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上山の旅 2018/12/27


妻が急に、かみのやま温泉に行きたいといい、年末に家族で山形の旅を楽しんできました。

どうして急に?
妻のいつもの唐突さには慣れっこでしたが、今回も脈略のなさに戸惑いました。
どうも、妻がテレビで葉山館を見て興味を持ったらしいのです。
年の瀬のこの季節。かみのやま温泉に行っても雪で観光はできないはず。さては温泉三昧が目的か!

というわけで、6時半に出発したわが家。小田急から大宮に向かい、7:49分には大宮に着き、BECKS COFFEE SHOPで時間を過ごした後、8:34大宮発のつばさに乗りまして。
家族で電車旅行は久しぶりです。

福島からつばさは山形新幹線へと分け入り、景色に白さが濃くなってゆきます。山形県に入ると、もうそこは雪景色。積もった雪が雪国の風情を演出し、旅人の情緒は一刻ごとに濃さを増していきます。
道中、米沢や赤湯など私がまだ訪れたことのない駅に停まるつばさ。ついつい降り立ちたくなる衝動に駆られます。が、その思いをこらえる私を乗せ、雪国をつばさは走ります。
さて、大宮から二時間強の旅は10:55に完結。かみのやま温泉駅に下車しました。

上山市は私にとって今までほとんど縁がありませんでした。上山市の近くには長井市があり、遠い祖先を介して私とご縁があるはずにも関わらず。
ほかに上山市について私が思い出せるご縁といえば、かつてスカパーのカスタマーセンターでマネージャーをやっていた時、私の下で働いていた女性が上山市出身と言っていたことぐらい。この方には長女が生まれた時にベビーカーを譲っていただいたので、20年近い日々がたった今も感謝とともにそうした情報を覚えているのです。

さて、かみのやま温泉駅に降り立ったはよいのですが、特にどこに行くあてを考えていなかったわが家。
まず、駅前の観光案内所に向かいます。ここで食べたフルーツパフェが絶品でした。着いて早々、フルーツ王国山形の恵みを存分に満喫しまして。

観光案内書でのんびりした後は、城下町である上山市の歴史に触れるため、上山城へと向かいました。
上山城は明治維新で一度は破却され、その後に模擬天守として再建されたといいます。
江戸時代を通じて城主もかなりの頻度で入れ替わったようです。転封が繰り返された大名の悲哀が凝縮された町なのかもしれません。
天守から見る白く染まりつつある町は、旅の感慨に触れてただ美しい。

湯けむりを 霞ませよとて 雪の舞う
上山市街にて

土岐頼行公が藩主の代には紫衣事件で流罪を受けた沢庵和尚を手厚くもてなし、そこで沢庵漬が生まれるなど、歴史のある町としての逸話には事欠きません。

上山城の天守を兼ねた歴史資料館で上山の歴史を学んだ後は、葉山館へと歩いて向かいます。
城を出たあたりからすでに雪が降りしきり、景色は雪国のそれです。旅情を味わうといより、寒さに体をすぼめながら、雪国の厳しさを肌で感じながら。
葉山館までは2キロ弱ほど歩いたでしょうか。もう十分に雪国を堪能しました。途中、かみのやま市役所に立ち寄り、マンホールカードをもらいつつ。

でも、歩いただけのかいはありました。かみのやま温泉 葉山館は外観も温泉旅館としての格式を備えていました。内装も日々の疲れを癒やしてくれます。
部屋には二十四時間入り放題の内湯が備え付けられ、家族四人が広々とくつろげる広さは家族から感嘆の声を引き出すのに十分でした。
バルコニーには足湯が設えられ、そこから見下ろす上山の街並みは雪の舞いに白く染まっています。

雪国の 風情に浴みし 足湯かな
上山温泉 葉山地区にて

そこで、家族には存分にお風呂を満喫してもらうことにして、私は街へと出ました。
まずは来る途中に気になっていたディスカウントショップの「わくわくコマレオ 上山店」で日本酒「米鶴」を購入しました。
さらに、国道458号線を1キロほど歩き、沢庵和尚が庵を結んでいた春雨庵を訪れました。

上にも書いた通り、春雨庵は沢庵和尚が流罪の身をかこちながら、上山の人々と交流を結んだ場所です。
庵の中には入れなかったのが心残りでしたが、境内はゆっくりと見て回ることができました。

雪の降り仕切る中、ただ、そこにある庵。
三百何十年もの間、この庵はそうやってありつづけてきたのだろうな、と思うだけで、来てよかったとしみじみ思いました。
寒さも忘れて春雨庵をじっと見つめていました。

冬雪に 悟りの声を 耳すまし
春雨庵にて

宿への帰り道は、薄暗くなる空と、昼の明かりをとどめる雪のせめぎ合いでした。
柿の木には雪が降り積もり、柿の実の色合いも雪に押しつぶされそうでした。

雪のせの 柿の実や 帰途早まりし
上山市街にて

宿に帰ってからは、湯を楽しみ、食事も楽しみました。
山形の名産が満載で、給仕の方の対応もほどよく洗練されていたのが印象的でした。
娘たちも浴衣に身を包み、間近に迫った進学のプレッシャーを一時でも忘れられたのではないかと思います。

夜も内湯を楽しみ、大浴場も楽しみ、まさに温泉三昧。すばらしい年末となりました。