著者の本を手に取るのは久しぶり。長編は初めてかな。スウィフトのガリバー旅行記を思い起こさせる内容。あちらは架空の国々を訪問していく中でそれらの国々の人々を通して人間を風刺していたけれど、こちらの本は夢の国を次々と訪れていく。

現実の主人が寝ている間には夢の国を、起きている間は現実の国を、交互に訪れるという設定が秀逸。現実が苦しければ苦しいほど夢の世界に逃避し、しかも現実のうっぷんを晴らすようなゆがんだ世界を形作る人間の心の弱さを風刺している。

実際の著者も猜疑心や自尊心に自ら苦しんでいたとは評伝にも紹介されていることだけど、自身の弱さをわかっていたがゆえに、こういう形で自らをも風刺していたんだろうか、と思わされた。

ことすれば余分な装飾を省いたショートショートだけが注目されがちな著者だけれど、きちんと自らの内面と向き合ったこういうすぐれた作品も残していたことも世間にもっと知ってもらいたいと思った。

’11/11/18-’11/11/19


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