映画の内容について、ほとんど予備知識のないままに見に行ったが、素晴らしい映画であると感じた。

宮崎監督の信念と、今の日本に伝えたいメッセージはしっかりと受け止めることは出来たのではないかと思う。日本の一番暗く重い時代を、腐りもせず、自傷にも批判にも走らず、自らの仕事を全うする青年の姿に、監督が本作に込めた、今の日本へのメッセージを感じない訳にはいかない。

その時代を断罪することができるのは、同時代に生きた者にのみ許された特権である。監督もそのあたりのことは重々承知のはず。

本作の中で非難らしい非難を受けたのはナチス党であり、作中人物を通して、ならず者の集まり、とまで言わせている。それ以外は日本の軍部、会社組織、上流階級、来日中の枢軸国人、そのいずれに対しても監督の描写はあくまで中立を貫いている。その辺りに監督の配慮、そして良心を感じた。

堀越氏の生い立ちにしろ、零戦の設計者としての知識ぐらいしかもっておらず、堀辰雄の「風立ちぬ」もだいぶ前に読んで以来、ほぼ内容を忘れかけていた。

なので、本作が史実に合致しているか、については私自身それほど重要視していない。むしろ、日本が一生懸命に輝こうと悪戦苦闘していた時代の美しさを、監督が愛好する、紅の豚の世界にも似た飛行機乗りのロマンに絡めた着眼に拍手を送りたい。

どうすれば、今の日本はかつてのように輝けるのか、どうすれば少子化を克服できるのか。そして、人は何ゆえに生き抜くのか。ラスト近くで菜穂子が語りかける言葉に、全てが集約されている。

2013/8/24 イオン・シネマつきみ野


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