別断面の世界という、使い古された設定である。むしろ、本書の読みどころとしては、丁寧な描写で定評のある著者の筆さばきにあるのかもしれない。

設定や筋運びより、異世界に生きる主人公の心の動きや、異世界と実世界との違いをどう描くか、という点に興味が移る。設定がそれら異世界と実世界の境目をぼかしつつ、微妙な点で違いを重ねているのが素晴らしい。

本書はそれらの点で、目を引く描写がいくつもある。ふとした描写に、異世界に放り込まれた主人公の戸惑いと、その状況を受け入れ、そして抜け出す努力までの経緯が書きだされている。

といっても本書は単なる異世界冒険譚に留まらず、謎も仕掛けも用意されているので、引き込まれることになるだろう。

本書は映画化されたとのことで、私は未見だが、異世界と実世界の区別が、映像でどこまで再現できているか、映像と小説世界の違いについて、みてみたいところである。

’12/04/18-12/04/20


カテゴリ: 読ん読く.
最終更新日: 7月 26, 2014

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