一年の計は元旦にありという。まとまった休みが取れるため、リフレッシュできるのはもちろんだが、一年の区切りであり、来たるべき一年の決意を新たにするよい機会でもある。

今年の元旦は、宝塚を訪れた。その際、駅の本屋で購入したのが本書である。区切りの日、今の自分に何が足りないか、今年は何をすべきかについて考えていた。そうしていると、本書の題名が目に飛び込んできた。まさに直観的に。

システムエンジニアとして生計を立てている私であるが、個人事業主である以上、設計やコーディング、仕様書の作成だけでなく、受注を頂くための営業活動、仕様を定める際のヒアリングは必須である。もちろん外注をお願いする際は折衝も。

数年前に亡くなった祖父は、晩年ほとんど耳が聞こえぬままであった。頭脳明晰な方だったが、聴力低下による苦しみはどれほどのものだったろう。その血を受ける私も、20代の終わり頃から聴力の低下を自覚している。

また、私自身自覚しているのだが、成長するにつれ、かつての私の長所であった気の長さが縮まってきたように思う。要するに関西弁でいう「いらち」になりつつあるということだ。

このような、今後の自分の聴力に危機感を覚えるとともに、常駐先だけに縛られている今の自分のキャリア展望にも焦燥感を感じている。なので、普段はビジネス書や自己啓発書の類にはあまり食指を動かさないが、直感的にレジに持ち込んだ。

本書は経営コンサルタントの著者が、聞くことに徹することの効力を説く本である。もちろん著者については今回初めて目にしたので、経営コンサルタントとしての活躍の知識など皆無である。が、結論としては購入し、読んでよかったと思えた本の一冊となった。

本書は大きく分けて5章に分かれている。
第1章.ホウレンソウで「聞く」
第2章.会議で「聴く」
第3章.コミュニケーションで「訊く」
第4章.交渉で「利く」
第5章.人生で革命を起こす「効き方」

本書の要点としては、とにかく聞くこと。これに尽きる。だが、私も含めて、普段聞いているつもりでもいかに聞けていないか、を本書冒頭で著者は鋭く指摘する。ツモリ病という表現を使って。

会話とは、いかにして相手の話を聞くか。答えはすでに相手の心の内にあり、聞くことで相手は自己解決してくれる。そして、こちらは聞いただけなのに、解決へと導いてくれたと好感を持つ。まずは話を聞くことが大切と説く。自分の話を聞いてくれる人物には、心理的にも好感を持つことが多いのだとか。

こう書くと、占い師や教祖やグルやメンターのような肩書きの方のノウハウのようだが、実際、そのような能力に長けた方が、そういった職業で成功しているのだと思う。

かつて、友人に誘われてNLPのセミナーを受講したことがある。その時の内容も未だに覚えていて、折衝や交渉の場で実践しているつもりであるが、ツモリになっていたのかもしれない。本書はそれをもっと単純にしたような内容なのだが、NLPというとどうしても手練手管のような怪しいイメージで捉えられがちである。

そうでなく、もっと人生の素のままに還り、素直に聞こうよ。すると人生にも仕事にも効くよ。ということではないか。私は別に上に挙げたような職業に就く予定はないが、家庭を全うし、自分に納得のいくやり方で仕事を全うしたいと思う者である。また、人の欠点は気にせず、その人の良いところを見てあげたいと願う者でもある。ならば、その人の話を聞いてみようではないか。

今年に入ってすでに1ヶ月半近くが過ぎたが、妻に対しても、娘に対しても、常駐先の上司に対しても、聞き方を改善してみた。

その結果、長女の悩みを1時間みっちりと聞く機会が出来、父親らしい説諭が出来た。また、常駐先からの帰宅時間には改善は見られないものの、それでも仕事の質において大分効果が上がってきた。もちろん、それらの効果が私のツモリにならないよう、引き続き実践を重ね、聴力の低下傾向など問題にならぬぐらい、聞く力をつけたい。

’14/01/24-14/01/25


One thought on “最高の仕事と人生を引き出す 「聞き方」の極意

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