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レディ・ジョーカー〈下〉


いろんな結末を想像していたつもりが、様々な意味で納得のいく終わりかた。

罪を、偏に、紋切的に断罪される行為として描いていない。人が人として人の世に生きていく限り、裁きや過ちの裏表を繰り返しつつ或るのが罪。人間がこの世にあることの意味を、罪の意味を問うことで探っていきたいという作者の意思を感じた。

力作です。

’11/9/13-’11/9/15


レディ・ジョーカー〈中〉


以前、著者が推理作家としてみなされることに抵抗の意を表していたのを何かで読んだことがあるけれど、それもうなづけるような人間の存在の苦悩や社会的な関係性のねじれなどを実に細かくえぐりつつ書き込んでくれています。

決して一面性では捉え切れない犯罪と、その被害者・加害者の葛藤が読み気をなくさせません。

’11/9/9-’11/9/13


レディ・ジョーカー〈上〉


ようやく読めたのですが、息を止めんばかりに濃密な描写ながら、さくさくと読めてしまいます。

のっけから部落問題を題材に描くあたり、上巻からリアリティが迫ってきます。

各人物の紹介を兼ねたエピソードが効果的で紹介のための紹介ではなく、きちんと本筋につながっているあたりもお見事です。

’11/9/8-’11/9/9