村上龍氏が以前何かのインタビューで語っていた内容が、プログラマが書いた小説に興味がある、という趣旨のことだったように記憶している。

私も仕事でプログラミングをする機会があり、If文やFor~Next文、While~Wendなどの条件文や反復文などは普通に使う。そのため、こういう小説に出会ったときには、非常に興味をそそられてしまう。文書生成というテーマは、プログラマならだれでも行き詰った時に抱く願望であり、仕様書の自動生成やロジックの自動生成など、願いのタネは尽きない。

仮に文章生成を実装する場合、本来ならば設計にそった形でバグなく結果を収斂させてゆくのが、プログラマの本分だが、本書の場合、それを文書生成というテーマを核に、どこまで拡散させてゆくかという点が見所になっている。

拡げた大風呂敷を矛盾なく折りたたんで懐に戻すことも小説の技法末として重要だが、ある程度まで広げた後は読者に後始末を委ねるという方法もある。

本書の場合、それぞれの読者がどういうロジックで後始末を行ったか、という点で興味は尽きないのだが、感性でなくロジックで委ねる部分が大きいところに、本書の新味があると思った。

’12/04/10-12/04/12


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