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2020年5月のまとめ(個人)


昨年から、毎月ごとに個人と法人を分けてまとめを書きます。

公私の「私」

●家族とのふれあい

§ 総括 コロナウィルスが猖獗を極めている五月。
今年に入ってから、妻が通院することになりました。それに伴う不調も生じています。わが家には少し波風が立っています。
だからこそ、団結しなければなりません。そうした逆風に耐えようと、わが家は何とかまとまっています。
今月は月末になってようやく緊急事態宣言が解除されました。とはいえ、月の大半を自粛する要請が私たちの行動をしばり、閉塞感に拍車をかけています。
家でじっとするのが苦手な私には逆風が吹く毎日。コロナが憎いのは私も一緒です。いや、残り余生が短い私にとって、その想いはより一層強いです。やりたいことが山積みなのに、逼塞させられた気分に苛まれます。
ですが、私は読書も好きです。また、仕事のご依頼も多くいただいています。そのため、なんとかストレスを溜めずに過ごせています。ご近所にもある程度散歩に出かけていますし。

コロナの中、娘たちの学校はGoogle Classroomを使った授業に舵を切りました。
娘たちはGoogle Classroomを通して課題に精を出していたようです。

家族で出かけることが顰蹙を買う今、外出が糾弾される今、お出かけする機会も限られます。そんな中でも近所を中心に、人がいない場所を選び、方々を訪れました。
家族とは四回、妻とは九回お出かけしました。妻と長女とは一回。

娘たちが大きくなるとともに、妻も私もおいていかれることが増えています。一方で、娘たちが妻を支えてくれるようになってきているのは嬉しいです。
いずれにせよ娘たちは巣立ちます。私は仕事以外にやりたいことが盛りだくさんな人間なので、子離れや引退をきっかけに老け込まなさそうですが、限られた人生でも家族との時間を大切にしたいと思っています。

§ 月表

・五月お出かけ

鶴川郵便局、青戸酒店、中華料理 福永、沢谷戸自然公園、白坂横穴古墳群、高蔵寺、熊野神社、啓文堂書店、高蔵寺沢山城熊野神社はま寿司、薬師池公園 蓮園、華厳院、野津田公園、鎌倉古道、農村伝道神学校、町田GIONスタジアム、小野路一里塚、薬師池公園 蓮園、福室庵、豪徳寺、世田谷城阯公園、世田谷城跡、宮の坂駅 (SG07)、世田谷八幡宮、羽根木公園、北沢川緑道、豪徳寺駅 (OH10)、山下駅 (SG08)、讃岐うどん かいとコメダ珈琲店菅原神社、井出の沢古戦場、蔵家 SAKE LABO出世稲荷町田天満宮cafe gres カフェ・グレ、薬師池、薬師池公園 蓮園、ココデンタルクリニック鶴川郵便局、餃子の王国、舟和 本店 売店、松屋浅草、浅草駅、おいもやさん 興伸、舟和 本店 売店、薬師池公園 蓮園、町田薬師池公園四季彩の杜 ウェルカムゲート、多摩川、綾部不動尊、薬師池公園、薬師池公園 蓮園、コーチャンフォー 若葉台店コメダ珈琲店大國魂神社Base.s Cafe & Diner – Fuchu Terrace –高安寺弁慶硯の井戸味の民芸 本町田店ロイヤルモーター、BOOKOFF PLUS 古淵駅前 (本・ソフト館)、イオン 相模原店、イトーヨーカドー 古淵店、ニイミ洋食器店、嬉嬉豚とんかつ『君に、揚げる。』(極)、天海僧正毛髪塔、上野恩賜公園、博士王仁副碑、清水観音堂、彰義隊の墓、西郷隆盛像、不忍池、薬師池公園 蓮園、薬師池公園、さんじ、正ちゃん、Paitan × Paitan、山中湖忍野八海湧池中池鏡池菖蒲池忍野八海 浅間神社、鐘山の滝、ほうとう不動道の駅 富士吉田

・五月ツイート
https://togetter.com/li/1530710

§ 家族のお出かけ 家族で出かけたのは、上の年表で黄地に太字にしているイベントです。家族で出かけたのは、今月は三回です。
自粛の嵐の中、家族ではほぼ毎日顔を合わせている我が家。
そのため、家族でそろって出かけたのは近場だけでした。
私の母が4/2 に手術を受けたのですが、今月もzoomで実家のパソコンと繋ぎ、うちの家族も揃って歓談できました。
今回のコロナは、家族の意味を考えさせられる良い機会にもなっています。
生きる意味とは何か、死ぬと人は無に消えるのか。コロナは私たちに生きる意味を問いかけています。悪いことだけでもないのです。
働き方と生き方に思いを馳せる機会が増えています。

§ 妻とのお出かけ 妻と出かけたのは、上の年表で桃地に太字にしているイベントです。今月は妻と二人で九回お出かけしました。
前日に私が一人で訪れた近所の高蔵寺のシャクナゲがお見事だったので、妻を連れて再訪(5/3)。近所の沢山城にも登り、熊野神社にも参拝しました。
また、今の家に住んで十数年、妻が一度も町田の市街地まで歩いて行ったことがないので、二人で5キロの道のりを歩いてきました(5/10)。途中、菅原神社や蔵家SAKE LABOにより、町田天満宮やカフェ・グレに寄りながら。
また、これもご近所ですが妻が神社に行きたいと望んでいたので府中の大國魂神社に参拝し、帰りは近くの高安寺にも参拝してきました(5/24)。
他の日は、近隣のお店に訪れることが多かったです。


§ 妻と長女とのお出かけ 上の年表で緑地に太字にしているイベントです。
今月は末日に、三人で忍野八海へと行きました(5/31)。自粛明けですが、海外の観光客もおらず、とても美しい湧き水に癒された一日でした。その前には山中湖畔で風に吹かれて過ごしました。
長女は学校から多数の課題を出されていたことと、オンライン授業が始まった影響からか、自室に閉じこもる傾向が増えたのは若干心配でしたが、最後にこうやって一緒に行動できたのは良かったです。

§ 妻と次女とのお出かけ 上の年表で緑地に太字にしているイベントです。
この三人で出かける機会はありませんでしたが、次女は料理やデザートを頻繁に作ってくれました。特にタルゴナコーヒーは何度も作ってもらいました。
次女については学校からのメール連絡を全て家族lineに転送する設定を行ったため、次女の学業の様子が見られたのはよかったです。課題でも百点を連発していたようです。また、月末になって登校を再開したのですが、そこでもらってきた学校の入学案内に次女のインタビューが登場していたのは嬉しかったです。
また、娘の彼氏が来て、庭にドッグランの柵を立ててもらったのもうれしい出来事でした。

§ 娘たちとのお出かけ 上の年表で青地に太字にしているイベントです。
今月はどこにも出かけていません。
とはいえ、コロナの影響もあって私が家にいることも多く、娘たちとはかなりの時間、顔を合わせています。
お互いの沸点と融点が理解しあえたからか、比較的平穏な日々が過ごせました。

●私自身の五月(交友関係)

§ 関西の交流関係 今月も関西に行かれずじまいでした。そもそも移動できる状況にないので仕方がありません。
仕事では他にも高槻の会社の方と数回お話しする機会がありました。
また、実家の両親とはzoomで語る機会がありました。
また中学からの親友が7月に鳥取でのイカ釣りに誘ってくれました。昨年、鳥取でのイカ釣りは断念しただけに楽しみにしています。
その前に出張で大阪に仕事に行く予定があり、高齢の両親に帰省してきます。コロナを意図せず移してしまわないか心配ですが。

§ 今月の交流 コロナウィルスによるイベント自粛の嵐は、私から飲み会の機会を何度も奪いました。飲んだ日数は2日。延べ2軒。
コロナによる自粛の嵐は、飲食業界を直撃しており、私もお店の応援がしたいのですが、そもそもやっていない店があり、テイクアウトで弁当を買ったり、酒屋やネットで遠距離の生産者支援をすることが精いっぱいです。
今月も一度も外で飲めないまま一月が終わるのか、と思っていましたがお仕事でひと段落着いた後に訪れた浅草の正ちゃんで飲めました(5/29)。六区界隈で飲んだことがなかったので、すごく新鮮でした。自粛が明けたばかりで浅草の人通りは栄華とはほど遠い状態でしたが。
そうした状況をオンライン飲み会が支えてくれていましたが、今月は仕事が相当に忙しく、オンライン飲み会すら二回しか参加できていません(5/13)(5/22)。
面白いところでは、Spatial Chatというツールを使ってバーチャルパーティーに参加したことです。まだトライアルでしたが、世の中にはまだまだ知らないツールがあることを教えられました。
籠っていた日々が多かった割には、仕事では連日オンラインで打ち合わせをしていたので、あまり人と疎外されていた感じは受けていません。
今月の私とご縁を結んでくださった皆様、本当にありがとうございました!

●私自身の五月(文化活動)

§ 読書・観劇レビュー 読んだ本のレビューを記す読ん読ブログの執筆は、主に2019年に読んだ5冊分となりました。あとは7日間ブックカバーチャレンジの7冊です。レビュー執筆は、私の中では大切なライフワークとして位置付けています。このところ書く時間があまり取れず、一年と二カ月遅れになってしまいました。この期間を質を落とさずに縮めたい。それが去年に引き続いての課題です。書く行為への熱意は衰えていませんので、引き続き続けたいです。

一昨年の春まで連載していたCarry Meさんの運用する本音採用サイトの「アクアビット 航海記」を弊社サイトに転載しなおす作業ですが、今月は1本アップしました。
(「アクアビット航海記 vol.21〜航海記 その9」)
代表の人生を大きく変えた決断は、朝礼の場でクビにされる屈辱から生まれました。起業にむけて大きなステップだったと思います。

今月、書いた本のレビューは12本(
教団X
球体の蛇
パソコン入門
夏の名残りの薔薇
蜩ノ記
七日間ブックカバーチャレンジ-FACTFULLNESS
七日間ブックカバーチャレンジ-成吉思汗の秘密」)。
七日間ブックカバーチャレンジ-占星術殺人事件」)。
七日間ブックカバーチャレンジ-ワーク・シフト」)。
七日間ブックカバーチャレンジ-かんたんプログラミング Excel VBA 基礎編」)。
七日間ブックカバーチャレンジ-チームのことだけ、考えた。」)。
七日間ブックカバーチャレンジ-天津飯の謎」)。

今月、書いた抱負は0本() 。
今月、書いた旅日記は0本() 。
今月、書いた物申すは1本(
コロナをSDG’sの実現に活かすために。」) 。
今月、書いた弊社の活動ブログは1本(
freee Open Guild Online #1で司会進行を担当しました」)。

§ 今月の読書 今月は9冊の本を読みました。内訳はスポーツ選手自伝一冊、経済啓蒙書一冊、SF小説二冊、スピリチュアル書一冊、未来予測書一冊、スポーツ選手評伝一冊、アフリカ文学一冊、ビジネス書一冊。
私の今年の目標の一つは本を出版することですが、まだまだ道は遠いです。
ですが、Facebookで7日間ブックカバーチャレンジに参加し、無事に七日間を完走しました。そこからはFacebookでつながっている友人五人にバトンを渡しました。
この経験から得られたのは、読書の魅力です。私が渡したバトンが私にとって未知の書物や、マイナーであっても魅力的な書物に渡った時の喜びは格別でした!
引き続きブログでも本のレビューを書いていこうと思いました。
これらはFacebookへの投稿だと埋もれてしまうため、弊社サイト内のブログとして転載しなおしました。

§ 今月の映画 今月の映画鑑賞は0本です。
一月にわが家のケーブルテレビがアップデートして、ハードディスク録画ができるようになりました(1/28)。
こうした設備が備わったことで家族は映画を家で見る機会を増やしているようです。
ところが三月はキングダムを視聴する時間がとれたのに、先月も今月もほぼ映像作品を見られずじまい。娘が見ていたワイルドスピードを一緒にみたぐらい。

§ 今月の舞台 舞台については、今月は0本です。

§ 今月の音楽 今月は生演奏を聴く機会がありませんでした。ただ、相変わらずGoogle Musicには活躍してもらっています。
先月の時点でThe Beatles、David Bowie、Eagles、Billy Joelについては全アルバムを聞き込み、好きな20曲をプレイリストとして作成しましたが、今月もThe Police、queen、Stevie Wonder、SuperTramp、U2、The Doors、Deep Purpleのアルバムを聞き込み、好きな20曲のリストを作成しました。現在はyesのアルバムを聞き込んでいます。
こうして振り返ってみると、私は70年代の音楽に惹かれているようです。

§ 今月の美術 今月は美術の展覧会を見る機会がありませんでした。

§ 今月のスポーツ 今月は相変わらずコロナが自粛を強いており、スポーツはできていません。
散歩は良く行いましたが、それはスポーツとはいえません。

§ 今月の滝 今月、訪れた滝は1滝です。月末に忍野八海をみた後、忍野八海に湧いた水が滝となって落ちる鐘山の滝を再訪できました。二カ月半ぶりの滝にしばし見惚れてしまいました(5/31)。

§ 今月の旅行 今月はかろうじて、緊急事態宣言が解除された月末に妻と長女とで忍野八海にいきました(5/31)。清浄な水をみているとコロナなどどこかに消えていくようです。
一人では野乃花をつれて近所の公園を8-9キロほど歩きました(5/4)。また、豪徳寺と世田谷八幡宮などを散策しました(5/5)。浅草への商談の帰りに上野恩寵公園の周囲(5/26)や浅草界隈(5/14)(5/29)を巡ったりしました。
妻と二人で高蔵寺にしゃくなげを見に行ったり(5/3)、町田までを歩いて向かったり(5/10)、府中の大國魂神社と高安寺を訪れたり(5/24)、コロナが吹き荒れる中、折に触れてあちこち訪れられたと思っています。

§ 今月の駅鉄 趣味の駅訪問は四駅です。「豪徳寺駅(5/5)」「宮の坂駅(5/5)」「山下駅(5/5)」「浅草駅(5/14)」。
東急世田谷線ののどかな感じにとても癒されました。またコロナ禍で人影が絶えていたので普段はとても訪れて写真を撮ることが難しい東武浅草駅もゆっくりと訪れられました。

§ 今月の酒楽 コロナウィルスによるイベント自粛の嵐は、私から飲み会の機会を何度も奪いました。飲んだ日数は2日。延べ2軒。
蔵家 SAKE LABOに伺ったのは妻と町田まで歩いて5キロ強の道を行った途中でした。会津娘を一杯頂き、帰りには二本ほど焼酎とウイスキーを買って駆って帰りました。
また、オンライン飲み会や夜中の晩酌によって、ストックしている数十本のお酒のうち、3,4本は空きました。

§ 今月のその他活動 人生も半分を過ぎ、一層焦りが募っています。少しでも日々に変化をつけようとする気持ちに衰えはありません。
健康なのに外出できない。コロナが私たちの行動に制限を掛けています。悔しくてなりません。

・公園は七カ所。 「沢谷戸自然公園(5/2)」「薬師池公園(5/4)(5/11)(5/16)(5/18)(5/27)」「野津田公園(5/4)」「世田谷城阯公園(5/5)」「羽根木公園(5/5)」「上野恩寵公園(5/26)」「不忍池(5/26)」

・博物館はゼロカ所。
・駅は四駅。「豪徳寺駅(5/5)」「宮の坂駅(5/5)」「山下駅(5/5)」「浅草駅(5/14)」
・滝は一滝。「鐘山の滝(5/31)」
・温泉はゼロカ所。
・山はゼロ山。
・酒蔵は0カ所。
・神社は七カ所。「熊野神社(5/2)(5/3)」「世田谷八幡宮(5/5)」「菅原神社'(5/10)」「町田天満宮(5/10)」「出世稲荷(5/10)」「大國魂神社(5/24)」「忍野八海 浅間神社(5/31)」

・寺は六カ所。「高蔵寺(5/2)(5/3)」「華厳院(5/4)」「豪徳寺(5/5)」「綾部不動尊(5/18)」「高安寺(5/24)」「清水観音堂(5/26)」
・教会はゼロカ所。
・史跡は八カ所。「鎌倉古道(5/4)」「小野路一里塚(5/4)」「井出の沢古戦場(5/10)」「弁慶硯の井戸(5/24)」「天海僧正毛髪塔(5/26)」「博士王仁副碑(5/26)」「彰義隊の墓(5/26)」「西郷隆盛像(5/26)」
・遺跡は一カ所。「白坂横穴古墳群(5/2)」
・城は二カ所。 「沢山城(5/3)」「世田谷城跡(5/5)」

・名水百選は一カ所。「忍野八海(5/31)」
・灯台はゼロカ所。

私がまだ訪れていない場所の多さにめまいがします。他の活動もまだまだやりたいことがいっぱいあります。
一番怖いのは年齢から来るあきらめと気力の減退です。これだけは防ぎたい。
家族との縁もこれから姿を変えていくことでしょう。仕事もいつかは引退を求められるでしょう。そうなったときにやることがない、とよくある老残にならぬよう。
人はいつかは死ぬ。コロナウィルスの蔓延はそのことを教えてくれました。これから、健康であっても時間があっても出られない。そんな事態にも見舞われそうです。
だからこそ、後悔だけはしないように全力で生きなければ!
仕事だけでなく、いまのうちに時間の合間を見つけ、行けるところに入っておこうと思います。

一方で、将来のこともそろそろ考えねばなりません。
法人のまとめには書いた通り、法人としての売り上げは伸びています。ただ、個人としては投資もしなければ賭け事もせず、不労所得のタネも持っていません。
つまり、一人で私自身の体だけが頼りなので、体に何かがあれば収入は尽きます。そろそろ貯蓄のことも考えていかなければ。

それぞれの場所で俳句も読みました。今月は11句。いずれもツイートまとめに載せています。

あらためて「私」を振り返ってみました。
来月はより一層、コロナが収束に向かっていることを信じて。


完盗オンサイト


本書もこのところ読んできた江戸川乱歩賞受賞作の一つだ。江戸川乱歩賞の受賞作は、作風や構成がバラエティに富んでいる。応募作も推理作家の登竜門であるため、力が入った作品が多い。粗削りだが、魅力もあるのだ。

本書もその一つ。皇居に忍び込み徳川家光公が愛した盆栽「三代将軍」を盗み出すというプロットは野心的だし、勢いに満ちている。奇想天外なストーリーではあるが、小説の内容自体がぎりぎり破綻していないのもいい。興味を惹かれつつ読み進められる。なおかつ、登場人物が挫折から再起する様子が描かれている事にも好感が持てる。

主人公の水沢浹(とおる)は21歳。恋人のクライマー伊藤葉月と別れ、クライマーとしての未来にも自信を失い、ホームレスと変わらない日々を送っていた。

浅草で行き倒れ寸前になるところを救ってくれたのが、寺の住職岩代辿紹だ。ぶっきらぼうだが、温かみのある辿紹。言葉が不自由な少年斑鳩(いかる)を養っている辿紹は、さらに浹も養うことにする。浹に何かを感じたからだ。辿紹は工事現場で作業員の仕事にも出かけており、そこに浹を連れて行く。ところがそこで浹は休憩時間にクライミングトレーニングをしてしまい、そこから浹はその施主の社長國生環にスカウトされる。そこで依頼されたのが、皇居にある「三代将軍」を盗み出すことだ。

その施主、國生地所は日本有数のデベロッパー。その設計事例の多くは、社長の國生環ではなく会長の國生肇の頭脳から生み出されている。自らは動けずストレッチャーにのって移動する肇は、自らが動けないため脳裏に描く欲求を実現せずにはいられない人物。そんな彼の歪んだ欲求は「三代将軍」を手に入れることに向けられている。

依頼を受け、浹はどうすべきか。ここから、本書は面白い展開を見せる。ただ浹が盆栽を盗み出して終わりにはならない。世界的な名声を保っていた元恋人の伊藤葉月。さらに辿紹が養っている斑鳩。そして明らかに精神に深刻な病を抱えている人物瀬尾貴弘も合間に描写される。

奇矯な人物が奇妙な動機と行動で話を進めていく本書。展開がかなり独特な感じなのだが不思議とすいすい読める。違和感もあまり感じない。「著者の都合が感じられなかった」と選評で東野圭吾氏が書いていたが、私もそう思った。著者の都合が感じられないため、読者としても白けることなく付いていけるのだ。奇抜な目標を設定しているだけに、読者としてはその結末がどうなるか気になるのだ。こうなればもう著者の勝ちだ。

本書の後半の動きはめまぐるしい。展開も強引すれすれな速度で進む。だが、それがかえって本書に独特の色合いを与えている。そして著者の都合は感じられない。選評で内田康夫氏が、漫画の原作のような非現実的なストーリーで、受賞には反対したと書いていた。確かにそういう見方もあるだろう。私は書き直された本書しか知らないので、応募時と本書がどう違うのかはわからず、応募時にはもっと展開が強引だったかもしれない。

だが、それはあくまでも受賞作という視点で見た時の話。本書を受賞作と切り離してみてみれば、展開も予想外だし、人物が良く書けている。エキセントリックな人物もいれば、リアルな存在感を出す人物もいる。それぞれのバランスが良いのだ。そのため、風変わりな動機と目的であっても円滑に読めるのだ。そして、その中で浹が挫折を乗り越え、成長を遂げてゆく姿を楽しめるのだ。ただ、最後に浹が取った判断は賛否分かれると思う。特に斑鳩の扱いについては。あと、続編への色気を見せるラストも余計だと思う。多分、本書の読後感については好き嫌いがわかれると思う。

なお、タイトルにあるオンサイトとは、「自分が一度もトライしたことのないルートを、初見で完登すること」(146P)ということだ。そこで完登を完盗と変えたのが肝だ。応募時には「クライマーズ ハイ」というタイトルだったらしい。本書のほうが良いタイトルだと思う。

「クライマーズ ハイ」というあまり良いとは思えないタイトルでこれだけ奇天烈なテーマと構成で受賞したのだから、次回作も気になる。まだ著者の作品は本書しか読んだことがない。見つければ読んでみようと思う。

‘2017/07/18-2017/07/18


幽鬼の塔 他一編


私が9歳の時に出会った江戸川乱歩。この出会いによって私の人生は決定づけられたといっていい。以来30年以上、傍らに書物のない時間が皆無と言っても過言ではない。私の書物愛好人生にもっとも影響を与えた作家である。

この時に西宮市立図書館で出会ったのは「妖怪博士」である。ポプラ社の江戸川乱歩少年探偵シリーズの1冊だった。ポプラ社の同シリーズは、46冊からなっており、大きく分けて2種類に分けられる。すなわち、怪人二十面相の出る作品と、そうでないものである。怪人二十面相が出るものは、子供向けに書かれた本がそのまま収められている。そうでないほうは、大人向けに書かれたものを子供向けに翻案したものである。「妖怪博士」は怪人二十面相が出る方の作品である。

「妖怪博士」によって江戸川乱歩の世界に招き入れられた私は、むさぼるように同シリーズの46冊を読破していく。怪人二十面相が出ない方の著書を読む機会はすぐに訪れた。当時、明石に住む祖父母宅の家によく遊びに行っていた私。帰りに明石ステーションデパートの本屋で本を買ってもらうのが楽しみだった。この時に買ってもらったのが、同シリーズの1冊「幽鬼の塔」である。私にとって初めて買ってもらった江戸川乱歩である。また、怪人二十面相が出てこない方の作品を初めて読んだのもこの時だったように思う。

初めて買ってもらった本という以上に、本作は思い入れのある作品である。柳行李を後生大事に運ぶ謎の男。男は好奇心から明智青年に行李の中身を盗まれ、見つからないと知った後は取り乱して浅草の五重塔に忍び込み、そこから首を吊る。その柳行李の中身を追って、次々と明智青年の前に表れる謎の男女。男女の意外な今と過去の暗い記憶が次々と暴かれてゆく。そして最後の対決から、さわやかな幕切れへと物語は急流のように進む。本書のスリリングな展開と後に涼風吹くような余韻は、少年の私の心に深く楔を打ち込んだ。以来30年以上、私の心は、この時の衝撃を超える読書の喜びを、ただひたすらに、飽くことなく求め続けているともいえる。

ポプラ社の同シリーズの1冊「幽鬼の塔」は子供向けに翻案されていたと先に書いた。本書は、その翻案前のオリジナルである。だが、私に記憶に残るポプラ社の粗筋と、本書の粗筋は、ほとんど変わるところがないように思える。長じてから読んだ他の著者の著作を、ポプラ社の同シリーズに収められていたものと比べてみると、子供向けに際どいエロ・グロ・猟奇趣味描写が注意深く除かれていることに気付く。しかし、本書はその内容や読後感にあまり違いがなかった。つまり、本書のオリジナルには、猟奇趣味と言われた著者の持ち味が比較的薄かったということかもしれない。そのため、ポプラ社の同シリーズの1冊に収めるにあたり、あまり翻案の必要がなかったと思われる。

いずれにせよ、大人向けの本書を読むのは初めてであり、少年の日に幾度も読み返した「幽鬼の塔」の興奮がまざまざと蘇ってきた。粗筋は先に書いた通りだが、読後感のさわやかさも同じである。もちろん、大人になった私が読むと、粗がないでもない。だが、書物とは、読む者の心に何を与えるか、である。本書が私に与えた影響から言って、これ以上私に何が述べられようか。

述べるとすれば、本書に収められているもう一編のほうである。恐怖王。これはポプラ社の同シリーズにも収められておらず、初めて読む一編である。こちらは著者の猟奇趣味が存分に出た一編。死体を盗み出しては死化粧を施し、花嫁と仕立てあげ、情死体として発見されるように仕向ける。見るからに怪しげなゴリラ男や謎の未亡人などが登場し、ことあるごとに空中に飛行機雲で恐怖王の文字を描き、死体に入れ墨で恐怖王と大書するなど、恐怖王の自己顕示を忘れない犯人。大風呂敷を拡げるだけ拡げた本編は、ポプラ社の同シリーズに収められなかったのも頷けるほど、猟奇趣味の横溢した内容である。しかも恐怖王恐怖王と事あるごとに自己顕示を怠らなかった犯人が、行方をくらましてしまう結末である。読者としては宙ぶらりんな読後感を拭えない。著者お得意の大風呂敷がきちんと畳まれずに終わった一編である。が、その猟奇趣味に溢れた内容は、著者の作風を味わうには格好の一編ともいえる。

’14/06/23-‘14/06/25