最近のTPP論議について、これは日本国の開国であるという論調を目にすることが多い。ここ200年でいうと、幕末、第二次大戦に続く3回目の開国であるという。

今のtppがどのような開国になるのか皆目わからないけれど、封建体制を終わらせ日本を変えたという意味では最も重要な開国が幕末のそれであることは言うまでもないと思う。

幕末から明治にかけては、有名無名問わず公私の情を超えて、日本のために精魂尽した人が幾百もいたけれど、榎本武揚については、Wikipedia程度の知識しか持っていなかった。

逆賊の汚名を着せられた旧弊の徒として人生を終えておかしくないのに、明治政府でも重用されたその人物とは・・・

気になって読んでみた。彼の生き様から、今の閉塞しつつある日本を考えるヒントが得られないかと思って。

上巻は15代将軍慶喜が大阪城を脱出するところまで。榎本少年が親の幕臣技官であった父の薫陶を受け、葛藤しつつも幕府の留学生としてオランダに赴き男を磨く箇所など、私にとって新たな知識を得るとともに、その進取の気質と意思の強さこそが、逆賊でありつつ明治政府に取り立てられた強みであることをしった。実は幕末明治にかけて、立場が違えば国を率いていくことのできた人であったのだなぁ・・・・と今まであまり知らずにいたことを恥じる思い。

それにしても気になったのは、小説ゆえに主人公を引き立てるためなのか、徳川慶喜や勝海舟が低く、それも貶められるまで描かれているところ。慶喜については私もいろいろ読んだりして知識はあったのだけれど、勝海舟までもがこういう評価のされ方をするとは・・・・氷川清話とか子供向けの伝記を読んだだけではわからない陰影のある人だったんだなぁということも得た知識の一つ。

’11/11/04-’11/11/06


One thought on “武揚伝〈上〉

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