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2024年の抱負


明けましておめでとうございます。

昨年末にアップした投稿にも書きましたが、昨年度は皆さま、本当にいろいろと有難うございました。
今年も引き続き、よろしくお願いいたします。

今年も抱負を書きます。
本稿の内容は年末にある程度まで考え、元旦に熟慮しました。

一年の計は元旦にあり、とはよく言ったもので、忙しくなってくるとこの言葉の意味がよくわかります。もう正月ぐらいしか計画をゆっくり考える時間がありませんから。
この抱負を仕上げた後は、詳細の内容についてより考えを深めます。そして、昨年末にアップした投稿にも書いた反省を生かし、改善する一年にします。

昨年は案件の増加に備えて3月に1人、4月に3人のメンバーを増やしました。また、既存の外注メンバーの二人には正社員になってもらいました。
ところが、増える一方の案件をこなす速度が釣り合わずにメンバーは疲弊し、増やしたメンバーのうち3人が去ってしまいました。研修計画や教育体制やその他の基盤が未整備なまま採用を急いだ焦りが招いた失敗です。

そうした経験を通して痛感したのは、弊社の企業としての基盤が未整備であることです。各自が個々に動いてしまいがちの弊社で、チームとしてのまとまりがとうとう持てませんでした。

その理由がフルリモートワークの弊害であることは確かです。また、フルリモートワークを遂行するにあたり、統一した事務手続きや研修資料、そして開発にあたっての各種のガイドラインがないことも致命的でした。

あと、もう一つ、うまく行かない理由として挙げられるのは、私の目指す会社の方向とメンバーのそれがずれていたことです。方向だけでなく、そこにいくための手段についても。

まず抱負として挙げるべき当面の目標。
それは、この正月にガイドライン(アクアビット蒸留書)のドラフト版を作り上げることです。
それと同時に、経営理念や企業理念を考え直し、業務計画を作り直すことです。

まずやるべき事を以下に書きます。

1.ガイドライン作成

昨年5月の連休に集中して作ったガイドラインを仕上げます。少なくともドラフト版として内部に出せるレベルには仕上げるつもりです。

昨年作った版は、案件の引き合いから商談、そして契約に至るまでは現状の運用の七割程度は盛り込めたはずです。ところが、開発ガイドラインに着手したところで連休が終わってしまい、そのあとは業務の多忙にかまけて全く進められずにいました。

そのあと、経営が苦しくなると、ますますガイドラインの整備に時間を使う余裕はなくなりました。
また、経営のやり方を変えなければと思うとともに通常の開発のやり方の限界を悟り、伴走開発やサービス提供に舵を切りました。それによって開発のやり方自体に変更が生じ、ガイドラインの必要性がはますます増しています。

今の弊社に足りないのは生産性です。
各自の作業を細かく見ていると、既存のロジックを再度作り直すか、既に作成したコードを構築しなおしているケースが散見されます。
各個人単位ではそうしたことはないはずです。が、別のメンバーが既に作っているコードを再発明したり、すでにある調査結果を再度読み直したり、といったことが起こっているようです。
そうした無駄や重複の部分を弊社内できちんと整理し、業務手順として作り上げる必要があります。それがガイドラインの目的です。

いうまでもなく、マニュアルは読むためにあるのではありません。各自が作り上げていくためのマニュアルです。その点については、昨年の師走に参加した「CHALLenGERS」の中で紹介されていた『無印良品は、仕組みが9割』の中に書かれていました。
作業そのものをまねるためにやり方が逐一書かれたマニュアルは必要ありません。
それよりも、誰がなんのために、いつやらなければならないのか。何故それをするのか。そうした作業の目的を明確にし、個人に視点が固定されないためのガイドラインが必要なのです。

そのガイドラインを(アクアビット蒸留書)と名付けます。

アクアビット蒸留書に盛り込むべき内容は、弊社のありとあらゆる作業です。引き合いから商談、契約に至る作業。経理の上で重要な記帳に関する作業。また、人事・労務に関する手続きや総務に属する作業。
そして、アクアビット蒸留書は永遠に未完成です。常にドラフト版でありながら、全員でこれを研修計画や教育体制が整っていない間に磨き続け、少しでも正規版に近づけるよう努力します。そして全員が遵守します。

そのため、アクアビット蒸留書は月一度、定期的に更新していきます。個人のノウハウややり方がアクアビット蒸留書に書かれているよりも優れているのなら、それを無理にやめさせるのではなく、むしろアクアビット蒸留書に取り込んで全員で共有します。
アクアビット蒸留書がその純度を増すごとに、余分な作業で時間を使うことが減り、案件の実装が円滑にいき、納品までの速度が増えるはずです。

2.弊社の業務の五分割

弊社の業務を大きく五つに分割し、担当者と目的を整理します。

昨年の反省として、代表の私の拡大・新規志向と、メンバーの会社や仕事に対するモチベーションの違いを埋められなかったことが挙げられます。
メンバーの立場からすると、既存の案件がまだ終わっていないのに、次々に新しい案件が飛び込んでくることで既存案件が積み残され、心理的にストレスになっていました。
また、あちこちを飛び回って新たな案件や考えや技術を持ち込んでくる代表についていけない事もストレスになっていたはずです。
新たな案件もいいけど、それよりも既存案件を単価を上げてしっかり維持する。そして案件の数は少なめにし、メンバーのフォローをしっかりすべき。そんなメンバーの不満を感じました。

それももっともで、一番ひどい時にはあるメンバーが十個強の案件を抱えていました。これは改善しなければ。

ただし、まず前提として考えておかなければならないのは、固定の案件ややり方を墨守していては会社の成長が見込めないことです。このAI時代にそんなやり方で会社が続くはずがありません。ましてや弊社のような零細企業が。
また、代表の性格的にも同じ案件ややり方を続けることはできません。そんな苦痛さえ感じるやり方では経営意欲にすら影響を与えます。

その相反する矛盾を解消するため、弊社の業務を五つに分けます。

一つ目は、既存の大型継続kintone案件です。
大口でかつ継続のお客様は単価を上げてもらいます。その上で、既存のカスタマイズ手法を踏襲したまま、引き続き開発にあたります。案件によっては伴走に近い形でやっているものもありますし、半常駐でがっつりやっている案件もあります。
これらのお客様は、弊社の経営の安定に欠かせません。が、それ以上にお客様から信頼をいただいていることが一番重要です。今年はこれらの案件を優先し、引き続きお客様のために力を尽くします。別紙に書いた案件が該当します。

二つ目は、既存のkintone開発案件です。
これらの案件は、伴走開発のやり方も取れないまま、既存のJavaScriptカスタマイズによるやり方で追加スポット保守や追加開発を続けています。別紙に書いた案件が該当します。
これらの案件は徐々にJavaScriptカスタマイズからプラグインやサービスを利用する形に変えていきますが、当面はJavaSctiptカスタマイズが必要になるでしょう。
また、この後に述べる三つ目の伴走開発の中で開発が必要になった作業も、随時この既存のkintone開発案件に加えていきます。

まず弊社メンバーにはこの一つ目と二つ目に集中してもらいます。
多くても一人当たり四つの案件に絞り、集中して当たってもらいます。

三つ目は、新規の伴走開発案件です。
これらは代表の私が主に携わります。
伴走案件の場合、アプリ構築やカスタマイズはお客様が行います。
カスタマイズを行う際はJavaScriptはなるべく使わず、既存のプラグインやサービスを積極的に活用します。
新たな案件が増えても、うちのメンバーには作業を振りません。一旦、代表の私の方で要件定義や伴走開発を行います。別紙に書いた案件が該当します。

四ッ目は地域活動やコミュニティーです。
代表の私は今年もまだkintoneエバンジェリストを続ける予定です。また、今年は弊社役員の妻が地域クラウド交流会のオーガナイザーとして本格的に活動を始めます。

代表はkintoneエバンジェリストとして、引き続きkintone Caféや各種のセミナーに積極的に登壇します。昨年の登壇回数は18回でした。そこで今年は登壇の回数を増やし、25回を目標にします。
そうした活動からは、地域活性化など、いくつかの案件の種も芽生えつつあります。今年も引き続きそうした活動に関わっていきます。
別紙に書いた案件が該当します。

また、オーガナイザーの妻も6/29に予定されている山梨での地域クラウド交流会を必ず成功させ、山梨県で弊社の基盤を構築します。

三つ目と四つ目に代表の私が当たることにより、私の持つ拡大・新規志向を満たすとともに、新規案件の創出も実現させます。

五つ目は新規サービスの開発です。
昨年、3つの新規サービスをリリースしました。
今年はそのサービスをより拡充していきます。そしてサービサーとしての認知度を上げていきます。

弊社の強みは、外部のSaaS/PaaSとの連携実績が多数あることです。そこに弊社の価値を打ち出し、アピールしていきます。

今年11月にはCybozu Daysが開催されることが発表されています。
そこに焦点を当て、当日は新規サービスをベースにブースを出展する事を目指します。
別紙に書いた案件が該当します。

3.評価制度・賃金テーブル・人事計画

弊社の業務を再構築した結果を基準にし、もう一度弊社の経営計画を作り直します。そこには評価制度・賃金テーブル・人事計画のそれぞれを改定し、盛り込みます。

すでに作成したビジョン・ミッション・バリューや人材育成や課題に加え、5年先の財務計画や人員構成計画や、評価制度・賃金テーブル・人事計画も全て作り直します。

弊社は、そもそもKPI(重要業績評価指標)設定が全くできていませんでした。評価制度以前の問題です。そのため、何を目標とし、個々のメンバーは何をすれば達成感や成長を感じられるのかがあいまいになっていました。
メンバーのモチベーションが極めて持ちにくい状態になっていた状態を改善します。

今年からは人事評価について、アクアビット蒸留書に書かれた内容をベースに考えていきます。
アクアビット蒸留書の中では、KPIの設定とその基準について詳しく決めていきます。

もちろん、決めていくにあたっては引き続き外部の力が必要です。ただし、自社で決めていくしかない事も分かっています。

4.コミュニティ・出展

コミュニティへの関与やCybozu Daysをはじめとした展示会への出展は弊社にとって大きなアピールの機会です。

今年のCybozu Daysの開催日は11月7-8に決まっています。今年も弊社は出展する予定です。
出展にあたっては、弊社の役員や経理人事担当が企画から当日まで積極的に関わります。また、代表の私も企画や出展までの準備を任せきりにせず、社運を賭けて準備にあたるつもりです。そのため、ここ数年のやり方を変え、自社のみで出展する事を念頭に準備にあたります。

出展にあたっては、上に書いた五つに分けた弊社業務のうち、新サービスをメインに打ち出します。また、代表の私のネームバリューは最大限に利用する予定です。

代表の私のネームバリューを有効に活かすためにも、代表のコミュニティへの関与の頻度を上げていきます。登壇回数は25回を目標にしますし、それも5分程度のLTではなく、より長尺(20-60分)の登壇についての回数で25回を目指します。
そのためにも、自ら積極的に登壇の機会を増やします。今までのように頼まれたり、依頼を受けたりした後に動き出す受け身の登壇ではなく、積極的に登壇機会を作ります。
また、地方でのセミナーや勉強会出席も引き続けます。

昨年の師走に弊社は山梨で独自イベント二つの創出に関わりました。そのうちの一つは弊社主催です。今年もすでに栃木でのkintone Café開設に関わっています。それだけにとどまらず、コミュニティの創出にさらに関わっていきます。

また、役員の妻が地域クラウド交流会(ちいクラ)のオーガナイザーとして山梨での開催を準備しています。
各地で開催されるちいクラにもなるべく代表の私も参加するようにします。それによってkintoneエコシステムの一員として貢献し、認知度も上げます。

また、各地の地域創生や活性化にも関わる予定です。
今までは単なる参加者でしたが、今年からは違う関わり方を模索します。

まずは一月の城崎と糸魚川から。
そして、一月の戸田市での新年会での展示から始めていきます。

5.ビジョン・ミッション・バリュー

代表の私の拡大・新規志向と、メンバーの会社や仕事に対するモチベーションの違いを埋めるため、もう一度弊社の目指す方向性を定めます。

企業理念

「一期一会の儲けよりお互いが継続して協業できる幸せを
最新技術をお客様、地域に提供し、メンバー、家族、パートナーと輪になって幸せになる」

・うそはつかず、でも失敗は認める会社であるべきです。

目標

「2027年3月までに
・正社員8名 外注パートナー10名に
・社員一人当たりの粗利を 150万円に
・サイボウズパートナーの賞を受賞
・他SaaS/PaaSでももう一つ今のkintone並みの知名度を得る」

価値

①システムを継続してもらえる品質と対応を行います
②技術に偏らず、お客様ビジネスの現場を尊重します
③経営を継続するための自社サービスを生み出します
④社員・協力社・技術者・家族の事を大切に考えます
⑤顧客とともに一期一会でない継続の関係を築きます
⑥技術の進化に先手を打ちながら、自社も進化します
⑦世の中の働き方改革に貢献する手本となり続けます
⑧地域の非営利組織・団体のために技術で貢献します

上記に書いた内容のうち、目標と価値はあまりいじりません。ただ、企業理念と経営理念はもう少し練り直します。
また、それらを基にしたより具体的な経営計画をこの正月に作り込む予定です。

6.ワークライフバランス

代表の私の拡大・新規志向と、メンバーの会社や仕事に対するモチベーションの違いを埋めるためにもう一つ必要なのはワークライフバランスへの考え方を整理することです。

公私の充実を両立させたいとする私の価値観はいささかも揺らぎません。
ただ、昨年は残念ながら私の日常は全て仕事にとられてしまいました。それは誰の責任でもなく、私の招いた因果です。

弊社のメンバーには無理な残業や休日の仕事はさせずに済んだはずです。ただ、それでもストレスを感じさせてしまったとすれば、それが今の働き方の標準なのでしょう。
昭和どころか、平成に若手だった私の働き方すら、今の若い人から見ると異次元であることを認めます。

ただ、私自身が仕事の苦しさや経営の辛さに負け、会社の統制を強化したり、ブラックな働き方をメンバーに強いたりすることは厳に慎まねばと自戒しています。
案件をどれだけ受けてもこなせるだけの仕組み作り。これが今までの弊社に欠けていました。仕組み作りをきちんと整備し、代表の私も含めてワークとライフのバランスがとれるようにします。
先ず隗より始めよ。その言葉通り、私から率先してワークライフバランスを整えます。

私のワークライフバランスが整うときは、弊社の経営も軌道に乗った証しです。

7.事業継続のためのその他の施策

経営を継続させるため、BCP計画(事業継続計画)も定めます。
ちょうど本稿を書いている最中、元旦に能登で震度七の地震が発生しました。
弊社も富士山噴火や首都圏直下型地震が起こった時に備えておかなければなりません。

事業を継続するための山梨に拠点を設ける計画も今年中にはめどがつくはずです。

もう一つ必要な施策は、発信を継続的に行うのが代表のみであることです。それは弊社の弱点だと認識しています。
個人商店ではなく、会社としてのアクアビットのためには、代表以外にも定期的に発信を行う必要があります。
弊社メンバーも思い立った時はイベントの時には発信をしてくれます。ですが、それをもっと自発的かつ随時やってもらうように働きかけます。

8.個人的な抱負

ここからは6.で触れたとおり、個人的な抱負を書きます。
私は遠方に出張することによって、旅への欲求を満たしてしまうきらいがあります。そして、ワークライフバランス目標への飢餓感が薄れてしまう可能性があります。そのため、プライベートの目標をこの場できちんと書こうと思います。
2023年は個人的な目標をどこにも書かなかったことが失敗の原因の一つでした。

以下に書くのは代表の私の個人的な抱負です。
・家族で宮崎と鹿児島に旅行します。これをもって全47都道府県を制覇します。
・今年は結婚25周年ですので、家族でハワイに行きます。
・次女の彼氏のご両親に挨拶するため、韓国にも行く予定です。
・私自身の個人としてのアピールポイントをkintoneエバンジェリスト以外にも打ち出します。
 ・ウイスキー検定二級合格です。三級に受かってから数年間、ほったらかしになっているので酒知識を貯めます。
 ・もう一つ、新たな趣味も作ります。そのためには苦手意識のある習い事に通って師匠に付くことも厭いません。
・共同著者でもよいので、今年は本の出版のための具体的な一歩を踏み出します。
・訪れる場所や読んだ本や観た映画の数は、昨年と同程度をめざします。

ただ、そのワークライフバランスの実現は、アクアビットの経営が継続できるための基盤を確立してこそです。
私のワークライフバランスが整うときは、弊社の経営も軌道に乗った証しです。
そのバロメーターとして個人的な抱負の達成を目指します。

上記、1ー8までが2024年の抱負です。
ガイドライン(アクアビット蒸留書)を整理し、そのためにも弊社の業務を五つに分割します。ビジョン・ミッション・バリューも定め、コミュニティや出展の目標も掲げました。これらを実現させるために今年一年、懸命に努力します。

これらが実現した暁には、弊社の経営は好転するはずです。

ただし、それまでにも決めるべき事、やるべきことはたくさんあります。

ですが、今はAIがあります。
弊社でも使っていますし、サービス運営者やAIの開発者とも密につながっています。
AI元年に遅れをとらないよう、抜かりなく準備を進めていきます。


日本でいちばん大切にしたい会社 7


本書は、パートナー企業の社長様からお借りした一冊だ。

著者の講演は拝聴したことがある。関西大学カイザーセミナーでゲストとして登壇してくださったのが著者だ。

目の前で講演の内容を伺った時の迫力は今も印象に残っている。
迫力とは、人を大切にしない会社への糾弾と批判のトーンの厳しさだ。経営をやっている価値がないとか、詐欺であるとか、辛辣な言葉は強く印象に残っている。

だが、著者が槍玉にあげるように、世の中にある多くの会社は利益を追うあまり、他の点がお留守になってしまっている。利益を優先するあまり、社員を統制し、費用を切り詰める。その一方で売上を伸ばし続けるために社員にノルマを課す。そうした会社がよろしくないのは当然だ。

私もそうした現場を見てきたし、それが嫌で独立した。
だが、利益のみを優先する会社が多い中でも、社員を大切にしながら、経営を成り立たせている会社はある。

本シリーズは7ということだ。7まで出ているということは、それだけたくさんの素晴らしい会社が世の中にあるということなのだろう。
なお、私は1から6を読んでおらず、7を初めて読む。

本書には全部で七つの会社が取り上げられている。
どれもが著者によって厳選された感動企業だ。

福島県の陰山建設
郡山のみならず、福島県全域で献血の陰山として有名らしい。
私は郡山には少しだけご縁がある。だが、陰山建設の名前は初めて聞いた。

社屋に隣接した広大な駐車場。ここは普段、広大な空きスペースとして遊んでいる。
ところが年に三日、この駐車場に献血車と献血志望者が集まるという。さらに、そうした人々をもてなすための出店が出されているという。そうした出店は全て、陰山建設の社員の方々が催しているという。当然費用は陰山建設が持っている。無償奉仕だ。
陰山建設の社会貢献に対する姿勢は素晴らしい。
この中で紹介されている跡取りとなった三代目社長の挫折とそこからの頑張り。そして、周りのサポートが受けられるまでに持ち直すストーリーも感動的だ。弊社もそうなるように見習わねば。

東京都の昭和測機
秋葉原にある精密機械のメーカーだ。
開発・営業・製造が三位一体となり、社内で自由なジョブローテーションを組んでいる。社長自らトイレ掃除とタイムカード打刻を率先して行っている。社長も社員と同じ立場との考えには全く同感だし、それを実践していることも素晴らしい。
経営も多品種少量生産を続け、本業と関係のない投資は一切行わない方針を堅持しているそうだ。

やはり、こういう光る部分を持っている企業は強い。本編を読んでいて、同じ技術会社として弊社の強みを生かさなければと強く共感した。

昭和測機が秋葉原にある事は、何か強みになっているのだろうか。
私には、秋葉原の伝統が何かと問われても適切な答えが見つからない。今や秋葉原はサブカルチャーのメッカとなっているからだ。
だが、昭和測機のような企業が秋葉原で頑張っていることは、秋葉原に日本のモノづくりの伝統が色濃く引き継がれている証しなのかもしれない。最近、衰退が叫ばれる技術立国日本の素晴らしさとして特筆すべきだ。モノづくり日本の希望といってもよいかもしれない。
昭和測機さんが理念を継続できるのも、社員の皆さんの風通しが良いだけでなく、社内で作り上げてきた仕組みがうまく回っているからだろう。弊社も切磋琢磨しなければ。

新潟県のフジイコーポレーション
新潟にあるこちらの会社は、除雪機を世界各国に輸出しているという。また、フジイコーポレーションの社員への心配りの細やかさには感動を覚える。亡くなった社員を社員総出で見送るだけでなく、社内の仕組みのあちこちに社員に負担をかけないための配慮がなされている。

メンバーを愛し、大切にする。それを口にするのは簡単だ。だが、その実践となると難しい。どこまでが正しいのか、私はまだ確信を持っていない。良かれと思ったことが伝わらなかった痛手も記憶に新しいからだ。だが、どのようになろうとも、まず社員を大切に思う気持ちだけは持ちたいと思う。

静岡県のNPO法人六星・ウイズ
創業者の斯波氏は、あのHONDAを創業した本田宗一郎氏と同じ会社で、しかもHONDAの創設メンバーの一人だったという。だが、斯波氏はある日、本田宗一郎と一緒に泊まった宿で視覚障害者の方から杖のことで相談を受けた。その時、視覚障害者の苦労とそれを助ける事業にやりがいを感じた斯波氏は、本田氏と違う道を歩み、視覚障害者向けの事業に奔走する。

今では斯波氏から事業を引き継いだ二代目の社長さんが運営しているが、その姿に営利の目的は感じられない。
視覚障害者といってもいろいろいる。障害者の皆さんにとって何がつらいか。それは、勉強しても仕事の機会が与えられないことだそうだ。
たしかに私が自分の目が見えなくなったと想像してみよう。仕事はほぼできなくなるだろう。さらにほとんどの娯楽が奪われてしまう。この上、仕事したいと望んでも、その機会すら奪われたら、生活に希望がなくなってしまうに違いない。

視覚障害者の立場に自分を置いてみるには、目をつぷって少しでも歩いてみればいい。その不便さは言語を絶する。
また、仕事をしたいのにできないことがどれだけ苦しみのかは、理屈でも理解できる。NPO法人六星・ウイズは障害者に点字の名刺を作成する仕事を通して就業の機会を提供している。これは本当に尊い仕事だと思う。

兵庫県のツマガリ
こちらの会社は、私もなんとなく名前は聞いたことがあった。西宮の甲陽園にあるそうだ。私はもちろん訪れたことがない。そして、大丸神戸と大丸梅田にしかお店もしておらず、オンライン・ショッピングを使わない限り、他地域の方はなかなか買えないらしい。
宮崎で極貧の家に育った創業者は、人の導くままに洋菓子の道に入り、導かれるままに今の繁盛店を築き上げた。

そこで創業者の人生について強調されるのは、自分で選んだ道ではないということだ。導かれるまま、縁のままに洋菓子の道に入った創業者。ところが、極貧ゆえ自然のものしか食べられなかったことによって舌が鋭敏になった。さらに、どの仕事でも子供時代の苦労に比べたら大したことがない、とこつこつと努力した結果が今につながっているという。
利益を顧みず、最高級の素材で庶民にも手が出る値段のケーキを出す。それだけのことでこれだけの支持が得られる。まさに見習わなければならないと思った。

島根県の出雲土建
こちらは、炭を建材にする商品を開発して会社を再生した。一時期は役員が業績悪化を取って辞任し、緊急の要請で常務から社長になった今の社長は、当初は無給で働いていたという。
楽しい時期、挫折の時期、雌伏の時期。そうした社長のいる企業は強い。

宮崎県の生活協同組合コープみやざき
生活協同組合はもともと、賀川豊彦氏が提唱した運動だ。賀川豊彦氏の活動範囲は多岐にわたったが、ベストセラーになった著作のほとんどは今では顧みられていない。だが、生活協同組合の仕組みは、今も世に伝わっている。
私もコープこうべは実家にいる頃はよく利用していた。残念ながら生活協同組合の仕組みは今、かつての勢いがないように思える。
だが、コープみやざきは250,000人もの会員を擁している。それは、なぜ共同購入するのかと言う理念が今も伝えられているからだ。安心な食品や誠実な良品を仲間内で助け合って購入する。その単純な理念が今もなお息づいているからだと言う。

理念が企業を存続させる良い例だと思う。

本書に登場する七つの会社はとても参考になった。だが、私が失敗を通して学んだ事は、理念とは、まず会社を継続させるための仕組みや提供するサービスの内容がしっかりとしていなければ、成り立たないと言うことだ。
その時、会社の継続を優先するあまり、社員に無理をさせ、顧客に迷惑をかけるようなことをしてはいけないのは当然だ。

本書からは理念の大切さは学んだし、それはしっかりと追求していかねばならないと思っている。だが、理念先行ではなく、まず会社の仕組みをきちんと構築しようと思った。折に触れて本書は読み返し、継続的な経営への取り組みが利益至上主義に陥らないようにしたいと思う。

‘2020/07/10-2020/07/11