本書も、4月にプロジェクトを移るなど、仕事環境が変化した機会を捉え、試行錯誤として読んだ本の一冊である。

著者の名はおぼろげに記憶の片隅に残っていたぐらいで、殆ど事前知識なく、もちろん著作を拝見するのは本書が初めてである。

題名に惹かれて手に取った本書であるが、思わぬ収穫であった。私は読書量に比してビジネス書を手に取ることは殆どなく、仕事の知識はマニュアルに頼らず現場で学ぶタイプである。ビジネス書を読んでいない理由としては、とかく経営論というと数値的な記述だらけで頭を通り過ぎるだけで、ケーススタディとしてあげられた内容も実情にそぐわず、身につかずじまいということが多い印象を強く持っていた。これは大学時代に経営学の講義をとっていた時の記憶が残っているだけかもしれないのだが、本書は内容が平易であり、かつ、一般的な経営者としての心得を説いてくれており、私のような初心者にも分かり易い内容は心にしみた。

組織に使われる人生にうんざりし、多少いばらの道でも、独立に踏み切った個人事業主の私。だが、仮に本書で説かれるような理念をもった経営者のもとでなら、独立は踏みとどまったかもしれない。また、自分もこういった理念を持った経営者となりたいと思った。

私自身の力不足から法人化の道は未だ遠し、の現状は、この本を読んでから7か月半の今も変わらずだが、4月から関わっているプロジェクトでは統括部門として組織運営の妙だけは見聞する機会に恵まれている。もっとも本書で説かれているような人間の誠意や利他心に満ち溢れた統括とはいかない。現場は非情である。

損益計算書や貸借対照表、人間関係の煩わしさなど、本書が説く経営者への道は険しいことは理解している。が、非情な現場と忙しい日常に埋もれぬよう、利他心、誠意をもって公私の荒波を乗り切っていきたいという理想だけは失わぬよう、必死で食らいつこうと思う。本書もまた読み返す機会を設け、心を新たにしたいと思う。

’12/04/13-12/04/15


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