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からだの知恵 この不思議なはたらき


本書を手に取ったのは、この頃、我が家のヨーキーの小春が急激に体調を崩し、何かせずにはいられなかった焦りから。

結局本を読み始めて2日後に、小春は天に召されてしまい、人間の身体について説明された本書は小春にとって何の意味も持ちえないものとなった。

だが、肉親が揃って健常である私は、発病から死への急速な移行を間近で見たことで、生と死の狭間について理屈でしか理解していなかったことを改めて思い知らされた。その意味で、私にとっての本書は、意味あるものとなった。

1932年に初版が発刊されたという本書は、人体に備わった恒常性(ホメオスターシス)を提唱したことで知られているが、私自身恒常性については浅いWikipedia的知識しか持ち合わせておらず、本書を読んで恒常性についてのより深い知識を授けられたように思う。

我々の身体を動かす仕組みの絶妙なバランスと、それがいかに精緻な関連の上に立っているかを知る上で、1932年という時期に発刊された本書は、医療を専門とするもの以外の読者にとっては実に分かり易い入門編と思える。というのも、それ以降の劇的な科学の進展は、医学をより一層専門化させ、本書のように分かり易く全体的な概略を叙述することを難しくなったから。医学はそれが顕著な分野であるように思う。

もちろん当時の科学の限界故、今となっては私のような素人でも間違っていると思える説明も稀に見つけることができるのだが、その点を差し置いたとしても、本書の平易な記述から得られるべき知見は多いと思う。私をはじめ、IT機器の動作の仕掛けについては精通しているのに、肉体の限界を忘れて暴走してしまう人のなんと多いことか。

’12/02/08-’12/02/14