幻惑す まどわす
心聴る きこえる
偽装う よそおう
演技る えんじる

これは本書の各編につけられた題である。

四編からなる今回のガリレオは、このように二字熟語に送り仮名を振った題が付されている。つまりは造語であり、当て字である。

ガリレオシリーズは、科学知識に裏打ちされた謎解きが魅力といえる。それを解き明かすガリレオこと湯川学もまた、科学の徒。だが理論で武装した外面のわずかな隙間から時折覗かせる人情味が本シリーズに一層の味付けを加えている。

本書に収められた四編は、科学の謎、そしてガリレオの人情の両方を味わえる。内容は興が削がれるので書かないが、最初の二編は科学知識。後の二編は、ガリレオの人話となる。

では、各編につけられた題は何を表しているのか。それは、四編それぞれを特徴付ける事象を指す。そして本書のタイトルである虚像の道化師、とは各編で暗躍する犯人に他ならない。虚像をかぶり、犯罪という道化を演じる犯罪者。各編で著者が描き出す犯罪者は、それぞれの事情を抱えつつ、虚像をまとって罪に手を汚す。

短編故、それぞれの人物像を深く彫り込んでいる訳ではない。が、うまく各編を構成する事象を短い編の中で犯罪者の人物像に繋げる様は流石といえる。

本書でもガリレオシリーズの醍醐味は健在といってよいだろう。簡潔にして手軽に推理小説の醍醐味が味わえるのが本書である。しかも量産の劣化とは一線を画している事はうれしいばかりだ。

‘2015/06/12-2015/06/12


カテゴリ: 読ん読く.
最終更新日: 5月 27, 2016

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