著者の本も大分読んできているけれど、最近はちょっと展開がマンネリ化の方向にあるなぁ・・・と思うことが多い。

正直言ってこの本も展開としては今までの名作たちと同じような部分もあるにはあるのだけれど、著者の凄いところはその描写のディテールにあり、大枠の展開は同じであったとしても、場面場面に今まで見たことのない新しい驚きと謎を提示していくことで、読者をぐいぐいと物語の渦にひっぱっていくところにあると思う。

本書もまた、伏線を多数敷きまくるところで上巻を費やしているのだけれど、その伏線の敷き方が巧みで、人物造形や出来事の描き方がすぐれているため、後から思い返すと大筋の展開が似たものであったとしても、読んでいる間はそのことを全く感じさせない内容となっている。

効果的な小道具の使い方やキーワードの見せ方など、本当に読んでいて万華鏡のようにつぎつぎとワンダーストーリーが繰り広げられることに感嘆を禁じ得ない。

本書を読むにあたっては、筋を追っかけてしまうと著者の本の豊かさに触れられないということが分かっていたので、今回はこのあたりの細かい描写をじっくり味わうため、あえてゆっくりと時間をかけて読んでみた。

’11/12/07-’11/12/13


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