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尾瀬の旅 2019/7/20


ウィンドブレーカーを購入したのは、出発の前日の夜。20時ごろに御徒町のモンベルで購入しました。
われながら、毎度毎度のぎりぎりの間に合わせ感にあきれます。昨年の尾瀬は、現金を忘れ、お金を借りる失態をしでかしましたし。

でも今年は万全。朝は5時過ぎに妻に駅まで送ってもらい、お金も前日に下ろし済み。憂いなど一つも見当たりません。
大宮駅のATMを秒単位で操作する。そんなスリリングな経験もせず。


心に余裕をたたえながら上毛高原駅のホームにさっそうと降り立った私。まずは一息、山の空気を。
皆さんを待ってバス乗り場へ。今回はリーダーがバス「OIGAMI」号を借り切ってくださいました。バスの窓ガラスには「ゆる歩様」の文字が燦然と輝いています。総勢20名のパーティ。


貸し切りゆえ、尾瀬戸倉でバスを乗り換える手間もなく、鳩待峠まで睡眠がとれました。ありがたいことです。

鳩待峠からは昨年も通った道を山ノ鼻へと歩きます。
一年前は、水芭蕉の咲き頃で、あちこちに可憐な姿が楽しめました。が、今年は昨年に比べて一月半遅い日程だったため、水芭蕉の数は明らかに減ってました。
でも、この山道の先には雄大な尾瀬が待っている。そう思えば、去年にもまして魅力的な道中に感じられます。歩荷の姿も、去年は物珍しさが勝っていましたが、今回は尊く映ります。


山ノ鼻に着いて早々、まずは一宿をお世話になる山ノ鼻小屋へ。小屋の前の広場でお昼を。
私はその合間に、至仏山の山容を眺めました。仏へと至る山とはどのような形か、想像を膨らませながら。


腹に食べ物をおさめ、いざ尾瀬の湿原へと向かった私たち。

尾瀬の広大な湿原は私たちの前に変わらぬ姿で待っていてくれました。
むしろ、尾瀬の景観は、昨年より時期をずらしたためか、季節相応に夏の深まりを見せてくれているようです。
私は尾瀬の自然に精通しているわけでもなければ、そもそも生物相について一家言を説くほどの知見もありません。ですが、やはり何かが違うのです。色合いや植物の植生、空の輝きや山々の緑の深み。そのどれもが鮮やかになっているような。
天候は曇りなのに、目に映る光景のすべてが鮮やかに見えることが驚きです。
昨年の尾瀬には鮮烈な印象を受け、その時の感動がいささかも損なわれず、目の前に広がる景色は昨年の印象を一層強めてくれる。そんな経験です。
昨年に比べて色合いが鮮明になった分、自分の記憶に残る光景とのわずかな差を感じられることが、さらに感動を呼び、私の心に染み入っていきます。
尾瀬の大自然は日々の雑念を払い、感性を研ぎ澄ませてくれる。そして人を日常から解き放った境地に悟らせる。これこそが、あらゆる人を魅了する尾瀬なのでしょう。キザを承知でいうと。

「夏の思い出」が一年ぶりに脳内でメロディを奏でる中、私はもう一つのメロディにも耳をすませました。カエルです。
あちこちで鳴いていたカエル。今年も健在です。
ところが、どの水場に目をやっても、声はすれど姿が確認できません。今年もカエル様のご尊顔を拝むことは叶いませんでした。


カエルは見られませんでしたが、尾瀬はカエルの他にも目を楽しませる対象に事欠きません。モウセンゴケの鮮やかな赤。イトトンボの美しすぎる水色。そして貴い紫をまとったアヤメ。

そして、パーティーの皆さんがお目当てにしていたニッコウキスゲ。
ニッコウキスゲは残念ながらシカの食害があったらしく、一面の山吹色とまではいきませんでしたが、それでも、咲き誇る景色は十分な感動を与えてくれました。開花期に来たかいがありました。

今回のコースは、山ノ鼻から、竜宮十字路へ。そこから北に向けてヨッピ吊り橋を渡ったところで折り返し、そこから牛首分岐へ向けて戻るルートです。

ヨッピ吊り橋からさらに北へ向かうと、三条の滝や平滑の滝が待っています。行けるものならそこまで行きたかったのですが、今年も断念。


でも、山ノ鼻を起点にすれば二つの滝への往復は一人でも行けるめどがつきました。
今回、一泊させてもらった山ノ鼻小屋はベースとするには便利なようです。
昨年、泊まらせていただいた尾瀬小屋もオーナーさんの朝の心遣いや、朝もやの見事さで印象に残っています。が、一方で電源の確保に苦労しました。
ところが山ノ鼻小屋は電源が潤沢に使えたので助かりました。

夕飯も美味しく、お風呂も楽しみ、夜は銘酒「水芭蕉」をみなさんとご一緒に。
夜がふけた後は、小屋の前を乱舞するホタルを鑑賞。野生のホタルがはかない光を放ちながら飛ぶ姿は、尾瀬に来なければ味わえない経験です。実に幻想的なひと時でした。

私は、Wi-Fiがつながるのをいいことに、夜中まで連絡のやりとりや、仕事をこなすことができました。