本書は日本と清国に翻弄された琉球の歴史が舞台だが、琉球の埋もれようとする歴史以外に著者が問うているのは、ジェンダーとしての性についてである。

女であるがゆえに科試を受けることのできない主人公が、宦官として科試に合格し、役人として生きていき、科試に挫折した主人公の兄は女形としての人生を選ぶ。主人公は後に役人でありながら、王に気に入られ後宮に入って王の子をなす別の人生も同時に生きる。

かなり荒唐無稽な設定と筋立てであるが、思い切った設定によって、かえって本書が性の平等をなくすことがどれだけ難しいかについて、問題提起しているように思える。性別による差別をなくすことと、性別を超越して活躍することは別であることを示している。

男女関係なく、能力がある人は登用すべきだし、活躍すべきだが、生物として限界があるのもまた事実。

本書で主人公の波乱万丈な女としての一生に、性というものの不思議さと、社会が被せる不条理な規制を考えてみるのもよいかもしれない。

’12/04/04-12/04/05


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