3/3-3/10まで宇都宮に通いと宿泊で仕事をしてきました。本稿はその体験記です。

【2021年6月17日~】気軽におためし!サテライトオフィス体験支援補助金@とちぎ(栃木県お試しサテライトオフィス設置推進事業)
の募集を見かけたのは、確かメールマガジンだったように記憶しています。
応募したところ、無事に審査に移っていただけました。

当初は茂木や真岡、足利や栃木や鹿沼など栃木のあちこちで仕事をしようと思っていました。今回の応募も栃木のどこでも可能となっていたので。ところが申請書類には仕事場所や宿泊場所の記載欄が一カ所しかありません。それを増やすにはいろいろと審査の手続きが大変そうでした。そのため、宇都宮一カ所にしぼりました。

私がこうした企画に参加するのは二年ぶり。福島県お試しテレワークツアーで郡山と猪苗代を訪れたのは、2020年の1月。その直後にコロナが世の中を乱し、こうしたツアーには参加できずにいました。
福島県お試しテレワークツアー

私が応募した理由は二つです。
一つは、旅ができていなかったことです。今年に入ってからも仕事が忙しく、しかも案件が次々と来ている状態で休みが取れておらず、しばらくは休める見込みもなかったからです。どうせ休めないのならせめて違う場所で仕事をしたい。それが理由の一つめです。
もう一つは、自然災害が起こった時の事業継続計画(BCP=Business Continuity Plan)の一環です。首都圏はいくつかのリスクを抱えています。東海地震・首都直下型地震・富士山噴火。そのうち最後の富士山噴火が起こった場合、町田まで火山灰が飛んでくる可能性が高く、そうなったら電子機器は全滅の可能性があります。
私には関西の実家に行く選択肢もありますが、関西への道が閉ざされた場合や首都圏に拠点を置き続ける事を考えた時、栃木は避難場所として適しているように思いました。そのため、仕事と暮らしの両立が可能かを調べたかったのです。

私は今まで日光は5,6回訪れたことがあります。那須や鬼怒川温泉も1,2回は訪問しました。ところが、宇都宮を訪れるのは初めて。街どころか駅に降り立ったこともありませんでした。

3/3と3/4は、小田急と中央線と東北新幹線を乗り継ぎ、往復で通ってみました。
小田急と中央線はいわゆる通勤電車なので、車内での仕事はできません。せいぜいメールやチャットのやり取りやブログを書くぐらい。ところが東北新幹線は3往復とも電源が使える席が確保でき、快適に仕事ができました。今回初めて知ったのですが、東北新幹線にはウェブ会議ができる車両もあるそうです。ですが、そこを利用するまでもなく、自席で作業がはかどったことはよかったです。
のぞみに乗ると感じるストレスがなかったのは、今後の通勤も含めた手応えでした。

一方、現地で働く場所については、事前に調べておいたほうが良さそうです。
私は失敗を犯しかけました。

今回の八日間のうち、三日間をコワーキングスペースのHOTTANさんで仕事しました。
また、栃木県への申請書類にも、三日間はHOTTANさんを利用すると記していました。
それなのに私は、HOTTANさんのホームページに書かれた注意事項をすっかり見落としていました。
「※ドロップイン利用は、必ず利用日の前日18:00までに予約フォームからご予約下さい。
(受付スタッフは常駐しておりません。不在でご利用頂けない場合もあるため事前予約をお願い致します。)」

3/3も、宇都宮駅を降りた私はHOTTANさんまで訪れ、CLOSEDの看板の前で途方にくれました。
「あれ?10時開店やなかったっけ?」
諦めて近くのコワーキングスペースを探すと「MUSASHI BASE futaara BASE」さんがあり、そこまで訪れ、予約の電話を入れてみました。ところが、futaara BASEではドロップインはやっておらず、ドロップインは駅の反対側にあるimaizumi BASEまで来てほしいといわれました。地図を見ると今やってきたばかりの道を駅まで戻り、さらに反対側も2キロほど歩く必要がありそうです。しかも営業時間は18時までだそう。この日は18時からの打ち合わせが予定されていたため、断念しました。
そこでHOTTANさんに電話すると、つながり、12時からなら開いているとのこと。

餃子通りで初餃子を食べてから、HOTTANさんへ。倉庫を利用した中は、結構広くてたくさんの本が置かれており、良い感じです。この日は私以外にもう一人の方がいらっしゃいました。
私も19時まで打ち合わせや作業を並行して行い、辞去にあたっては、翌日の朝10時にまた来ますとお伝えしました。

翌朝、町田から同じルートでやってきた私は、またしてもHOTTANさんの前で”CLOSED”の看板を見て立ち尽くしていました。
この時はすぐにスタッフの方からSMSにご連絡をいただいたので、中に入れました。また、10時半からのオンライン打ち合わせにも間に合いました。スタッフの方が来た12時過ぎまでは施設内に私一人だけ。午後からもスタッフさん以外に利用しているのは私だけでした。おかげで複数の打ち合わせを遠慮なくこなすことができ、とても仕事がはかどりました。
HOTTANさんは、スタッフの皆さんもいろいろとご用事をお持ちらしく、午前中は難しいのかもしれません。必ず注意事項を遵守し、事前に連絡を入れなければ。

ちなみに最終日の3/10の10時にも私は予約をせずにHOTTANさんを訪れてしまいました。この時も看板は”CLOSED”だったのですが、11時から打ち合わせの予定がありました。この時は近くのファミリーマートのイートインコーナーで打ち合わせをこなし、その後、連絡を入れたところ、12時からは開いているとご返信をいただきHOTTANさんに入ることができました。この日も利用者は私だけで、打ち合わせがとても捗りました。

三日間、使わせてもらったのですが、通信環境に問題はなく、とても使いやすかったと思います。月額料もリーズナブルですし、移住したらオフィスにして使わせてもらえそうだと感じました。
必ず事前にご連絡をするようにして。ありがとうございました。

今回は移住の可能性も調べなければなりません。そこで私は5日から10日まで五連泊して、街の住み心地を見てみようと思いました。

五日の朝、トランクを持って再び宇都宮に降り立った私は、unizo inn express 宇都宮に向かいました。ところがチェックインの時間は15時だったため、14時からの打ち合わせは、ホテルのロビーを使わせてもらって行いました。ロビーでWi-Fiが使えたのはよかったです。
その打ち合わせと、いくつかの作業を終わらせ、チェックインを済ませた私は、街に繰り出しました。宇都宮は自転車の街を謳っています。近くの宇都宮駅東口の駐輪場ではレンタサイクルを受け付けており、ここで自転車を借りました。100円を払えば1日中自転車を乗り回せます。これはとても素晴らしい取り組みだと思いました。

初回の手続きでは、昔ながらのスタンプカードを作ってもらい、係員の方に記載してもらう手間があります。が、それでも100円でいろんなとこに行けるのはありがたい。これはさまざまな市町村でもやるべき取り組みだと思います。
前日までの二日間は、宇都宮の限られた範囲を歩いただけだったので、自転車でより広い範囲をめぐってみようと思いました。まず、宇都宮城跡公園へ。そこで街の歴史に触れることが出来たのは参考になりました。

宇都宮の街は戊辰戦争と太平洋戦争の空襲で二回、大きな被害を受けました。
昔からの街並みは、その時に消えました。ただ、復興した街の中心は宇都宮駅の周辺に譲らず、宇都宮城跡と二荒山神社の周りから発展しました。
そのためか、JR宇都宮駅の周辺は商業ビルが目立っていますが、そのすぐ外は寂れた雰囲気が目立ちます。そこからかつての街の中心部に歩くにつれ、再び活気を見せます。これが伝統の強みなのでしょう。街の構造としてとても興味が湧きます。そういえば、すぐ北の新白河駅の付近も宇都宮と同じような雰囲気を発散しています。

宇都宮城跡の次に訪れた南宇都宮駅。私の駅を巡る趣味の一環で訪れたこの駅には近隣の雰囲気も含めて良い印象を受けました。南宇都宮駅は東武の駅です。大谷石で設えられた駅舎はとても品が良く、各地の駅を訪れてきた私の心をくすぐってくれました。駅前から歩いてすぐの場所には、大谷石で建てられた倉庫群をリノベーションした一角があり、その一角はとても風合いのある雰囲気を醸し出していました。その印象もあいまって、南宇都宮駅近隣の住み心地の印象を私に強く植え付けました。
家賃の相場は調べていませんが、この辺に住むのも悪くないなぁと思えたほどに。

翌日は、また同じ場所で自転車を借りました。より郊外の宇都宮を知ってみようと思ったからです。
目指したのは大谷地区ですが、途中、寄り道をしました。宇都宮で有名な関東・栃木レモンが、今や世に広く知られています。ですが、宇都宮にはもう一つのレモン牛乳があることを知り、そこにぜひ訪れようと思いました。鉢谷乳業さんです。鉢谷乳業さんのある戸祭地区もとても住みよい場所に思えました。前日に訪れた南宇都宮駅近辺とも甲乙をつけがたいほどに。

宇都宮の街の構成として、宮環と呼ばれる環状道路があります。この環状道路が宇都宮の街と郊外を分けているようです。宮環を超えた途端にあたりの景色に豊かな自然が目立ちます。土地にも余裕が出てきます。
大谷観音や大谷資料館、そして多気城跡を訪れましたが、気軽なハイキングができるため、休日のレクリエーションには事欠かないでしょう。多気山からまた宇都宮の街は、とても平らかで、自転車であちこちに行けそうです。

帰りは宮環に沿って鶴田駅まで行きました。宮環は宇都宮の郊外と街を分けているだけに、ロードサイドのさまざまなお店を見かけました。首都圏で見られるチェーン店のほとんどがここにそろっていると思えるぐらい。車さえあれば買い物にも困ることはなさそうです。

このような環状線がきっちりと設けられているのは、宇都宮の各地区の性格を把握するためにも便利だと思いました。一方で街の中心部にはかつての街並みを思わせるような感じも残っていて、しかも、風致地区のような区域が二荒山神社やいくつかの寺院を除けばほぼ残っていません。ところが、宇都宮には大谷石があります。この大谷石が宇都宮の街を彩っています。

翌日からの三泊は、全てホテルにこもっていました。もちろん夜や昼は少し食事を取りに外に出ましたが、それ以外はずっと打ち合わせが続き、ホテルの部屋から出られませんでした。ホテルのWi-Fiも特に問題なく使えたので、仕事ははかどったと思います。
今回は経営上でいくつか判断をくださねばならないこともあり、集中できたことで目的は達成できました。

ホテルがJR宇都宮駅の東側にあったため、ホテルにこもっている間は、駅の東側をそぞろに歩きまわりました。今、駅の東側は宮みらいという地区名が与えられ、来年に予定されているLRTの開通を控え、工事がたけなわでした。

ただし、私が泊まったホテルのあたりは飲み屋が乱立しているのですが、あまり品の良い感じではありません。しかも、コロナで街が停滞していることも影響し、良い印象を受けませんでした。呼び込みに声をかけられるのも、旧市街よりもこちらの方が頻繁でした。

東口は街の歴史に影響を受けていないため、開発が無秩序に行われてしまったのかもしれません。そこは逆に街にとってのチャンスなのかもしれません。

結論として、住むには良い場所だと思います。
まず、街自体に起伏がないことは移動を楽にしてくれます。あと、町中に関東バスが頻繁に走っており自転車だけでなくても移動は楽そうです。
また、餃子を八日連続で食べましたが思ったより安く、食費も抑えられそうな手応えを得られました。いくつかスーパーも巡りましたが、料理の材料も安く手に入りそう。「パワーマート」や「たいらや」「かましん」といったスーパーが鎬を削っていました。

ただし、働くためにはいくつかの問題がありそうです。
それはコミュニティの不足です。
コワーキングスペースはHOTTANさん以外にも数カ所あります。きちんと予約や連絡を取れば大丈夫でしょう。
ただ、私が調べたところ、宇都宮でIT系のイベントが行われている形跡はありませんでした。コロナゆえ、今更リアルなイベントにこだわる必要はないのでしょう。ですが、コロナの前から、宇都宮ではそうしたIT系のイベントが行われていなかったように思えるのです。
私が関わっているkintone Caféは首都圏の各地でも開かれているのですが、栃木と茨城だけは未開催です。
それもITコミュニティが育っていない証だと思います。すぐ北の郡山や会津でITコミュニティが盛んなことに比べると、宇都宮のITコミュニティの温度が低いことはとても心配になりました。

例えば私が宇都宮に移住し、拠点を移したとします。現状でも全国からお話をいただけているので、特に営業のネタに困ることはないでしょう。ですが、宇都宮に家族と住むのか、単身で住むのか早くわかりません。
もし一人だった時、私のメンタルはコミュニティに頼らず保てるのでしょうか。
私のことですから、おそらく飲み屋などに出没して仲間を作っていくのでしょう。ただ、手っ取り早く仲間を作るにはコミュニティが適しています。ただし、そもそもそのコミュニティが見つからないのであれば、それも難しいかもしれません。

宇都宮は住むには良さそうですが、働くにはもう少し検討が必要だと感じました。


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