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2022年2月のまとめ(法人)


令和四年二月。
北京五輪が終わりました。ですが、オミクロン株の患者数は高止まりしたままです。
高揚と混乱が依然として世界を覆う最中、ウクライナにロシア軍が侵攻をはじめました。国際関係に起こった混乱は、平穏無事な日々から私たちをさらに遠ざけていきます。

戦後から今まで、成長を遂げてきたわが国。バブルが弾けてからの30年、長期停滞が叫ばれていた間も、わが国の文明水準は諸国に比べて高いレベルを享受してきました。
ですが、その状態に慣れてしまったわが国を尻目に、新興国がぐんぐんと成長を遂げ、わが国を抜き去っていきます。

ウクライナがロシア軍に攻め込まれたことは、いくら日本国内が安定していても、諸外国が何を起こすかわからないリスクの前では無力な事を私たちに教えてくれました。
ただでさえわが国にはさまざまな課題があります。諸外国のリスクや自然災害のリスクも考えると、生産性を阻害するような商慣習ぐらいは改めておかないと。今のままではいざ有事が起こった際に対応できません。
それには働き方の改革が欠かせません。既存の成功体験はとっくに古びてしまいました。高度成長の成功に酔った過去は忘れた方が良さそうです。
新たな働き方に考え方をアップデートしていかなければ。つまり、リモートワークを前提とした働き方に対応していかねばなりません。常に前向きに、未来を見て考える。その癖をつけておかなければ。

弊社でもそれは同じ。まだまだ課題は山積みです。昨年の反省を真摯に考えるため、今年から心機一転してさまざまな活動に取り掛かっています。
昨年末からは、持続可能な経営体質に変えようと自社サービスの開発も始めました。避けていたSESも、メンバーの成長を考え、受けることにしました。

達成度6割。達成感6割。満足感5割。それが今月の代表自身の自己採点です。

まずはもう一度足元を固め直します。
弊社とご縁をいただいたすべての方々に感謝します。ありがとうございました。


●弊社の業績

§ 総括 二月度の売上は、まだ確定していませんが、目標額には到達できました。ただ、年間を通してみると最低ラインに届かない見込みです。昨年の10月の落ち込みが響いています。
あと一か月、がんばって積み上げなければ。

お陰様で今月は多数の引き合いを頂きました。ほぼ毎日といってもよいほど、新たなお話を頂きました。土日祝ですら新たなご相談を何件も頂きました。

そうした案件に対応できる体制を構築するため、今年に入ってからは最低でも週二日、サテライトオフィスにおいて対面で教えながらの開発を行っています。
お陰で、kintoneの中だけで完結できるようなご要望については、うちのメンバーだけで回りつつあります。
ただ、kintoneだけで回せるような案件は小規模です。売上の中では小規模であり、大きな案件も引き受けて行かなければ。弊社の価値とは他のPaaS/SaaSとkintoneを連携させることにあると置いているので。

そうした他のPaaSやPaaSとkintoneを連携するにあたっては、全体の設計や細部の構築が必要です。これらを担うための代表のリソースは、新たな案件を次々と頂いていることもあって不足しています。

Cybozu Days 2021で得たご縁やその他のチャネルから、新たな案件の引き合いはいくつもいただけています。
やはり、Cybozu Days 2021に出展したことで弊社の認知度はさらに上がったように思います。

ですが、それをこなすだけの開発スピードを確保しなければ。スピードが落ちると、昨年のコロナ感染の後の弊社が経験したようにサイクルが崩れます。そうなった途端、経営にダメージを受けます。
そのためにも、メンバーに対する教えを強化していきます。私も、技術顧問の方にも案件に携わっていきながら。

今月は弊社にとって以下のようなトピックがありました。
・代表が分報を始めました。
・サイボウズ社よりバレンタインデーのチョコをいただきました。
・弊社ではブロックしていたSES的な半常駐の案件をお請けすることにしました
・弊社契約としては約11年ぶりに新たなkintone環境を契約しました。

実績を出しつつ、日常も充実させるための工夫。それらは全て、代表の求めるワークライフバランスの実現につながってゆくと信じています。


§ 業務パートナー 今年からサテライトオフィスにて弊社メンバーに対して対面開発をして教える。そう決めたことで、サテライトオフィスへの訪問頻度を増やしています。

数年前から一緒にやっている有限会社シンボ技研様は、昨年のCybozu Days 2021でも出展やスタッフ協力でもお世話になりました。
弊社のサテライトオフィスは有限会社シンボ技研様のオフィスの一部をお借りしています。
そのご縁をこの春からさらに強化しようと思っています。来月早々より作業をお願いするつもりで考えています。

昨年末から今年にかけては、他の企業様からも複数の協業の提案をいただいています。
そうしたご提案をおこなってくださるのはとてもありがたいのですが、協業のご提案の多くは弊社にとっての発注元としてのお申し出です。現状で案件の引き合いを多数いただけている弊社が、これ以上の案件を請けることについては慎重に進めていかねばと自重しています。リソースの問題がありますので。

また、業務を単に丸投げしてしまうことも慎むつもりです。外注は弊社のノウハウにならないばかりか、外注費が増加による財務諸表への悪影響にも繋がります。
そのため、なるべく外注費を抑え、弊社が直に実装する体制をとりたいと考えています。

とはいうものの、昨年末から、代表が自分にかけていたいくつかの心理のブロックを外しました。例えばオフショア開発、常駐、サービス開発も含めて。

外したブロックの中には、業務パートナーとの関係性も含めています。今後は柔軟に付き合っていこうと思います。

§ 開発案件 今月は九割の開発案件がkintoneがらみでした。
ありがたいことに複数の案件のお話を連日のようにいただいています。これもCybozu Daysへの出展など、露出してきた効果だと思っています。

昨年の師走から、初心に戻ってうちのメンバーにもう一度kintoneを教えながら、じっくりと育てていく方向に舵を切りました。
私も焦っていたのかもしれません。能力以上の仕事を振ってしまっていたと思っています。いろいろとある反省点を踏まえ、難しい案件は私と技術顧問とで開発も含めて取り組む方向に舵を切りました。

ただ、それ以上に案件のお話をいただけている今、じっくりと育てる悠長なやり方が厳しくなってきました。

新規案件の実装に私と技術顧問が携わることで開発速度を上げています。
しばらくは、経営者としての理想を追うだけの振る舞いをやめ、一作業者として原点に戻ります。おそらくしばらくは休みも取れないでしょう。
ただし、経営者がワーカーに奔走していては社の発展は望めません。
代表が経営に時間を割けなくなると、大所が見えなくなり経営上のリスクとなります。
弊社の発展を進めるためにも、ここを早く何とかしないと。

今月は3DCADソフトウエアや、3Dプリンターでも新たな勉強をさせてもらいました。



§ 財務基盤の堅牢化 財務をきっちりすること。前からの課題です。
弊社としては問題ないのに、家計が絡むととたんに脆弱になる。
いつになればこの状態が落ち着くのか。財務基盤の弱さをいかにして克服するか。課題は山積みです。

少しずつ財務状況に希望は見えてきていますが、まだ気を緩めるわけにはいきません。
財務の件は、引き続き最優先で取り組んでいきます。

§ 社内体制 昨年の師走の初めに、一年前に作成した社是、企業理念、経営理念やスローガンを見直しました。メンバーが離任した理由に、肝心な部分の価値観のずれがあったためです。そこで年始にあたり、三人でもう一度忌憚のない意見を交わしながら、それらを練り直しました。以下に掲示します。

企業理念
「情報技術を生かして、
正直に、飾らずに、自分、家族、パートナー、お客様、地域に寄り添う」

経営理念
「一期一会の儲けよりお互いが継続して協業できる幸せを」

9つ(ナイン)の「ない」
「組織図はない」
「タイムカードない」
「ノルマは設けない」
「多数決で決めない」
「社長室は作らない」
「肩書きもいらない」
「皆が経営者の行い」
「定年は強制しない」
「雑談は惜しみない」

アクアビットに合う方
「家族を大切にする気持ちのある方」
「仲間を大切にできる方」
「笑顔のある方」
「まず肯定から入る方」
「夢を持ち続ける方」
「人の話を聴ける方」
「人間が好きな方」
「可能性を信じる方」
「自分が好きな方」
「自分で仕事を見つける方」
「会社に滅私奉公せず公私を大切にする方」

メンバーの募集を出した時と考え方の軸はぶれていません。

先々月から、東京都中小企業振興公社の方に人財制度についてのアドバイスを受けることになりました。
アドバイザーの方からもビジョンや価値観を持つことは大切、とのお墨付きを頂きました。今月もZoom越しでアドバイスを行って頂きましたが、弊社の方向性に間違いはないようです。
単なる金稼ぎのためのビジネスに堕す事がないよう、これからも理想を忘れない経営に励みたいと思います。

ただし、理想とはあくまでも継続的に経営が成り立つ体制があってこそ。業務基盤を疎かにしてはいけません。
そのためにも、弊社では継続的な案件やサービスの構築に力を入れ、それが今月は成果を上げています。

今年からは、昨年アドバイスを頂いたとおり、人事評価と技術スキル評価を混同しないように心がけています。
また、今年からはSlackのハドルミーティングの頻度を下げ、できるだけ顔の見えるZoomの打ち合わせに戻しています。またSlackでは朝夕に出退勤の連絡を入れてもらうように運用を変えました。

昨年の真摯な反省をもとに、まず経営の運用をきっちりすることを目指します。

§ 人脈の構築 年始からのコロナ・オミクロン株のまん延によってまん延防止法が発令され、リアルでお会いする機会がますます減りました。
リアル対面で行う商談がいくつかオンラインに切り替わりましたが、リアルでも三回ほどお客様との打ち合わせを行いました。また、世の中がオンライン商談を前提で動き始めており、新たなオンライン商談も含め、多数のオンライン上のご要望をいただきました。岡山、福島、愛知、佐賀など場所にとどまらないお話をいただいています。
今月、頂戴した名刺は8枚です。

もう少しオミクロン株のまん延はつづくでしょうから、こうしたご縁をこれからも大切にしたいと思います。
引き続きよろしくお願いいたします。

§  対外活動 今月はこちらのイベントに参加しました。freee受発注✖️NINJA SIGN連携リリースセミナー(2/3)。

今月、登壇する機会はありませんでしたが、来月はkintone Café 神奈川 Vol.11を開催する予定です。オミクロンはまだ猛威をふるっているでしょうけれど、オンラインとリアルの併催を実現させます。

オミクロン株のまん延により、予定していた飲み会などもゼロになってしまいました。リアルの場の商談すら三回しか行っていません。

そうした状況を基に弊社の認知度を上げる施策の一環として、今年からnoteに毎営業日に記事をアップしています。これは2年ほど前から弊社とパートナー会社向けのSlackに毎朝アップしていた「朝の雑感」を外部向けに公開するものです。内部に公開した後、二日遅らせてnoteに書いています。

弊社の開発や記事執筆のお仕事はこうした対外活動から生まれています。代表自身による新たな交流を発信することは絶対に怠ってはならないと肝に銘じています。

きっと、必ずや、コロナは小康状態に落ち着くと信じ、また皆様と交流を深めたいと思っています。
まずは今月の弊社と関わっていただいた皆様、誠にありがとうございました。

§ 執筆活動 以前に連載していたCarry Meさんの運用する本音採用サイトの「アクアビット 航海記」を弊社サイトにアップする作業ですが、今月は1本アップしました。
(「アクアビット航海記 vol.40〜航海記 その25」)
正社員になったことで担うことになった作業と、それが私を鍛えてくれたことを振り返っています。

今月、書いた本のレビューは3本(
R帝国
人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?
黄金峡

今月、書いた抱負は0本() 。
今月、書いた旅日記は0本() 。
今月、書いた物申すは0本() 。
今月、書いた弊社の活動ブログは0本()。
今月、書いた弊社の技術ブログは0本()。

なお、先月から毎営業日にnoteに書き始めた記事ですが、今月は以下の内容をアップしました。
2月 1日 限界鉄道が復活した喜び
2月 2日 リーダーシップについて
2月 3日 節分の日の心構え
2月 4日 3D造形はSFでなく現実だった
2月 7日 人工雪の北京冬季五輪
2月 8日 ワーケーションの熱が再び
2月 9日 メタバースにどう付き合うか
2月10日 データを扱う教育が必要
2月11日 建国記念の日に祖先に感謝
2月14日 ルールを決めることの限界
2月15日 音楽ビジネスの変革の波
2月16日 技術者の初心を思い出す
2月17日 分報を始めて得た気づき
2月18日 リモート不可の仕事すら…
2月21日 選挙に限らず自己発信力を
2月22日 ウクライナ情勢がいよいよ
2月23日 スポーツ観戦からの気づき
2月24日 Web3.0に乗り遅れの自分

§ 年表

・二月お仕事

御徒町SeaForce様で商談、カフェCreateaで作業、武蔵小杉で商談、中原図書館で作業、稲城Starbucksで作業、ファミリーマート 町田鶴川駅北店で作業、江戸川区で商談、ミニストップ 二俣川店で作業、倉式珈琲店二俣川で商談、ドトールコーヒー二俣川で打ち合わせ、相模大野駅コンコースで作業、コーチャンフォー 若葉台店で本を購入、ホテルJALシティ関内横浜で作業、アクアビットサテライトオフィス×9

§ ツイートまとめ
・二月ツイート

https://togetter.com/li/1852148


デジタルは人間を奪うのか


IT業界に身をおいている私だが、今の技術の進展速度は空恐ろしくなる。

ハードSFが書くような未来は、今や絵空事でなくなりつつある。自我や肉体がITで補完される時代の到来だ。

自我のミラーリングに加えて自我の世代管理が可能な時代。自我と肉体の整合性チェックが当人の意識なしに、スリープ時にcron処理で行われる未来。太陽系内の全ての意識がデータ化されトレース可能な技術の普及。そんなSF的発想が遠からず実現可能になるのではないか。一昔前ならば妄想で片付けられる想像が、もはや妄想と呼ぶのも憚られる。今はそんな時代だ。

そんな時代にあって自我とは何を意味するのか。そして哲学は何に悩めば良いのか。数多くのSF作家が知恵を絞った未来が、道筋の果てに光となって見えている。今のわれわれはそんな時代の入り口に立ちすくみ、途方に暮れている。

本書は、現代の技術爆発のとば口にたって震えおののく人々のためのガイドだ。

今、最先端の技術はどこまで達し、どこに向かっているのか。デジタルの技術は人間を地球を幸せにするのか。それとも死の星と変えてしまうのか。IT業界に身を置いていてもこのような課題を日々取り扱い、悩んでいる技術者はあまり見かけない。おそらくホンの一握りだろう。

今の技術者にとって、周囲はとても賑やかだ。機械学習にIoT。ビッグデータからAIまで。といっても私のようなとるに足らぬ技術者は、それら最先端の技術から産まれ落ちるAPIをさわって悦に入るしかない。もはや、ITの各分野を横断的に把握し、なおかつそれぞれの分野に精通している人間はこの世に数人ぐらいしかいないと思う。それすらもいるのか怪しいが。

だが例えIT業界に身をおいていないとしても、IT各分野で起こっている技術の発展については表面だけでもは知っておかねばならない。少なくとも本書で書かれているような技術事情や、それが人間と社会に与える影響は知っておくべきだろう。それだけに本書のようなデジタルが人間存在にもたらす影響を考察する書は貴重だ。

著者は科学ジャーナリストではない。デジタルマーケティングディレクターを肩書にしている。という事はIT現場の第一線でシステムエンジニアやプログラマーとして働いている訳ではない。設計やコーディングに携わることもないのだろう。だがマーケティングからの視点は、技術者としての先入観に左右されることなく技術が人々に与える影響を把握できるのかもしれない。「はじめに」で著者は、デジタルの進化に違和感を感じていることを吐露する。つまり技術を盲信する無邪気な楽天家ではない。そこが私にとって共感できる部分だ。

本書冒頭では永遠に動き続ける心臓や精巧に意志を再現する義肢などの最新の技術が披露される。本書では他にも仮想通貨、3Dプリンター、ウェアラブルコンピューター、IoT、自動運転車、ロボット、仮想政府、仮想企業、人口器官などなど様々な分野の最先端技術が紹介される。

だが、本書は単なる技術紹介本ではない。それだけなら類似の書籍はたくさんある。本書の素晴らしい点は、無責任なデマを煽らずにデジタルのもたらす光と影を洗いざらい紹介していることだ。そこでは著者は、冒頭に私が書いたようなSF的な絵空事まで踏み込まない。著者が考察するのは現時点で達成された技術で起こりうる範囲に限定している。

著者の説くデジタル世界の歩き方。それはこれからの時代を生きねばならない人類にとっては避けて通れないスキルだ。テクノロジーがもたらす影を受け入れ、それに向かい合うこと。もののネット化(IoT化)が人にもたらす意味を考えること。人間はロボットを常に凌駕し続け、考える葦でありつづけねばロボットに負けてしまうこと。そのためには人間の思考、感性の力を発揮し続けねばならないこと。

各章で著者が訴えるのは、デジタルをリードし続ける責任を人類が担っていることだ。それがITを産み出した人類に課せられた使命。そのためには人間は考え続けなければならない。ITの便利さは利用しつつも想像力は常に鍛え続ける。そのためのヒントは、情報と知識の使い分けにあると著者は言う。

「情報」はメディアなどを通じて発信者から受信者へ伝達されるある物事の内容や事情に関する知らせで、「知識」はその情報などを認識・体系化することで得られるものである。さらに「思考」は、その知識や経験をもとに何らかの物事についてあれこれ頭を働かせることである。これらの言葉を曖昧に使っていると、大いなる勘違いを招く。(174-175ページ)

情報を知識と勘違いし、知識を知力と錯覚する。それこそがわれわれが避けなければならない落とし穴だ。そこに落ち込まないためには思考の力を鍛えること。思考こそがテクノロジーに飲み込まれないための欠かせない処方箋である。私は本書からそのように受け取った。思考さえ疎かにしなければ、ITデバイスの使用は必ずしも避ける必要はないのだ。著者の提言はそこに集約される。

著者は最後に紙の新聞も読んでいることを告白する。紙の新聞には、電子媒体の新聞にない「閉じた安心感」があるという。全くその通りだと思う。閉じた感覚と開けた感覚の違い。ファミコンやPCエンジンで育った私の世代は、決してITに無縁だったわけではない。ゲームだって立派なIT技術のたまものだ。だが、それらは閉じていた。それが開いたのがインターネットだ。だから、インターネットに囲まれて育った世代は閉じた世界の安心を知らない。だが、閉じた世界こそは、人類の意識にとって最後の砦となるような気がする。紙の本は確かにかさばるかもしれないが、私が電子書籍を読まないのもそれが理由だと思う。

私は閉じた世界を大切にすべき根拠に感覚を挙げたい。触覚もいずれはデジタルによって代替される日が来るだろう。だがその感覚を受容するのがデジタルに寄生された意識であってはならないと思う。今はまだ百パーセント有機生命体である脳が感覚を司っている。そして、それが人が人である定義ではないか。例えば脳疾患の治療でもない限り、頭に電極を埋め込み、脳をテクノロジーに委ねる技術も実現間近だ。そしてその技術が主流になった時、人類は深刻な転換期を迎えるのではないだろうか。

思考こそが人の人たるゆえん。著者の論理に従うならば、我らも思考しなければならない。デジタルデパイスはあくまでも人の思考を助けるための道具。決して思惟する行いをデジタルに丸投げしてはならない。本書を読んでその思いを強くした。

‘2016/05/06-2016/05/07