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上山の旅 2018/12/28



昨日、上山の街を白く染め上げた雪。
それが一夜明けると、からりと晴れた青空の下で街を白く彩っています。

朝食も、昨夜の豪勢な食事の余韻が響くような献立でした。

せっかくなのでチェックアウト時間になるギリギリまで湯を堪能しました。温泉に来たのだから、まずは湯を満喫しないと。
昨晩、街に降りしきっていた雪景色とは一変し、晴れ上がった空を見ながらの湯はいいものです。


チェックアウトも名残惜しいのですが、旅は動いてこそ旅。
宿の中庭や玄関に積もる雪の眩しさが、旅の前途を祝ってくれるかのようです。
昨日は宿までの道を歩きましたが、帰りは宿の方が駅まで送ってくださいました。


さて、お湯にひたるのが目的だった今回の旅。それ以外はまったくのノープランでした。
そこで昨夜調べたところ、レンタカーで郊外を目指すことに決めました。
かみのやま温泉駅前にはレンタカー屋さんがあり、そこで車を借りることに。
私はレンタカーの営業所が空くまで間、かみのやま温泉駅をじっくりと訪れました。
その間、妻子には昨日も訪れた観光案内所で時間を過ごしてもらいながら。

昨日はこの駅でつばさから下車しました。ところがつばさによっては通過していくこともあるらしいのです。
列車の接近を知らせるアナウンスがかなり前から頻繁に流される中、ホームで写真を撮っていた私に駅員さんが心配そうに近寄ってきました。
それもそのはずで、つばさは猛烈なスピードで駆け去っていきました。雪片を吹き飛ばしながら。なまじ私がホームの際に立っていたらただでは済んだとは思えません。ホームドアもないのに、都会ではお目にかかれない猛烈なスピードで通過していく様が印象に残りました。
この辺りは在来線に新幹線を走らせているので、都会のホームとは少し感覚が違うのでしょう。

それにしても、雪景色の駅前はまぶしかった。
雪に埋もれた駅前広場や通路を歩いているをうろつきながら、晴れ渡った雪原を冒険する気分に心が躍りました。

レンタカー屋で車を受け取り、妻子を観光案内所で拾い、昨晩のうちに検討しておいた目的地へ。
向かったのは楢下宿 丹野こんにゃく番所です。妻子はこんにゃくが好きなので、ここは目的地としてふさわしい、と思って。
実際、広大な古民家調のお店にはこんにゃくでできた多種多様な料理が並べられ、好きなだけ試食ができます。
その種類やおいしさは、比較すると申し訳ないのですが、群馬のこんにゃくパークの無料コーナーのそれを凌駕していました。まさにこんにゃくのうまさが存分に味わえました。
妻子が喜んでくれたことは言うまでもありません。

ちょうど、こんにゃくを噛んでいる間に屋根からドサドサッと雪が大きな音を立てて落ちました。

こんにゃくを 噛む窓の外 雪崩落ち
こんにゃく番所にて

さて、こんにゃく番所に満足したわが家。次に向かうべき目的地はまったくの白紙でした。
そこで昨日、観光案内所でパフェがおいしかったHATAKE Caféの本拠地であるフルーツ農園に行ってみようと思いました。
車で20分ほど走ると、そこは雪原に農園が広がっています。ただし一面雪に覆われていて、いったい何のフルーツが栽培されているのかわからないほど。
そんな雪原を走る猿を見かけましたが、彼はいったい何を求めてさまよっていたのでしょうか。

雪原や 無い物ねだり 猿が行く
上山市 フルーツラインにて

さて、運転してたどり着いたHATAKE Cafeは、残念な事に閉まっていました。平日なので仕方ない。
ところが、入り口に貼られていた案内によれば、別のショッピングセンターに併設されたお店は営業しているとか。
なので、そこからさらに10キロほどドライブ。かみのやま温泉駅から北に三キロほど行ったトマト上山店まで走りまして。
ここでは寒い中、焼き芋などを買いつつ、おとなりのファーマーズマーケットトマト上山店をのぞきました。地方を旅するとこういう農産物のお店につい立ち寄ってしまいます。山形の豊かな農産物がたくさん並んでいました。

農産物を満足してから向かったのは、斎藤茂吉記念館。ここも私が個人的に行きたい場所だったのです。
ところが、残念なことに閉まっていました。師走の平日なので仕方ありません。

続けて閉まっているお店をめぐると、さすがにがっかり感が湧いてきます。
温泉が目当てだったとはいえ、上山を満喫しきれないモヤモヤ感が生まれます。
そこで妻が郵便局に行きたいというので、上山旭町郵便局へ。ここでは風景印を押してもらいました。昨日は上山城の前にある上山十日町郵便局でも風景印をいただいたので、この旅行では二枚入手できました。

この時点で時間は午後3時半前。まだ新幹線の時間まで数時間はあります。
行く場所がなくなってしまったので、トマト上山店に行く途中で通りがかった「ぐっと山形」へ。
ここは山形県観光物産会館で、広い店内には山形の土産物が集っていました。
私はここで持ってきたノートPCで作業に没頭。
その間、妻は山形の日本酒を試飲し、二本ほど購入していた模様です。

そうしているとレンタカーの返却時間が迫ってきたので、駅へと向かいます。
レンタカー屋への途中で妻子を上山城の前にある菓子司 十五屋本店に下ろしました。
このお店、昨日も私がじっくり城を見ている間、妻子がここに立ち寄ってお店が気に入ったのです。
私はその間、レンタカーを返し、夜の街をのんびりあるきながら十五屋へ。通りがかると上山城がライトアップされていて、降り始めた雪の中、近くまで行って白く幻想的にそびえる城の姿を目に焼き付けました。
この十五屋さん、妻子が気に入っただけはあって、和菓子屋さんの奥にある喫茶コーナーが素朴で良い感じでした。コーヒーもおいしく長時間居ても疲れません。

結局、二日目はあれこれ移動したけれど、妻子のことを考えると最初から城下町あたりでまったりしていても良かったのかも。

新幹線の時間が迫るまでお店に居、タクシーを呼んでもらい駅へ。
楽しかった二日間の上山市ともいよいよお別れです。つばさは黒と白に彩られたかみのやま温泉駅を離れ、東京へ。大宮と新宿で乗り換え、無事に帰宅。

年の瀬に一年の疲れをいやす良い湯治の旅ができました。
またきっと上山市には来ようと思いました。次は雪のない時期に一人で。
そして家族とは雪の時期に。家族の会話でも時折、葉山館の話題がでるぐらい、気に入ってくれたようです。


上山の旅 2018/12/27


妻が急に、かみのやま温泉に行きたいといい、年末に家族で山形の旅を楽しんできました。

どうして急に?
妻のいつもの唐突さには慣れっこでしたが、今回も脈略のなさに戸惑いました。
どうも、妻がテレビで葉山館を見て興味を持ったらしいのです。
年の瀬のこの季節。かみのやま温泉に行っても雪で観光はできないはず。さては温泉三昧が目的か!

というわけで、6時半に出発したわが家。小田急から大宮に向かい、7:49分には大宮に着き、BECKS COFFEE SHOPで時間を過ごした後、8:34大宮発のつばさに乗りまして。
家族で電車旅行は久しぶりです。

福島からつばさは山形新幹線へと分け入り、景色に白さが濃くなってゆきます。山形県に入ると、もうそこは雪景色。積もった雪が雪国の風情を演出し、旅人の情緒は一刻ごとに濃さを増していきます。
道中、米沢や赤湯など私がまだ訪れたことのない駅に停まるつばさ。ついつい降り立ちたくなる衝動に駆られます。が、その思いをこらえる私を乗せ、雪国をつばさは走ります。
さて、大宮から二時間強の旅は10:55に完結。かみのやま温泉駅に下車しました。

上山市は私にとって今までほとんど縁がありませんでした。上山市の近くには長井市があり、遠い祖先を介して私とご縁があるはずにも関わらず。
ほかに上山市について私が思い出せるご縁といえば、かつてスカパーのカスタマーセンターでマネージャーをやっていた時、私の下で働いていた女性が上山市出身と言っていたことぐらい。この方には長女が生まれた時にベビーカーを譲っていただいたので、20年近い日々がたった今も感謝とともにそうした情報を覚えているのです。

さて、かみのやま温泉駅に降り立ったはよいのですが、特にどこに行くあてを考えていなかったわが家。
まず、駅前の観光案内所に向かいます。ここで食べたフルーツパフェが絶品でした。着いて早々、フルーツ王国山形の恵みを存分に満喫しまして。

観光案内書でのんびりした後は、城下町である上山市の歴史に触れるため、上山城へと向かいました。
上山城は明治維新で一度は破却され、その後に模擬天守として再建されたといいます。
江戸時代を通じて城主もかなりの頻度で入れ替わったようです。転封が繰り返された大名の悲哀が凝縮された町なのかもしれません。
天守から見る白く染まりつつある町は、旅の感慨に触れてただ美しい。

湯けむりを 霞ませよとて 雪の舞う
上山市街にて

土岐頼行公が藩主の代には紫衣事件で流罪を受けた沢庵和尚を手厚くもてなし、そこで沢庵漬が生まれるなど、歴史のある町としての逸話には事欠きません。

上山城の天守を兼ねた歴史資料館で上山の歴史を学んだ後は、葉山館へと歩いて向かいます。
城を出たあたりからすでに雪が降りしきり、景色は雪国のそれです。旅情を味わうといより、寒さに体をすぼめながら、雪国の厳しさを肌で感じながら。
葉山館までは2キロ弱ほど歩いたでしょうか。もう十分に雪国を堪能しました。途中、かみのやま市役所に立ち寄り、マンホールカードをもらいつつ。

でも、歩いただけのかいはありました。かみのやま温泉 葉山館は外観も温泉旅館としての格式を備えていました。内装も日々の疲れを癒やしてくれます。
部屋には二十四時間入り放題の内湯が備え付けられ、家族四人が広々とくつろげる広さは家族から感嘆の声を引き出すのに十分でした。
バルコニーには足湯が設えられ、そこから見下ろす上山の街並みは雪の舞いに白く染まっています。

雪国の 風情に浴みし 足湯かな
上山温泉 葉山地区にて

そこで、家族には存分にお風呂を満喫してもらうことにして、私は街へと出ました。
まずは来る途中に気になっていたディスカウントショップの「わくわくコマレオ 上山店」で日本酒「米鶴」を購入しました。
さらに、国道458号線を1キロほど歩き、沢庵和尚が庵を結んでいた春雨庵を訪れました。

上にも書いた通り、春雨庵は沢庵和尚が流罪の身をかこちながら、上山の人々と交流を結んだ場所です。
庵の中には入れなかったのが心残りでしたが、境内はゆっくりと見て回ることができました。

雪の降り仕切る中、ただ、そこにある庵。
三百何十年もの間、この庵はそうやってありつづけてきたのだろうな、と思うだけで、来てよかったとしみじみ思いました。
寒さも忘れて春雨庵をじっと見つめていました。

冬雪に 悟りの声を 耳すまし
春雨庵にて

宿への帰り道は、薄暗くなる空と、昼の明かりをとどめる雪のせめぎ合いでした。
柿の木には雪が降り積もり、柿の実の色合いも雪に押しつぶされそうでした。

雪のせの 柿の実や 帰途早まりし
上山市街にて

宿に帰ってからは、湯を楽しみ、食事も楽しみました。
山形の名産が満載で、給仕の方の対応もほどよく洗練されていたのが印象的でした。
娘たちも浴衣に身を包み、間近に迫った進学のプレッシャーを一時でも忘れられたのではないかと思います。

夜も内湯を楽しみ、大浴場も楽しみ、まさに温泉三昧。すばらしい年末となりました。