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リーシーの物語 下


上巻のレビューに書いたけれど、じっくり読むという目標が、もろくもくずれ、下巻は3日で読み終えてしまっている。

これは退屈になって斜め読みになったのではなく、物語の面白さに追われてしまったため。

上巻のレビューに書いたように、大枠の展開は今までの作品と似たような感じなんだけど、それは読んだ後だから言えることであって、著者のストーリーテリングの手妻に翻弄されてしまった下巻の読書体験であったといえる。

加えて下巻になってからは展開も時制と語り手と場所が縦横無尽に入れ替わりたち替わり現れるため、じっくりと考えながら読み進めると却って混乱することになると思う。そう思えるほど大量に敷き詰められた布石がつぎつぎとひっくり返っては眼前に現れていくような下巻の展開だから。

本書は再読をし、何度も味わったほうがよい類の小説ではないかと思うし、再読を促すことこそがまさに著者の狙いなのではないかと勘ぐってしまう程だ。

物語の喜びを味わわせることのできることが作家の喜びであるとすれば本書は成功していると思う。何せ、本書は死んだ作家が生前に残した意思が、死後に大活躍する話だからだ。著者が死して後も、物語を読む喜びを読者に与え続けられるとすれば、それこそ作家冥利に尽きること間違いないだろう。

著者の作家としての意思が込められた小説として、後世に残る作品ではないかと思う。

’11/12/14-’11/12/17


リーシーの物語 上


著者の本も大分読んできているけれど、最近はちょっと展開がマンネリ化の方向にあるなぁ・・・と思うことが多い。

正直言ってこの本も展開としては今までの名作たちと同じような部分もあるにはあるのだけれど、著者の凄いところはその描写のディテールにあり、大枠の展開は同じであったとしても、場面場面に今まで見たことのない新しい驚きと謎を提示していくことで、読者をぐいぐいと物語の渦にひっぱっていくところにあると思う。

本書もまた、伏線を多数敷きまくるところで上巻を費やしているのだけれど、その伏線の敷き方が巧みで、人物造形や出来事の描き方がすぐれているため、後から思い返すと大筋の展開が似たものであったとしても、読んでいる間はそのことを全く感じさせない内容となっている。

効果的な小道具の使い方やキーワードの見せ方など、本当に読んでいて万華鏡のようにつぎつぎとワンダーストーリーが繰り広げられることに感嘆を禁じ得ない。

本書を読むにあたっては、筋を追っかけてしまうと著者の本の豊かさに触れられないということが分かっていたので、今回はこのあたりの細かい描写をじっくり味わうため、あえてゆっくりと時間をかけて読んでみた。

’11/12/07-’11/12/13