というわけで続編である。前作についてはレビューに書いた。前作を読んでから2年2カ月ぶりに続編の本書を読む。本書を読むにあたり、あらためて前作のレビューを読み返してみた。うん。前作のレビューに書いたことと、今思い出せる前作の印象との間に差異はなさそうだ。

本書は三匹のおっさんふたたび。つまり続編だ。前作と同じ三匹のおっさん(清田 清一=キヨ、立花 重雄=シゲ、有村 則夫=ノリ)が、町にはびこる悪いやつらをやっつける。基本的なパターンは前作と変わらない。だが、前作と一緒では進歩がない。本書はその点、前作にない視点を組み込み、変化をつけているところがよい。そして気楽に読める小説としての良さを失っていないところも好感が持てる。

前作のレビューで私はこう書いた。若者世代と老年世代が元気だが、中年世代に元気がない、と。よもや当レビューを著者が読んでくださっているとは思えないが、やはり似たような印象を著者も編集者も持ったのだろう。本作は、中年世代にスポットが当てられている。まずは貴子。前作では悪徳業者の口車に乗せられて空気清浄機を買わされそうになる箱入りの嫁。家に乗り込んできた悪徳業者は清一が退散させてくれるが、清一からは嫁の自覚がないと叱り飛ばされる。それによって多少は嫁としての自覚を持つ。本書では、第一話に主役として取り上げられている。何もできない嫁ではいけない、とパートに応募する貴子。パート先で同僚との関係に苦労しつつも、自らの力で苦境を乗り越えようとする姿が描かれる。

また、中年世代を描く以外にも、老年と若者世代の交流も取り上げられている。例えばノリに再婚話が舞い込み、ノリの娘の早苗がぶんむくれてしまう話 (第三話) がそれだ。そんな人情系の話も混じっていて、本書のバラエティの豊かさは前作を完全に上回っている。

もう一つ、本書が新たに打ち出したのは地域社会という切り口だ。地域を見回る三匹のおっさんだから、もともと地域社会には密着している。だが、本作は地域社会の色がさらに強調されている。たとえば本書の第二話は、万引に悩む地元密着の書店の話だ。書店で頻発する万引の犯人を三匹のおっさんが張り込んで捕まえるのだが、この解決方法がなかなか考えられていてよい。単純に警察に突き出して終わりではないのだ。更生の道を模索し、実践していることにすがすがしさを感じさせる。ここには商店街の活性化といった切り口を通し、活性に向けての苦労の一端が見える。そして、それに対する著者なりの考えが伺える。

本書の第四話は、ゴミ放置の問題を通して街のモラル低下に 三匹のおっさんが 立ち向かう話だ。そこでは、コミュニティの復活も含めたゴミ放置に対する著者の模索が見える。

第五話は、中年世代のがんばりを前面に据え、地域社会の再生を取り上げている。 途絶していた地元神社の祭りを10年ぶりに再開させる、という展開は著者が得意とする分野でもあり、本書のクライマックスともいえる。地域社会の再生や中年世代を応援したいとする著者の思いは確かに伝わってくる。3匹のおっさんシリーズは本書のこの話で大団円を迎えたといえる。それでいい。

最後に一編「好きだよと言えずに初恋は、」が挿入されている。これには三匹のおっさんは登場しない。紙数も短い。だが、思春期の男女の織りなすさわやかな恋愛と陰湿な女子同士の引っ張り合いが対照的な一編に仕上がっている。想像するに、雑誌に発表したはよいが、単行本の載せ先がなく本書の末尾に収められたのだと思う。だけど、著者の恋愛ストーリーテラーとしての本領が発揮された一編だと思う。著者の『植物図鑑』はまだ読んでいないけど、ひょっとしたら本編の延長上の話だったりするのかも。

‘2016/12/16-2016/12/16


カテゴリ: 読ん読く.
最終更新日: 12月 7, 2017

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