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ロックとは止まらないこと


ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したとのニュース。何年も前から候補には挙がっていましたが、受賞が現実になるとあらためてうれしいですね。と言っても私は別にボブ・ディランのファンというわけではありません。ただ、一洋楽ファンとしてうれしいのです。

ボブ・ディランはポピュラー音楽の世界で名声を築いた方。文学者でないのに受賞したことで異論もあるようですが、それは的外れな意見といえます。まず、氏は歴とした詩人です。たまたま氏が紡ぎ出す詩にメロディーが載っているだけの話。今までにも多数の詩人がノーベル文学賞を受賞しているのだから、ボブ・ディランが受賞することに何の違和感も感じません。

三年ほど前、無為な作業の待ち時間を有効活用するため、歌詞を暗記する事に励んだ時期があります。その時に真っ先に取り上げたのがBrowin’ in the Wind。1973年生まれの私にとって、ボブ・ディランはWe Are The Worldに登場するぐらいしか接点がなく、曲も超有名曲のほかはピンと来るものがありませんでした。が、氏の詩を暗記することによって、私はようやく 詩人としてのボブ・ディランのすごみの一端を知ることができたように思います。

今、ボブ・ディランは受賞に対し、沈黙を貫いています。その姿勢を称してロックである、という意見もあるようです。そもそもノーベル文学賞という権威に頭を垂れる事は果たしてロックか否か。 それもまた 私には本質ではない議論に思えます。だいたい、今のロックに反抗をイメージする人ってどれぐらいいるのでしょうか。それこそが古臭いイデオロギーではないかと。私にはビートルズが出現した時点ですでにロックに反抗や反逆のレッテルを貼るのは無意味だと思っています。

あえて、私がロックに精神的な意味を与えるとすれば、それは動き続ける、という事。停滞せず、活動し続ける事。それこそがロックではないでしょうか。

ボブ・ディランは70代に入ってもアルバムを発表しています。2009年に発表されたTogether Through Lifeは全米と全英でアルバム初登場一位にも輝きました。今もなお、Never Ending Tourと称したライブを続けているとか。動き続けている氏はまさにロックの権化そのものです。また、ボブ・ディランの文学賞受賞発表から数日後には、かのチャック・ベリーのニューアルバム発表のニュースも飛び込んで来ましたよね。90歳になるチャック・ベリーなど、いわばロックのレジェンド中のレジェンドです。止まらずに今もなお活動し続ける姿はまさにロックそのものです。素晴らしい!

確かにノーベル賞の科学分野賞は功成り名遂げた人への功労賞の性格が強いです。それは、科学分野の実績は、当初の研究発表の時点から他の科学者による検証を経るまでの時間が必要だからです。その時間は、研究者自身を権威に祭り上げるには十分の長さです。だからと言って、ボブ・ディランの今回の受賞は過去のロックスターへの功労賞と見るのはいかがでしょう。現役のロッカーに向かって功労賞と思われるとすれば、ボブ・ディランが沈黙するのもうなづけます。

でも、ボブ・ディランは断じて過去の人ではありません。今もロックを体現し続けている人です。なので今回の文学賞は堂々と受賞してもらって良いのではないでしょうか。

動き続ける。それがロックの精神。Rock Around the Clockそのものです。ただ時計を刻み続け、動き続ける。であれば、私も負けずに動き続けるのみ!