警察内部というよりも組織の中で戦わねばならぬ閉じた世界のやるせなさ。仕事場だけでなく家庭にも裏表を持ち込む組織内の争いの陰惨さを描き出そうとした著者の意図がくみ取れる。

震度0というタイトルには様々な意味を込めてのものであろうが、それは、表だって力に訴えることなく、背後では後ろ暗い陰謀を張り巡らせる力の表現であり、物語の背景で同時進行している阪神・淡路大震災の震度7の惨状を尻目に身内で争う様を対比する指標としての震度0であったりする。もちろん、自然の力に対する人間の争いの小ささを表す尺度であったりもする。

実際の被災者である私にとっては、あの現場に立ち会っていない者どもの醜さとして、この対比の手法は効果を上げているように思えるのだが、本筋に関係ない、あくまで著者の意図をより鮮明に浮き彫りにするためだけの地震の取り上げ方については賛否両論があろうと思われる。

’12/3/2-12/3/3


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