自分たちを取り巻く文化について、意識することなく同化することができ、自分の属する文化を客観的に見つめることができるようになるのは、思春期が過ぎた頃ではないだろうか

本書は、自分たちの文化への距離が定まったばかりの主人公たちが、異国からの旅人に接する中、異文化への理解を果たそうと苦心する中、意識を確立させていく物語である。

そこにどのように推理小説としての肉づけをしていくのかについては、面白いアプローチを試みている。それは、発する側にとっては当り前のことが、受け取り側の文化の違いによって、謎となるということである。

著者の得意とする「刑事事件が全く出てこない日常の謎」モノといえばその通り。だが、本書では、発する側にとっては謎でも何ともないが、受け取り側にとって謎となる。というところが毛色の変わったところである。

つまり、話の筋の運び方にとっては、読者の興味を惹かず、単調になってしまう。また、謎を発する側と受け取り側の理解力をきっちり読者に説明しないと、謎が登場人物にとっての謎でしかなく、読者には筋も妙味もさっぱり分からない物語となってしまう。

そのあたりをうまく処理していたのはさすがというべきか。

’12/06/18-12/06/19


カテゴリ: 読ん読く.
最終更新日: 7月 30, 2014

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