本書については、賛否両論あると思う。

会話や地の文、登場人物の言動が戯画化されすぎているという短所についてはもっともかもしれない。主人公の行動についても、あれでばれないのはおかしい、とあまりに現実離れした内容への批判もあると思う。

私はそれらの短所も、本書で訴えたい内容をどうやって活字離れが著しい読者に対して届けるか、という著者の苦心の跡と前向きにとらえたい。

本書は薩摩藩に搾取されていた琉球の、朝貢先である日本の幕末から開国の歴史に翻弄される様が描かれている。そのころの琉球は、日本の情勢だけでなく、アヘン戦争をはじめとした列強からの侵略の渦に巻きこまれる清国の情勢をもにらんだ二重外交を駆使せねばならず、それにも関わらず、時流に抗することはできず、琉球処分を受けて、尚氏王朝とともに日本の支配下に入る。

多くの日本人が沖縄に持つ負い目とは、太平洋戦争時の沖縄戦と、その後の米軍統治、米軍駐留の今に至る歴史についてだろう。だが、それだけではないことを著者は本書で指摘したかったのではないだろうか。つまり、琉球処分で強引に琉球を日本の支配下においた経緯を、今の日本人に対してどうやって目を向けさせるか、を考えた結果、重い内容と釣り合いをとるために軽い言動や文章にしたのでは、と考える。

著者の作品は本書が初めてで、他の著書を読んでいないため、ひょっとしたら的外れな感想かもしれないが、読んでから半年以上経つ今も、琉球外交に苦心する主人公と、琉球王朝の陰湿な人間関係の様が印象に残っているため、あながち著者の狙いも的外れではなかったのかもしれない。

’12/04/01-12/04/03


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