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おそ松さん


おそ松さん。

このようなタイトルのアニメが始まったらしい。数日前、娘に教えてもらいました。

おそ松くん、ではありません。でも、あの独特な世界観は健在。違うのは、皆さん大人になっていること。六兄弟はもちろん。ちび太もハタ坊もおとな。イヤミは初老。デカパンも初老。

はじめに娘から聞いた時は、ただのパロディーと高をくくっていました。どうせどこかの誰かがおそ松くんの名を借りて作っただけの代物だろうと。ところが、ニコニコ動画で観たおそ松さんは実に面白かった。赤塚不二夫さんの唯一無二のハチャメチャ世界が再現されているし。しかも、エンドクレジットでは赤塚不二夫Cのマークと、おそ松さん製作委員会の名が。それを見れば充分です。

内容はといえば、これがまたなんとも、シュール。かつ、ブラックな味付け。自主規制などどこへやら、てな感じの。面白い。

で、観て思いました。これはテレビ界の逆襲や。反撃の狼煙や。と。

かつて、おそ松くんは、テレビの勢いそのものでした。テレビが天真爛漫だった頃の象徴として。街角で、茶の間でテレビは大勢に視られていました。しかし、おそ松くんはある日、テレビ界を去りました。そして丁度その頃から、テレビ界は自主規制病を発病します。それからというもの、病状の進行に合わせ、テレビはつまらなくなる一方。街頭でも茶の間でも、元気を無くしつつあります。病は進行しているのに、誰にも見舞われず、ひっそりと埃を被る姿は哀れです。

おそ松さんは、そんなテレビ界を憂えた委員会の皆様によって、復活、いや新生したのだと思います。

毒の感じはなんとなくアメリカのアニメ番組のサウスパークを思わせます。そういえば、あの手のアニメって、日本では見掛けなかったなあ、と。多分、自主規制病にあえぐテレビ界には、サウスパークのような薬は強すぎるあまりに毒となり、用いられなかったのでしょう。

しかし、若い人々にテレビをアピールするには今しかない。そう委員会の皆様は思ったのでしょう。かつてメディアの主役を張っていたテレビ。その存在感を見せるには今こそ、と。そこで満を持して劇薬投入という訳です。でも、面白いですわ、これ。私のようなおじさんには懐かしく、面白いし、中学生の娘の世代にも受けてる。ただ、中学生が観るにはちょっと大人過ぎ。娘から教えてもらうにはパパドキドキし過ぎの内容です。

少し苦言をいうなら、おじさんに媚びているような気がしないでもない。おじさん世代にヒットするパロディーを繰り出すあたりなどはそう。妖怪ウォッチもその辺の狙いがあからさまでした。でも、おそ松さんにはそのおもねりは不要です。今さら70年代、80年代のコンテンツを出さなくてもおじさん達にはおそ松くんだけで充分。

テレビは見ない私です。でもコンテンツ作りの匠の技の幾つかは、テレビから編み出されたことは知っています。それらノウハウが日本から失われるのは忍びない。そう思うのです。なのでテレビコンテンツ文化を維持するためにも、今回のおそ松さんは支持したい。その上で、委員会の皆様には、パロディーに頼らぬようお願いしたいです。パロディー無しで、おそ松くんを産み出した赤塚不二夫さんの創作力に負けぬだけの質。これをお願いしたい。

私もまた、来週娘に見せてもらおうと思います。ニコニコ動画で。え、テレビで観てよ、、という声がどこからか。。