に関する宣言って全文はじめてみました。
      なんとなくこれを肉付けて物語を作ったと読んだ気がします。ダ・ヴィンチかな?

      私も少し読ませて頂きます。

       

  4. Pingback: 三匹のおっさん ふたたび | Case Of Akvabit

コメントを残して頂けると嬉しいです

読ん読くの全投稿一覧