残された遺作短編を元に、作者の素性と、そこに隠された事情を探っていく内容。

と書くと凡庸な内容のように思われるかもしれないが、遺作短編5編の内容に工夫をこらし、読者の予想を裏切る方向へ結末を進めていく筆力は見事である。

遺作短編5編の内容がいずれも陰惨な終わり方を予感させるリドルストーリー仕立てで、この形式自体あまり見ないため楽しめることと、陰惨な結末がどうなったのかの興味が解き明かされないまま5編分、次々と積もっていくため、話に引きずられていく。という仕掛けであるため、最後まで読んでしまうことは請け合いする。

5編の内容から作家の無念と愛情、そして男として親としての矜持をいかに読み解くか、について、結末を知った後に各編を再読したくなるのが本書である。

’12/02/22-’12/02/23


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