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事例:法政大学アメリカンフットボール部様


チーム運営の情報基盤をkintone中心とする方法に変更

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法政大学アメリカンフットボール部様は、日本アメリカンフットボール史において屈指の強豪チームとして知られています。
甲子園ボウルに十八回の出場を果たし、五回の優勝を誇ります。幾多もの激闘と熱戦を繰り広げてきた名門チームです。
法政大学ORANGEの名で知られています。

部員は選手だけでなく、スタッフ、マネージャー、トレーナー、マーケティング、アナリストなど多くの方々を擁しています。その数は監督やコーチやチームドクターを含めると約180名ほど。
ほとんどが学生である以上、毎年、選手・スタッフ・マネージャー・トレーナーのかなりの人数が入れ替わります。
その入れ替わりに耐えられる柔軟な情報基盤の構築が課題でした。

もともと法政大学ORANGE様の内部の情報共有は、Google CalendarとSlackとONE TAP SPORTSとGoogle SpreadSheetを組み合わせて運用されていました。
それを今回、kintoneをベースに構築し直すことになりました。

きっかけは、チーム応援カフェに矢澤様が来られ、そこで相談されたことです。そのご縁からサイボウズ社の毛海さんを通して弊社をご紹介いただきました。
弊社の代表は社団法人様や自治会様などへの導入実績ももっています。それも含めて御推奨いただいたのだと思います。感謝申し上げます。

構築の最初のフェーズが一段落して半年。チーム応援カフェに矢澤様が登壇された際(9/21)、弊社代表も一緒に登壇しました。その中で法政大学ORANGE様の取り組みについて、あらためて皆さんにお伝えすることができました。
その時の登壇内容については、サイボウズ社から以下のリンク先に記事をアップしていただいています。
日本一を目指すアメフト部の、強いチームを作るためのキントーン活用術【法政大学体育会アメリカンフットボール部】
本稿の内容はその時の登壇内容やこの記事の内容に被っている部分もありますが、弊社の事例としてご紹介したいと思います。

短い期間で実装する難しさ

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今回のご要望は初めてお会いしてから実装完了までの期間が短く、大胆な伴走開発の提案と実践が必要でした。
記録をたどってみると、2022/1/28にメールでご連絡をいただき、2022/2/3に部室を訪問しています。

訪問し、まず現状の運用を伺いました。
上掲の記事にも書かれているとおり、その時点で法政大学ORANGE様が運用されていた機能を
以下に列挙します。
・Google Calendarでスケジュール管理。
・Slackで日々の連絡。
・ONE TAP SPORTSで体調管理。
・Google SpreadSheetで各種データ管理。

その際、4月から運営を開始したい機能としてご要望された機能を以下に列挙します。
・スケジュール管理
・出欠管理
・体調管理
・Slack連携
・ID管理

また、年度内に実現したい機能としていただいた機能を以下に列挙します。
・テーピング費用請求
・面談管理
・書類管理
・物品在庫管理
・テーピング在庫管理
・問い合わせ対応

この時点で4月の運用開始までに使える日数は57日。にもかかわらず、kintoneであればほとんどの機能は実装できると判断しました。

ただし、Slack連携だけは別です。
ご予算の上限も併せて考えると、全ての連携の実現は難しいと答えざるをえませんでした。
なぜならば、Slackのチャンネルの数が多岐にわたっていたからです。その数は30数個。それらのチャンネルに対し、kintoneアプリの特定の条件を満たした場合に通知を行う実装を全て弊社で行うことは難しいと判断しました。

短時間で実装するための柔軟な開発

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4月からの運用に向け、弊社が提案したのは以下の通りです。
・その時点で運営されていた仕組みをいったんkintoneに集約させることを優先。
・チーム応援ライセンスの利点を生かして全選手やスタッフのアカウントを作成する。
・ID管理はCybozu.comの中で行う。
・Cybozu.comにアカウントを作れば、スケジュール管理/出欠管理/体調管理はkintoneで実現可能。
・Slack文化が根付いていて、チャンネル数も多いため、kintoneと併用する。
・Slackとkintoneを連携させるサンプルプログラムを提供するので、学生さんに実装してもらえないか。

法政大学ORANGE様は、選手以外にもマーケティングやマネージャーなどのバックオフィスを担う方を数多く擁しておられます。しかも皆さんはデジタル・ネイティブの世代であり、ITツールに対して抵抗がありません。普段の連絡もSlackで行うことが定着しています。
そうした学生さんの力を使い、Slackとkintoneの連携をどこまで弊社の手を使わずに実装できるか。それが今回の肝でした。

Slack以外の実装は弊社の作業です。弊社側ではまず部員やスタッフなどのマスタを提供いただき、それを整備するところから着手しました。
情報基盤をkintoneに移すためには、アカウントとして完全な形で整備する必要があります。幸い、チーム応援ライセンスによって900アカウントが使えます。そこにデータを移管すれば、あとは体調管理や出欠管理やその他のkintoneのアプリを実装すれば機能としては実現できます。
その結果、今までサービスが分散していたことによる運用がkintoneに集約されたことで改善されるはず。
あとはkintoneの特徴をどう生かしていくか。
学生さんにもkintoneの説明をしましたし、学生さんも弊社の説明に加えて独学でkintoneを学んでいただきました。

弊社が担った作業は他にもあります。
Google CalendarのデータをkintoneのCalendar Plusのアプリに移行する作業は、
Calendar Plusでもほぼ同じようにスケジュールの運用が可能なことを早めに説明し、ご理解をいただきました。
もちろん、Calendar Plusの見た目はGoogle Calendarとは違います。いくつかの及ばぬ点もあります。が、一旦移行させてしまい、まず運用に乗せましょうと提案しました。

ONE TAP SPORTSもそのサービス内で管理している項目をkintoneで再現しました。
他にも、Google SpreadSheetで運用しているデータをkintoneでアプリとして実現する実例をお渡ししました。

Slack連携やkintoneの条件の肝をお伝えする

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あとはSlack連携です。

Cybozu.comのアカウントを使ってデータのアクセスや運用が回せる基盤はできました。あとはそこからどのようにSlackと連携するか。
この時、Slack連携の実装を自社でやることに固執せず、早めに学生さんの力を借りる提案をしたことが運用開始につながりました。

まず、弊社でサンプルのJavaScriptのファイルを作り、条件やアプリやフィールドの書き方について丁寧に説明をしました。プログラム内のこことここの値を変えれば、kintoneのアプリから任意のSlackチャンネルへ連携できますよ、といった風に。そのことを技術的な補足説明も加えながら説明し、ご理解いただきました。

弊社でコーディングする事は極力せず、学生さんにコーディングをしてもらう。その作業を担った法政大学ORANGE様のマネージャーの学生さんはとても優秀な方でした。
弊社が提供するJavaScriptのサンプルをもとにした説明。それに何回かの質疑を繰り返すことで、多くのチャンネルからkintoneへの通知が実装されていきました。その数は今ではかなりの数にのぼるはずです。
お客様が自立した実装を行っていただく。弊社は質疑を通してそれを支援する。まさに「ともに走る伴走」のあり方ではないでしょうか。

基盤を整えることによって、情報基盤としてのkintoneに命がやどりました。その結果、4月の時点で運用が開始できました。
もちろん、その時点で完全ではありません。そもそもkintoneで作成するシステムに完成はありません。永遠に未完成なのです。それを少しでも業務改善の必要に応じて継続的に改善を繰り返していくべきもの。それがkintoneのよりよい使い方だと思います。
法政大学ORANGE様も常に成長し、勝利を目指されています。それと同じようにkintoneアプリも常に成長していく。
そうした価値観をはじめから法政大学ORANGE様が持っていてくださったこと。それが、4月からの運用開始につながり、それ以降の継続的な修正につながりました。
5月の連休明けごろからは、弊社が何か手を動かすことはほぼなくなりました。

お客様が自立し、自走を始めていただいた後もご縁は続く

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5月以降に弊社が関わらなくなったとはいえ、2カ月に一度ぐらいはkintoneについてご質問をいただいています。そしてその都度、弊社からお応えしています。
開発をしなくなったからといって、ご縁が切れることはないのです。
むしろ、さまざまなイベントのお誘いをいただいています。

たとえば、弊社代表の出身校は関西大学です。
そのご縁を踏まえてか、法政大学ORANGE vs 関西大学カイザースの定期交流戦(6/26)にお招きいただきました。仕事関係の方もお誘いして快晴の中で応援しました。
また、今年の甲子園ボール出場をかけた大一番の試合である法政大学ORANGE vs 早稲田大学 BIG BEARSの試合(11/23)にもお招きいただきました。この時は荒天の中でしたが、家族や仕事関係の方々を連れて応援しました。
残念ながらその試合には敗れてしまい、今年の甲子園ボウルに出場する事は叶いませんでした。

今後の展開

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開発の第一フェーズを終えた後、弊社は法政大学ORANGE様の実装からは離れていました。
が、先日のチーム応援カフェの登壇や本稿のアップと時期を同じくして、次のフェーズに向けて再始動することが決まっています。

上述したとおり、法政大学ORANGE様として考えていらっしゃる機能は他にもあります。より詳しく書くとグッズ販売の管理やその他の備品管理や選手の保護者様への書類提出の管理などです。
まだまだチームを強くするためにやるべき事項は多岐にわたっています。

これからも弊社としては応援していきたいと思っています。また、その改善を通して、わが国のアメリカンフットボールの盛り上がりに少しでも貢献できれば本望です。

そしていつの日か。代表の母校である関西大学カイザースと法政大学ORANGEが甲子園ボウルで激突する日がくればいうことなしです。
その日、代表は実家そばにある甲子園球場に間違いなく応援にいくことでしょう。
その時、弊社代表がどちら側のスタンドに座って応援するのか。それを悩める時が来ることを楽しみにしています。

矢澤様より

導入からの日々について矢澤様はこのように語ってくださいました。

「早い(短期間)、うまい(高品質)、安い(低コスト)という請負泣かせの要求を見事に達成していただきました。特に大きな課題となる「コスト」については、我々ユーザー側が持つ人的資源を活用いただいたことが成功のポイントだったと思います。誠実に、丁寧に、我慢強く。長井代表をはじめとするアクアビット様の指導は本当に素晴らしく、我々も自立運用できるに至りました。
とはいえ、我々のKintone活用は始まったばかりです。引き続き、伴走いただければ幸甚です。」

まとめ

弊社にとって法政大学ORANGE様の案件は伴走の開発形態でもやっていける自信を持つきっかけとなりました。それもあってとても印象に残っています。

まずは次のフェーズを完成させていきたいと考えています。ありがとうございました。

法政大学ORANGE様のご紹介

名前 法政大学アメリカンフットボール部 ORANGE
創部 1935年
ウェブサイト https://www.hoseiorange.jp/football
Facebook https://www.facebook.com/HoseiFootball/
Instagram https://www.instagram.com/hoseifootball/
Twitter https://twitter.com/HoseiFootball
YouTube https://www.youtube.com/channel/UCCKmy0IBGOrQy6JCFbnJg7g

今さらメールがすごいと言われても


先日、フォーブスジャパンのオンライン版でこんな記事を見つけました(SNS時代でも、メールがやっぱりすごい理由)。メールを礼賛するようなタイトルに、この期に及んでメール?と逆に興味をもって読んだのですが、正直いってあまりにも現状にさからった記事内容にがっかりしました。

メールって、コミュニケーションツールだったはずですよね?普通、コミュニケーションといえば、双方向のやり取りを指すはず。ところがこの記事を読むと、双方向の視点が見事に欠けています。双方向ではなく一方通行のツール。それも配信業者にとって都合の良い配信手段として。この記事の中で礼賛されるメールとはコミュニケーションツールではなく配信手段でしかありません。送り手側に都合のよいだけの一方通行のコミュニケーション手段の可能性を力説されても、シラケてしまいます。

私の感覚では、メールはもはや主流のコミュニケーションツールではありません。もちろん、私もコミュニケーション手段としてメールは残しています。一部のお客様とはいまだにメールでやり取りしているので。

おそらくオンライン上で行う双方向のやりとりの手段として、メールはもうしばらく生き残るでしょう。ですが私が技術者同士のやり取りでメールを使うことはほぼありません。chatworkやLINE、Facebook メッセンジャーやSlackで仕事のやりとりはほぼ事足ります。メールに頼らずともお手軽なコミュニケーション手段は十分用意されているのです。

なぜメールが使われなくなったのか。その理由を知りたければ最適な情報があります。それはサイボウズ社が以前展開していたNo email キャンペーンです。この中に理由が書かれています。(キャンペーンサイトは無くなってしまったようですが、スライドシェア上にアップされています)。
・整理されない
・引き継げない
・取り消せない
・添付できない
・集計できない
・経緯を追いづらい
・見落とす

サイボウズ社の主力製品の一つはグループウエアやんか、アンチemailの主張は差し引いて受け取らなあかん、という声もあるでしょう。でもここに列挙したアンチemailの理由は今もなお有効です。少なくともフォーブスジャパンの記事にはここに挙げたemailの欠点を補う記述は見当たりませんでした。

それどころかフォーブスジャパンの記事にはこう書かれています。「ウェブサイトのデザインに使われるHTML5やCSS3などの技術が進化し、メールは一方通行の「読み物」から、ウェブサイトばりにインタラクティブなツールになった」。ところが、こういったインタラクティブなHTMLメールは、メーラーによっては完全に読めません(こちらに英文ですがメーラーのCSS対応状況が掲載されています)。メールでやりとりする上で不可欠なメーラーが、インタラクティブなHTMLメールに対応し切れておらず、しかもそれが改善される気配がない。これは、メール市場の拡大を謳うこの記事の説得力を完全に損なっています。もう一つフォーブスジャパンの記事に抜けていると思ったのが暗号化への対応です。実はほとんどのメーラーでは暗号化設定が実装されています。ですが、メールサーバーの設定によって利用者がメーラーの設定を変えねばなりません。それなのに、フォーブスジャパンの記事にはそのことに触れていません。そもそも双方向性が考慮されていないため、暗号化の問題に触れる必要がないのでしょう。でも、この点はメールの将来性にとって不可欠な視点のはず。

なぜメーラー開発各社がHTMLメール対応に本腰を入れないのか。それは私見ですが、ひとたびその機能を許せば通信データ量を食うHTMLメールによる一方的な配信が増大し、通信料も莫大になるからではないでしょうか。No emailキャンペーンでは触れられていませんが、そもそもメールとは送信者が受信先のアドレスさえ知っていれば、自由な内容、自由な容量のメールが送り放題です(メールサーバーを持っていれば流量制限も無尽蔵です)。それに比べて、LINEやchatworkやSlackでメッセージを送るには、受信者側の許可が必要です。

そういう許可制が敷かれたプラットホームでは、メール配信会社は大量配信が出来なくなります。この点を抜きにしたフォーブスジャパンのこの記事には、配信会社の思惑を感じずにはいられません。

とはいえ、フォーブスジャパンの記事にはメールの優位性として情報量を盛り込める点が指摘されています。これはchatworkやLINEにない利点であることは認めざるをえません。また、記事内に登場するハイムス社の紹介では、効果的なメール配信を行う仕組みを備えているそうです。だとしたら一目置くべきかもしれません。ですから、一概にメールを否定するのもまた賢い対応ではないのです。どうにか双方の良い点を兼ね備えたコミュニケーション手段ができればいいのに、と常々思います。

もし、フォーブスジャパンの記事にあるような配信業者が、本気でメールプラットホームに未来を賭けたいのであれば、まずは下手な鉄砲も数撃ちゃ式手法より、本当に記事が読まれるべき内容にすべきだし、対象も絞るべきではないでしょうか。一方通行ではなく、読み手からも適切なフィードバックが戻るようなツールであるべきだと思います。そのためにはメーラーにも改善の余地があります。上に書いたようにメーラーのCSS対応もまだまだです。本来ならばウェブサイトと同じレベルでCSSによるデザインが施されたページが読まれるべきでしょう。ですが今の対応状況は発展途上もいいところです。それ以外にもメーラーでできることがあるはずです。例えばメルマガの末尾には配信停止のリンクが記載されています。これをもう少し改善し、メーラー側に配信停止機能を持たせるというのはどうでしょうか。その都度メール末端のURLをクリックして配信停止を行わせるのではなく、メール一覧から右クリックで配信停止を実現する機能。この機能をメーラーが実装するだけで、余分な一方通行メールが減るのではないかと思います。

コミュニケーションツールにはまだまだ改善の余地がありそうです。これを読んだIT技術者の方。よかったら改善に取り組んでみられてはいかがでしょうか? え? おまえがやれって? うむむ、興味はありますが、多分私一人には荷が重いですね。もし興味がある方、一緒にやりませんか?