重いテーマの本を読んだ後は、気軽な書物を読みたい気分になるもの。丁度手元にあった本書が、その役を立派に果たしてくれた。

鴨川ホルモーは、京都を舞台にした奇想で大いに楽しませてくれたが、実はこの物語には伝統という時間軸、そして京都の地理感覚という空間軸が巧みに配されており、その二軸が物語に深みを与えていた。

つまりそれらの軸をうまく扱えば、物語世界は無限に広げられるということである。

鴨川ホルモーの外伝ともいうべき本書では、筆者が創造したホルモー世界を自由に拡張し、その中で様々なテーマの物語が繰り広げられる。まさしく世界観の創造者に真っ先に許される特権であり、その特権を思う存分謳歌している著者が目に浮かぶ。伸び伸びとした書きっぷりのままに、6つの物語が、読者を大いに楽しませてくれる。

時間軸は遥かなる戦国や昭和初期まで遡り、空間軸は、京都の碁盤目の街並みを深堀りするかと思えば、東京にまでその座標を伸ばす。

世界を創ることに対する、憧れを抱かせたのが本書である。

’12/06/14-12/06/15


カテゴリ: 読ん読く.
最終更新日: 7月 30, 2014

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