給排水工事の施工管理をkintone、krewData、krewSheet、k-Reportを組み合わせた伴走支援開発により構築しました

株式会社八洲様は東京都府中市に拠点を置き、給排水工事・衛生設備工事などの各種工事はもちろん、トイレ・浴室・洗面化粧台・キッチンなど水回りに関するあらゆるご要望に対応されています。
一つの建物が竣工するまでには、基礎工事から内装、電気、そして給排水に至るまで、各社が協力し連携する必要があります。そのため、工事が工程通りに進んでいるか、適切に作業が行われているかを管理する業務は重要です。こうした工程の管理をひとまとめに施工管理と呼びます。
施工管理には工程管理のほか、品質管理・安全管理・原価管理も含まれます。また、それらの管理と並行して各種申請や役所への届出も必要です。
こうした一連の施工管理の重要性は、業界共通の認識です。
ビルやマンション建設にあたり、給排水工事の施工管理を担う八洲様の存在感は、ますます高まっています。多摩地域を中心としたビル・マンション建設に際し、元請の建築会社からの受注に加え、地域住民の皆様からの給排水工事・衛生設備工事のご要望にも誠実に対応しています。
協力会社が実際の現場工事を請け負う場合は、八洲様が施工管理を担当し、社員が直に工事に携わるケースもあります。
施工管理においては、前述の通り、原価管理や進捗管理が極めて重要です。これらの業務では図面が多数発生し、工程の細部に関する状況が正確かつ迅速に情報共有される必要があります。
見積では、物件の規模や他の施工条件を的確に把握したうえで、妥当な見積額・期間を算出することが求められます。また担当者の割り当てに際しては、保持資格や労務管理も考慮することが重要です。したがって、図面・数値データ・文字データに至るまで正確に情報を管理し、迅速な連絡手段を確保することが不可欠です。
現場で工事に当たる協力会社との間で進捗状況の伝達が正確でない場合、給排水工事のみならず、物件全体の竣工にも大きな影響が生じ得ます。
Excelで構築された最適化システムの属人化と引継ぎが喫緊の課題に




八洲様では、以前在籍されていた社員様が作成したExcelのマクロを駆使したツールにより、工程管理や原価管理を運用されていました。自社業務である給排水工事の施工管理に特化した設計であったため、Excelのシート・ファイル構造、各セルに設定された膨大な関数、背後に埋め込まれたマクロなど、相当に複雑な構成となっていました。
つまり、Excelに依存した属人化が問題となっていました。
加えて、Excelの限界に起因する情報共有の難しさも課題として顕在化していました。
作成者であった社員様の退職に伴い、Excelマクロの保守・メンテナンスが困難となるリスクが現実味を帯びました。また、社内に多数のオンプレミスサーバーが稼働しており、これらを含めてクラウド化へ舵を切り直すことも喫緊の課題でした。
施工管理の難しさ
そこで八洲様は、東京都中小企業振興公社に対して助成金申請や人材派遣の要請を行いました。派遣された経営コンサルタントの方が、助成金の獲得支援や当初の業務分析を進めてくださいました。
アクアビットには、同公社の別のコンサルタントを通じてお話を頂戴し、八洲様のご支援を担当することとなりました。
弊社の長井(当時は代表)が八洲様に伺い、ご支援を開始してすぐに、伴走支援が立ち上がりました。これを見届けて、経営コンサルタントの方は徐々に現場から身を引かれ、その後は弊社・長井と、八洲様の情報システム部マネージャー谷川様との体制で、構築を進めていきました。
今回実装対象となるのは施工管理です。
施工管理を遂行するには、自社内や協力会社、元請会社や施主に加え、基礎・電気・内装・植栽など関係各社との折衝・調整が不可欠です。つまり高いコミュニケーション能力が求められます。さらに、現場業務に精通した人材であることも必要です。そのため、施工管理を担える人材は各社から引く手あまたの存在です。
また、施工管理に「決定版」といえる汎用ソフトウェアは存在しにくいという事情があります。施工管理は奥が深く、施工業者ごとに独自のノウハウや運用が浸透しているため、自社に適合したカスタマイズが必須となるケースが多いからです。結果として、業務に完全適合するパッケージソフトが見つからないことが少なくありません。
弊社にお声がかかる直前まで、谷川様は「次期システムを一からスクラッチ開発するか」「kintoneを導入するか」で検討を重ねておられました。弊社にご相談いただいた時点ではkintone採用の方針は固まっていましたが、当初はkintoneについても請負開発型による納品をご希望されていました。
共遊開発(伴走支援)を提案しました

ただ、弊社・長井がヒアリングを行ったところ、以下の理由から「伴走支援」のほうが適しているのではないかとご提案しました。
- コンサルタント様の分析・構成案がスクラッチ開発を前提としていたこと
- 分析・構成において「自社で内製できる」kintoneの利点が生かされていなかったこと
- 業務特性上、自社でkintoneを構築・運用した方が長期的な利点が大きいこと
- 谷川様が専任に近い情報システム担当であり、意欲とスキルをお持ちだと判断できたこと
- 当初段階でkintoneとkrewDataをご検討中で、伴走型の素地があったこと
- 助成金が伴走支援にも適用可能と見込まれ、予算感・スケジュールの面でも伴走支援型に適していたこと
以上が、伴走支援である「共遊開発」をご提案した理由です。
なお、「共遊開発」とは、弊社が提供する伴走支援サービスの名称です。
当初、弊社・長井が関与した時点で、八洲様にてご利用中のシステムは以下の通りでした。太字がkintone導入後も使用を継続したもの、それ以外(非強調のもの)はkintoneや他の代替サービスへ置き換えました。
- 施工管理用内製Excel(上記にて記載)
- PLANESTef(設備積算見積ソフト)
- WaWaOffice(社内情報共有ツール)
- 施工管理用某パッケージソフト(ほぼ使われず)
- スパイダープラス(建築図面・現場管理アプリ)
- Buildee(建設現場施工管理サービス)
- 経理クラウドシステム
- 社内オンプレミスファイルサーバー
上記システムの中で、PLANESTefは設備積算見積ソフトです。kintoneでの再構築にあたり、PLANESTefは置き換え対象から外しました。
理由は二点あります。第一に、長年にわたり八洲様の業務に合わせたカスタマイズが施されており、既存の運用に適合していたこと。第二に、PLANESTefは業務フローの起点である見積業務でのみ使用され、その後の工程では利用されないため、以降のフローをkintoneへ置き換えても支障がないことです。
また、今回の一連の仕組みづくりに並行して、会計システムを会計freeeへ変更することも決定していました(上図にはありませんが、のちに労務管理freeeも対象に加わりました)。
kintoneとkrewData、krewSheet、k-Reportを中核に、業務の分析と並行してkintoneアプリの構築を進めました。
今回は、退職されたご担当者様が残されたExcelはあえて参考にせず、一からkintoneの構築を行いました。理由は、kintoneの特性(迅速な内製・拡張性・標準機能の活用)を生かしつつ、業務そのものの再構築も同時に進めるべきと判断したためです。同じ理由から、先のコンサルタント様が作成されたシステム構成案についても、一部を除き参照にとどめ、ゼロベースで設計しました。
谷川様は、事前にkintoneを調査・評価したうえで導入のご判断をいただいていましたが、構築は未経験でした。そこで、まずはkintoneのデータ構造への理解を最優先に、共遊開発を進めました。特に「アプリが担う業務」と「kintoneで管理すべきデータ構造」の関係は、一つひとつ丁寧に合意を取りながら進めました。
業務は多岐にわたるため、業務の進め方を確認しつつ、漏れが生じないように業務対象・作業・業務フローをkintoneアプリへ落とし込みました。その際、「どのデータ粒度が望ましいか」「どのタイミングでデータ連携すべきか」を明確化するため、フロー図を細かく作成・更新しました。過程では、関連レコードの扱い、ルックアップの癖、アクションの実装方法などを随時ご説明し、特にテーブルの設計・運用については繰り返し解説・試作を重ねながら作り込みました。

アプリが揃ってきた段階では、アプリ間のデータ連携設計に移行しました。データの管理粒度はアプリごとに異なるため、粒度の変換を伴いながら、整合性を保って正確に連携する必要があります。ここではkrewDataを用い、フローの作り方・繋ぎ方、粒度の差を踏まえた変換・連携の方法を重点的にお伝えし、伴走しました。
帳票については、当初Excelフォーマットに強く依存した帳票が中心でした。今回、帳票プラグインとしてk-Reportをご提案し、帳票設計の方法を学んでいただいたうえで自走できる体制づくりを図りました。理由は、他の帳票プラグインでは困難なレイアウト要件があったためです。ただし、k-Reportでも難易度が高い帳票が含まれており、「本当にそのレイアウトが必要か(代替案はないか)」を協議しながら進めました。なお、帳票設計の段階では、弊社の帳票に精通したメンバーが八洲様の近隣に在住であったことも活かし、複数回の帳票に関する現地サポートも実施しました。
こうした取り組みの中で、谷川様はkintone・krewData・k-Reportへの理解を着実に深められました。
また、工程管理の後には原価管理の実装に進み、その際にはkrewSheetも導入して、入力性の向上(入力手順の簡素化)も図りました。
社内の情報共有をkintoneで構築するとともに、コミュニティ活動にも積極的にご参加いただきました。
kintoneの理解が必要なのは谷川様だけではありません。社員の皆様にも理解し、日常的に活用していただく必要があります。弊社側でも講師として2度、皆様にkintoneを説明する機会をいただきました。
さらに、谷川様の発案で、まず情報共有ツールとしてkintoneを導入しました。日報や進捗状況を随時更新するアプリを作成し、ポータルに表示して全体の現状を一目で把握できるようにしました。これにより、kintoneを用いた社内情報共有の素地を先行して整備できました。
これらによって、先にkintoneを用いた社内情報の共遊の素地を整えました。
これらの取り組みにおいては、谷川様から積極的にご質問をいただき、弊社もそれにお応えしました。kintoneアプリの作成、krewDataの設定、k-Reportの設計についても、一定程度ご自走いただけるレベルまで習熟が進みました。1年後には、谷川様がこうした実装を自立的に推進できるようになり、ほぼ必要な機能群が整いました。
特筆すべき点として、谷川様が社外のkintoneコミュニティやイベントにも積極的に参加されるようになったことが挙げられます。
Cybozu Daysには2024/2025と2年連続でお越しいただきました。ほかにも、krewのユーザーコミュニティ「Ship」やkintone Café Tokyoなどにも参加されています(この2件は私が別件で同席できませんでしたが、弊社の有無に関わらず積極的に参加くださったことは素晴らしいです)。こうした谷川様の継続的な努力により、自走体制が確立しています。
現在、当初契約は完了し、年単位で更新する共遊開発(伴走支援)としてご支援を継続しています。その中で、krewData・krewSheet・k-Reportで実装が難しい点の支援を行いました。さらに、会計freeeとkintoneの連携についても、今後ご支援予定です(なお、弊社では会計クラウドそのものの移行作業は手掛けておりません)。
まとめ
谷川様とは家族単位で数回、飲み会を開いています。長井家だけでなく、弊社の帳票に精通したメンバー(八洲様の近くにお住まい)の家族も含めて。
こうした関係性が構築できたこと。それに加え、谷川様にはkintone CaféやShipといったコミュニティに自主的にご参加いただくまでになりました。これらはご支援する弊社にとっても大きなな手応えとなりました。そして財産として残りました。単なるシステム構築を通したビジネスだけの関係にとどまらず、より深い関係が構築できたことは、今回のなによりの成果だと捉えています。
今後、より密な距離感で八洲様のご支援ができればと考えます。さらには、八洲様で培った施工管理の仕組みを横展開できれば、よりよい可能性も開けます。
その意味でも、とても印象に残る取り組みでした。
株式会社八洲様より
導入からの日々を八洲社の谷川様は、こう語ってくださいました。
「今回の伴走支援ではアクアビット長井様には手取り足取り、本当に丁寧に教えていただきました。
私自身、元々kintoneスキルはもちろん、システム開発経験もないところから今回のご支援が始まり、当初は伴走支援で本当にアプリ開発もでき、まして自走できるまでに成長できるのか、ただただ不安ばかりでした。
さらにkintoneへ置き換えを検討してるExcelで作成された原価管理ツールはマクロを駆使して作りこまれていたもので、システム素人の私ができるのか、半信半疑どころか疑いでしかありませんでした。
しかしアクアビットの長井様が業務の洗い出しからフローの構築に至るまで丁寧に教えていただけた事で、ただの既存Excelからkintoneへの置き換えだけでなく、しっかりと業務改善に繋がるようなkintone構築ができました。
この業務洗い出しのノウハウはその後もkintoneだけでなく、他業務の改善にも役立っており大変助かっています。
最終的にはKrewDataやK-Reportなど様々なプラグインも駆使しながら、納得のいくアプリ構築ができ、長井様、そしてK-Reportを指導いただいた前川様にも本当に感謝しています。
現在は家族ぐるみでお付き合いもさせており、kintone以外の事も気さくに話したりして非常に良い関係を築かせていただいております。また今後も引き続きこの関係性は継続させていただけると良いなと思っております。」
株式会社八洲様のご紹介

| 会社名 | 株式会社八洲(やしま) |
|---|---|
| 所在地 | 東京都府中市若松町3-3-1 |
| 電話 | 042-367-1234 |
| FAX | 042-367-1357 |
| メールアドレス | info@fuchu-yashima.co.jp |
| 代表取締役社長 | 加藤 茂 |
| 資本金 | 2千万円 |
| 従業員数 | 15名 |
| 設立 | 1981年12月 |
| 事業内容 | 給排水衛生設備工事の設計・施工・管理 冷暖房設備工事の設計・施工・管理 空調・換気設備工事の設計・施工・管理 建設法に定める管工事業 |
| URL | https://www.fuchu-yashima.com/ |
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