たまにこういう気軽な本を読む。特に歴史や地理は、私の興味をくすぐってくれる。ましてや15年以上、住んだり、通勤したり、飲んだくれたりの神奈川県は、私にとって馴染みある地が多い。

ただ紹介されている内容が生半可だと興醒めしがちだ。知っていることばかりをおさらいするような気持になるから。だが、本書は痒いところまで神奈川のあちこちを取り上げていて、実に面白い。

歴史や地理、地図を見るのが好きな方にこそ本書はおすすめしたい。

たとえば本書の帯には「県名の由来となった「神奈川」はどこにあるの?」とある。これ、私は知らなかった。今も京急に神奈川駅はあるし、神奈川宿は東海道の宿駅として知られている。では神奈川という川の存在は?と言われるとハタと困ってしまう。盲点である。

本書にはこのような知識欲をくすぐる項目が65項目にわたって並ぶ。どれもがへえボタンを連打したくなる選りすぐりのトリビアである。私が本書を読むまで知らなかった知識は、そのうち50項目にも上る

・芦ノ湖の水利権は静岡県が持っている。
・山梨県道志村が横浜市への合併を望んでいた。
・相模原市の山間に湘南村という自治体があった。
・鶴岡八幡宮はもう一つある。
・ロシア土産のマトリョーシカは箱根産まれ。
・境川流域にサバ神社が12社も集中している。
・県がないはずの江戸時代に津久井県が存在していた。
・日本初の有料道路は箱根。

等々。

他の項目についても、本書の記載は簡潔にしてためになる。例え知っていたとしても、へえ~♪という記述に出くわすかもしれない。こういう本を読むにつけ、人生の短さがつくづく思いやられる。そういう意味では危険な本かもしれない。

本書は他の県版も出版されている。機会があれば読んでみたいと思う。

‘2015/04/16-2015/04/17


2 thoughts on “神奈川「地理・地名・地図」の謎

  1. 水谷 学

    境川流域にサバ神社が12社も集中している。

    この一文に目が留まりました。理由は諏訪神社が姫川沿いに数多く点在することを思い出したからです。神道思想史家の戸矢学氏の「諏訪の神」というミシャグチを論じた本の記載から、川ではなくフォッサマグナを鎮護する神がミシャグチ様の本体だという仮説にずっと惹かれています。以前鹿児島の吐噶喇列島にある火山島の諏訪之瀬島のことをネット上で書きましたが、諏訪神社(南方神社)が薩摩に多いこと、島津氏の発祥がミシャグチと密接な関係のある諏訪大明神と同体とされる住吉神社の境内であることなど、更なる地名に対する研究もしなければと思っています。昨年購入したものの未読の民族学者の谷川健一氏の「日本の地名」が何らかの今後の研究の一助になるかと期待しています。

    1. 長井祥和 Post author

      水谷さん、おはようございます。

      川は生活の拠点であり、文化の伝播ルートでもありますからね。

      姫川と同じく境川にも何らかの文化伝承の道筋があったものと思われます。

      本書で知ったサバ神社の件は、まさにそうですね。日本の地名には興味深い点が多数隠されています。

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