BOOK 1 の最後の章で、青豆と天吾の世界に、現実からの脅威が押し寄せる。BOOK 2 である本書では、序破急の破らしく、一気に物語が展開する。徐々に現実感を喪失しつつあった世界に、現実が否応なしに押し寄せる。青豆は謎の信仰集団のトップの暗殺を柳屋敷の老婦人から依頼される。天吾には牛河なる人物が接触を図ってきて、代筆の事実を知っていることをそれとなく匂わせられる。ふかえりは天吾の元から失踪し、あゆみは謎の死を遂げる。

その一方で、1984年である世界は青豆には別の世界、つまり1Q84にその姿を変えつつあり、その速度は増すばかりである。

現実は幻想と共存できるのか。それとも所詮は別のもの、別々の道を歩むしかないのか。物語の行方がどこに向かおうとしているのか、BOOK 1に引き続き、読者をつかんで離さない展開はお見事としか言いようがない。

BOOK 1では現実からの疎外がテーマではないかと書いた。本書では果たして何がテーマなのだろうか。私には過去と現在の和解、というテーマが湧きあがってきた。

本書で、天吾は房総半島の某所の療養所にいるNHK集金人だった父と再会を果たす。答えない父に対し、自分の半生を滔々と話す。そして青豆は謎の宗教団体の教祖であり、ふかえりの父と目される人物を殺す直前、過去の出来事について教えを受ける。そしてNHK集金人の後について歩いた幼き日の天吾と、宗教団体の伝道者として親の伝道について歩いた青豆が、小学生時代に鮮烈で刹那的な交流を持っていたことが明かされる。現実は過去、幻想は今。過去と現在が和解する時、現実から疎外されていた幻想は受け入れられる。「空気さなぎ」の世界がますます現実を侵食する本書において、過去と現在の和解がテーマになっていることは避けては通れないポイントなのだろう。「空気さなぎ」の登場人物であるリトル・ピープルといった登場者は、現実と幻想を結び付けられるのか。教祖が世を去った今、誰がそれを成しうるのか。

青豆と天吾がお互いの存在を意識し合い、探し求めるようになり、本書は幕を閉じる。次はいよいよ序破急の急である。物語は大団円に向かって突き進む。

’14/06/01-‘14/06/03


コメントを残して頂けると嬉しいです

読ん読くの全投稿一覧