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クラウドワークスさんの直接契約禁止条項を考える


クラウドワークスさんの件が話題になっています。

GoTheDistanceさんのブログ
クラウドワークスで月収20万超え、わずか111名。働き方革命の未来はどこにある?

ふくゆきブログさん
「クラウドワークスで月収20万超え、わずか111名」は嘘だと思う。

やまもといちろうさん オフィシャルブログ
クラウドワークスが悩ましい件で

かく云う弊社もクラウドワークスさんには登録はしているものの、まだ一度も利用していないのですよね。受注どころかこちらからの提案すらまだ。そもそもプロフィールが完全に埋め切れていないという。

替わりに、なぜかクラウドワークスさんからは仕事提案を色々と頂きます。しかもなぜかライター案件ばかり。ビジネス案件にしても、よくあるテンプレートを使ったタイトルや文面が目立ちます。

このあたりの柔らかさが、「クラウドワークスが悩ましい件で」という批判にも繋がっているのでしょうね。ある種の商売の温床に使われているような微妙な香りが漂っていて。堅実なマッチングサイトに徹して頂ければ我々も安心して使えるのに。

これでは「クラウドワークスで月収20万超え、わずか111名」というフレーズでサービス自体を揶揄されてしまうのも分かります。ただ、一方では、ふくゆきブログさんの「「クラウドワークスで月収20万超え、わずか111名」は嘘だと思う。」との指摘もあります。いったい何が正しいのでしょうか。

弊社がクラウドワークスさんの利用を躊躇う理由の一つに、クラウドワークスさんの利用規約に記載のある直接契約の禁止条項があります。この件については、kintone活用研究会を主宰する株式会社テクネコの加藤和幸さんも指摘されています。以下にその部分を抜粋させて頂きます。

クラウドワークス利用規約
第5条 本サービスの内容
14. 会員又は過去5年以内に会員であった者は、会員又は過去5年以内に会員であった者と、本サービスを利用せずに、直接に本サービスを通じて委託可能な内容に関する業務委託契約を締結すること及びその勧誘をすることを行ってはならないものとします。但し、弊社が事前に承諾した場合はこの限りではありません。
出典元:https://crowdworks.jp/pages/agreement.html

この条文って我々利用者にとっては結構重大だと思うのですよね。今年の年頭に弊社は一年の計を考えました。その中でクラウドワークスさんの利用促進を考えねば、と利用規約を読みました。それで、上記の一文に行き当たり、なんやこれ? と思いました。

弊社が今年年頭にクラウドワークスさんの利用促進を考えたのには、理由があります。それは2015年末に楽天ビジネスさんがサービスを終了したことです。楽天ビジネスさんには、2010、2011年度にかなりお世話になりました。弊社がまだ法人化する前、個人事業主として活動していた頃です。

今回のサービス終了にあたり、楽天サービスさんのサイトも3月末でアクセス不可になるようです。よい機会なのでサイト内に残された弊社の利用情報の取得を行いました。その上で2010年度の利用状況はどうだったかを簡単にまとめてみました。

見積り数
商談数
受注数
受注金額
月額利用料
紹介手数料
税抜純利益
:67件
:21件
:6件
:1,318,000円
:6800円×12か月=81600円
:1000円×21件=21000円
:1,215,400円

2010年4月~2011年3月 楽天ビジネス利用概況

12か月で121万円ですから、月に均すと10万円。今回話題になったクラウドワークスさんの決算報告で出てくる20万円の半額です。ちなみに弊社の2010年度のお仕事は楽天ビジネスさん経由が全てではないので念のため。他のお客様からも多数のお仕事を頂いておりましたよ。ありがたいことに。

で、何が云いたいかというと、この年、楽天ビジネスさん経由で頂いた恩恵は131万に限らないということです。最初のご縁こそ楽天ビジネスさんを通じ、結果として131万円を頂きました。でも、お仕事って一度きりのご縁では終わらないですよね。楽天ビジネスの案件が終わって以降もこの時受注した方々からは継続的にお仕事を頂いています。また、この時ご縁が出来た中の幾人かの方とは未だにプライベートも含めてお付き合いを続けさせて頂いています。要はこの時のご縁から受けた恩恵は131万という金銭だけでは評価できないということです。この時のご縁からは、長きにわたって金額やそれ以外の部分も含めて何倍もの恩恵を受けています。感謝です。

でも、仮に楽天ビジネスさんの利用規約に直接契約の禁止条項が定められていたら? 楽天ビジネスさんを通じて繋がったご縁を直接取引に切り替えることが禁止されていたとしたら? あるいは弊社も今に至るご縁は頂けていなかったもしれません。

弊社(個人事業主時代)と楽天ビジネスさんで締結した契約によれば、金額体系は以下の通りです。月額固定のシステム利用料6800円と商談成立毎に1000円、それと初回の研修受講料として20000円のみ。個人事業主であったため、安価でしかも単純明快な料金体系でした。しかも当該案件に関しない直接取引については全く自由でした。楽天ビジネスさんの出展規約を改めて読み直してみましたが、該当しそうな条項は精々以下の箇所ぐらいでしょうか。

第8条(本サービスの利用)
4.出展者は、本サービスに関し以下の事項を遵守するものとします。
(3)本サービスの利用の結果、サービス希望者との間で契約(口頭、書面を問いません。)を締結した場合において、当社から要請があった場合には、直ちに、サービス希望者の名称、契約に関する代金の金額、支払方法その他当社の定める事項を当社の定める様式にしたがって当社に報告すること。
出典元:https://business.rakuten.co.jp/docs/info/terms_exhibitor/terms_exhibition.html

楽天ビジネスさんがサービスを終了した理由はわかりません。プレスリリース上にも理由は書かれていませんでしたし。ならば仮に、クラウドワークスさんのように当該案件が終わった後の取引も、サービス運営元を経由することを義務付けていたらどうだったでしょうか。継続的にサービス運営元に収入が入る仕組みにしていれば、楽天ビジネスさんのビジネスは中止の憂き目を見なかったのでしょうか。それもわかりません。分かるのは、楽天ビジネスさんのように月額固定でのシステム利用料を徴収していても、案件成立毎に固定の手数料を頂く料金体系でも、サービス継続を行う理由にはならなかったということです。

クラウドワークスさんの場合、料金体系はもっと単純です。契約額の一定割合を徴収します。そして楽天ビジネスさんと同じく、案件を提示する側は原則無料で案件を提示できるのです。基本利用料の発生しない料金体系は出展者には魅力的に映りますよね。しかしその料金体系を採用している限り、案件数が多くなければサービス運営元にとって収益になりません。

案件数を増やしたいのであれば、案件を出す発注元は大切にしなければなりません。発注元の負担が増すような仕組みはもってのほかです。でも、直接取引の禁止という規約は発注元の負担を増すだけのように思えます。折角最初の取引で馬が合う業者さんを見つけても、5年間は発注の際にクラウドワークスさんの仕組みを通さなければならないのですから。メールやLINEやChatworkでひょいっと「こういう仕掛けってちゃちゃっと作れない?工数見合いでお金はきちっと出すからさぁ?」といった依頼も出せなくなります。これって案件を出す発注元にとってクラウドワークスさんを使う意欲を萎えさせませんか? 発注元にとって魅力的な仕組みであってこそ案件数も増え、クラウドワークスさんの収益モデルにとって有益になると思うのですが。優良な発注元が減り、長期的なお付き合いなど無用で一回切りでよいから安価な提案を集めたいという発注元ばかりになると、出展者にとってクラウドワークスさんが魅力的なサービスでなくなってしまう気がします。

とっかかりのご縁はとても重要です。案件マッチングサイトの存在意義は間違いなく今後もあります。でも、発注者と出展者にとっては、そのご縁をきっかけに築きあげる直接の信頼関係もとても重要なのです。クラウドワークスさんには、是非とも直接契約の禁止条項(第5条14項)の撤廃検討をお願いしたいところです。または、条項に記載されているような「但し、弊社が事前に承諾した場合はこの限りではありません」の“場合”が何かをきっちり定義して頂くとか。

その替わり、クラウドワークスさんが継続的にサービスを継続できるための料金体系の構築は、我々出展者や発注元も真剣に考えていかねばなりません。クラウドワークスさんのようなサービスが今後も生き残るためには、サービス運営元としての利益確保は蔑ろにはできないのですから。楽天ビジネスさんのサービス終了は出展者にとっては商流チャネルの消失でもあります。避けたいところなのです。

例えば出展者へのオプションとして月額利用料有りのプランを設けるとか。発注元にも成約金額の一定割合の負担をお願いするとか。当該取引によって得た業務改善効果や収益改善効果の記事をクラウドサービス内にアップしてもらうことを義務付けるとか。この記事はクラウドワークスさんだけでなく、発注元、出典者にとっても外部リンク効果や広告効果として長期的な利益になるかもしれません。

是非ともご検討をお願いしたいところです。