このままの成長路線で人類が発展し続けていくという意見を疑いなく言える人はよもやいないと思うけれど、ではどうすれば成長と地球環境の保全を両立させられるかという問いに答えられる人も殆どいないと思う。

そんな喫緊の問いに答えてくれる本がこれ。決して回顧や縮小の論理に逃げることなく、人類はもはや過去の非文明の生活に戻ることはできないという現実を見据えた上で論を立てている。今の経済制度が成長によるさらなる投資の連鎖で組み上げられており、投資を受ける上で資源効率性という原価管理と、廃棄物というコスト削減を成し遂げた企業や組織こそが投資を受け、生き残ってゆくという市場経済の原理に則っているため、非常に現実的な提言となっている。

そういった企業が生き残ってゆく時代を経済の新潮流(第6の波)と名付け、すでに芽生えている種々のエコビジネスや取り組みの紹介に多数を割いている。地球温暖化や環境原理主義のような根拠のあいまいな環境論に堕することなく、資源効率性という原価管理と、廃棄物というコスト削減の観点で紹介される各事例には説得力がある。水や空気、土などの原価意識の低いものにも値が発生する新潮流では、それらをうまく管理できなければ淘汰されるという部分、私にとっては無自覚だったため印象に残った。

第6の波を生き残る方策として6つのキーワードが提言されており、「廃棄物はチャンスである」「商品ではなくサービスを売る「シェアリング」時代」「デジタル界と自然界は融合しつつある」「原子は地元に、ビットは世界に」「迷ったら自然を見よ」のそれぞれには今後の日本が生き残る英知が示されているように思う。もちろん私個人にも。

’11/10/31-’11/11/02


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