Articles tagged with: 地方分権

「我が国を観光立国に」の成果を支持します。


1/30付の菅内閣官房長官のブログは、日本の観光立国化がテーマです。内容は、安部内閣における観光立国政策の成果を自賛するものです。

私もこの成果には全面的に賛同します。むしろ、安部内閣の一連の実績の中でも特筆すべき成果ではないかと思っています。

アベノミクスは頑張ってはいるものの、その評価はまだ定まっていません。その評価はおそらくは歴史に委ねられるでしょう。少なくとも今の我々には景気浮揚策の成果は実感として感じられません。改憲についても、道半ばです。私自身、ここここに書いたとおり、改憲派です。それでも今の安部内閣の動きには拙速との思いが拭えません。沖縄の基地問題にしても、同じです。国際政治のバランスからするとやむを得ない判断かもしれませんが、沖縄県民の一定割合の民意が蔑ろにされていることは否めません。

それに比べ、安部内閣が成し遂げた観光立国の成果については文句の付け入る隙がありません。積極的に評価すべきでしょう。

2010/7/26に民主党の前原氏の講演を拝聴したことがあります。当時の前原氏は民主党政権にあって国土交通大臣の重責を担っていました。講演の中で羽田や成田のハブ空港化について熱く語っていらしたことは覚えています。が、観光立国に向けては具体的な案はありませんでした。多少は触れていたものの、具体的な案までは踏み込むことなく、まだ観光立国化への案は練れていない印象を受けました。

それに比べ安部政権は、我が国の観光立国化を着実にやり遂げつつあります。掛け声だけではなく、良し悪しはあれ爆買いという成果は挙げています。観光立国化こそ、今後の日本が目指すべき政策。私はそう思います。日本は今、どのような国として世界から見られているのか。今後の日本のあり方とはどういうものなのか。日本が積極的に世界に主張し、発信すべきという意見も良く耳にします。しかし日本は東洋の果てに位置しています。終着点として諸国の文化を受け入れ、日本独自の文化として咀嚼することにこそ、日本の本分がある気がしてなりません。

日本が技術立国であった過去も今は危うい状態です。技術は移転します。残るとすればITではカバーできない職人技の部分でしょう。しかし、日本人が誇るべきものは、職人技でもない気がします。技術よりも職人技よりも、その背後にある職人気質ともいえるメンタリティー。この心性をこそ誇るべきではなかったか。日本が世界に範を示せるとすれば、日本人の心性こそ相応しい。そう思います。「MOTTAINAI」や「武士道」、先の東日本大震災の際に見せた統制。敗戦直後は混乱の極みにあり、マナーがてんで成っていなかった日本人も、今や世界にその民度を誇ることができるまでになりました。

一方、今の日本の少子化はもう挽回不可能なレベルに達しています。残念ながら、今後は移民受け入れもやむを得ないでしょう。というか、移民受け入れすることなしには、日本の将来は立ち行かない。そんな状態にまで追い込まれています。移民受け入れにあたっては、日本国民の外国人に対する態度も変えねばなりません。かつての日本は中国や朝鮮半島からの移民を受け入れ、日本文化に取り込んでいきました。その時の経験を活かし、拙速に移民を受け入れずに、緩やかな移民の受け入れを日本全土均一に行うことが重要だと思います。

昨年来日した観光客は、空前の数を達成しました。皆さん、意識してはいなかったかもしれませんが、日本人のメンタリティーの由来を知りたくて来日したのではないでしょうか。日本人の心性の秘密は何か。このミステリアスな国の真髄はどこにあるのか。観光客が求めた場所は、以下のリストに挙がっています。

そのリストは、世界的に知られた観光情報サイトであるTripAdvisorが発表しました。「外国人に人気の日本の観光スポット ランキング 2015」。ここに上げられた30の観光地のうち、現代日本を反映する場所は僅かです。17位の「横浜みなとみらい21」と26位の「渋谷センター街」と30位の「六本木ヒルズ展望台」くらいでしょうか。技術面に範囲を広げても27位の「トヨタ産業技術記念館」が入るくらい。あとは、日本の伝統に根差した場所がほとんどです。

このリストにはもう一つ特徴があります。それは東京や奈良、京都以外の場所も多数ランクインしていることです。東京は世界有数の大都会です。しかし観光客の多くは東京をそれほど重視していません。東京ではなく地方にこそ日本の心性が残っているとでも云うかのように。このリストを見ているだけで、そういった意思が感じ取れます。戦後、多くの観光客が日本に惹かれて訪れました。その中には永住された方もいます。そういった方々は自らが身を置く世界のあり方に疑問を感じ、日本に単なるオリエンタリズムではない何かを求めに来たと思いたい。なので、本リストから知る限りでは、それら観光客の方々が東京だけを見ていないことに、私はむしろ安心しました。むしろ、世界は東京に日本を求めていないのでは、という気にすらなります。もちろん、ビジネスや政治の場としての東京は、引き続き存在感を残すでしょう。でも観光客が日本の躍進の秘密や謎めいた文化の根源を東京に求めていないとすれば? 東京は現代日本の繁栄の証。戦後復興し発展した日本を展示する場に過ぎないのかもしれません。ショーウインドウは着飾っていても、バックヤードが荒廃していればそれは虚飾です。そのことは我々日本人が一度認識を改めるべきだと思います。

まずは日本の全土を魅力的にする。そのためにも安部内閣による観光立国化への取組は、後世に残る政策となるかもしれません。日本の観光立国化が成れば、観光振興を通して地方分散に進むまであと一息です。地方分散と移民受け入れが同時に進み、なおかつ日本文化が見直され、活性化される。そうなればいうことはありません。

とかくタカ派扱いされがちな安部政権ですが、こういった取り組みは応援したいと思います。「美しい国へ」がこういったやり方で達成されるとすれば、望ましいことこの上ないでしょう。


ガラパゴス化する日本


私は仕事上で多大な不便を託っているにも関わらず、いまだにガラパゴス携帯を使用している。

ガラケーという割に、飯の種であるSNSや携帯などのIT分野以外では、私の中ではガラパゴスが単なるはやり言葉になってしまっていて、浅い言葉の使い方はよくないと思い、一体どのようなガラパゴス化が起こっているのか、興味を持って読んでみた。

医療や大学、会計基準など、聞いたことのない略語や知っている略語、そして私の飯のタネであるはずのIT分野においてもカーナビやオサイフケータイ、ICカードなど、日本に住んでいるとその便利さを享受しているサービスの数々が世界ではほとんど使われていない状況の数々が紹介されていく。まさに井の中の蛙大海を知らず、を地で行くような現状に恐れを禁じ得ない。

一方で柔道がJUDOとして生まれ変わっていく中で、日本の相対的な地位が下がっている現状をメダル数の推移などで示すが、ガラパゴス化を逃れた分野すらも、未来に展望が開けず、ガラパゴス化が進んだ日本の将来についても悲観的な予想が提示され、読んでいて危機感は増す一方。当然ながら日本の人口減少傾向も取り上げられており、内需型の経済構造が今のままでは維持できないことも書かれている。

もちろん非難しっぱなしではなく、処方箋も用意してくれているのだが、即効性のある案があればどの会社も霞が関ですら採用するわけで、具体的な案というよりは成功例として十数例のケースが挙げられているのみである。

ただ、それらの成功例から見るに、国内でとどまっている限り、ガラパゴス化から逃れる術はないことがよく伝わってくる。

標準化会議などに積極的に参加していくことでゲームのルール作りに携わっていかねば行けないという主張については、今のTPPの動きもあってうなづけるところが多い。

TPPについても私は闇雲に反対を唱えることはできないと思っていたけれど、人口減少について、有効な策が打てていない現状では、閉じこもる形をとる選択が危険であることがよくわかった。外国人参政権も、TPPも私が単純に反対と旗幟を鮮明にできないのも、人口減の今、有効な案を考えられない以上、より一層外に開かれた日本でなければどうしようもないのでは、と思わずにはいられない。

最後に疑問点を一点。

成功例の一つとしてスコットランドの例が挙げられており、地方分権化の利点が述べられているのだが、超特区を江戸時代の出島のように作り、そこから脱ガラパゴス化を進めていくという理論には賛成できるのに、超特区の設置場所として東京を始めとした大都市圏を挙げていることが腑に落ちない。地方への分散資本投下が逆にガラパゴス化を招いたという点は理解できるにしても、今更都心に集中をさせることがはたしてガラパゴス化から日本を救うのか。地震のリスクを感じつつ日々の痛勤に不満を募らせている私にはそこが理解できなかった。

’11/11/08-’11/11/10