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アクアビット航海記 vol.7〜起業のデメリットを考える その1


あらためまして、合同会社アクアビットの長井です。前回にも書きましたが、弊社の起業物語をこちらに転載させて頂くことになりました。第二回~第六回までは起業をポジティブにとらえた視点での利点を述べました。今回からは、起業のデメリットを語りたいと思います。なお、以下の文は2017/9/21にアップした当時の文章そのままです。

起業のデメリットを考えてみましょう

第一回でも触れましたが、“起業”しようと意気込む人は、あまり悪い方向には考えません。考えるとしても、せいぜいシミュレーションや想定上のこと。いわゆるマイナス思考やネガティブ思考にとらわれることを恐れるあまり、悪い感情にひたらずに起業に踏み切るものです。そのため、後ろ向きのイメージを抱かずに起業に踏み切っていく。論理やデータでは起業についてまわる悪いことを想定していても、起業のダークサイドを感情で味わった上で“起業”する人は少ないと思います。

私もこのような偉そうなことを書いていますが、成行きで“起業”したため、悪いイメージはまったくもたず、逆に前向きなバラ色起業生活のワクワクもないままの起業でした。どちらの方向にも先走りせず、感情面のシミュレーションが希薄なままの起業だったので、こんなはずでは、という失望にはあまり陥っていません。それが私が10年以上も独立していられる理由なのかもしれません。とはいえ本連載では起業の良い面だけを語るのではなく、悪い面も伝えておくのが使命だと思っています。

この連載をお読みいただいた方の中には、起業の欠点も知り、起業を取りやめる方もいらっしゃるでしょう。または起業のメリットを知り、“起業”したいとの大志を抱いたにもかかわらず、自分に起業は向かない、と組織にとどまる方もいることでしょう。それでいいのです。“起業”したから偉いとか、組織の中で現役を全うしたから偉くないとか、関係ありません。あくまでも人生はその本人のものなのですから。

ただ、起業のデメリットを知ったうえで、なおかつ起業に踏み切る人を私は応援したい。そして、“起業”した方には、社会的にも道徳的にも道を外さず、それでいて私の稼ぎなどあっという間に抜き去っていくぐらいの気概で頑張ってほしいと思います。自分の夢と健やかな家族と会社の利益を両立し、なおかつ起業からはじめて、徐々に会社を大きくしていった方のことは心から応援したいと思っています。

む、また話が堅苦しくなりつつありますね。いけません。ゆるく永く、でしたね。

まずは肩の力を抜き、ありがちな嫌なこと、から語っていきましょう。

生活が不規則になるでしょう

本連載の第二回で、起業の利点としてラッシュから解放され、毎日違った過ごし方ができると書きました。これは逆をいえば、毎日が不規則になることを意味します。なぜ不規則になるかというと、一人で背負い込まねばならない仕事が増えるからです。いったん、ここでいう起業は個人事業を指すとお考えください。個人ですから、一人で営業に向かいます。一人で製品を作り、一人で請求書をおこし、一人でトラブルや問い合わせ対応にあたります。独りで責任を負うわけですし、最初は資金もありません。人を雇えない以上、すべてが自分にかかってきます。 時には納期が急な案件が同時に来てしまうこともあります。複数案件のご依頼をいただくこともあります。そこをコントロールすべきなのはもちろんです。でもそこが、安定した会社勤めと違う起業の宿命。将来のことを考えると受けられる案件は断らずに受けてしまうのです。そして、トラブルや問い合わせ対応は個人でコントロールができにくい種類の作業です。それをこなそうとすれば、定常業務と重なります。そして定常業務が遅れていきます。それを挽回しようと思えば不定期作業に踏み込むしかなくなっていきます。つまり悪循環に陥るのです。

なぜ生活が不規則になるのか

そんな状況で、毎日を規則正しく送れる人がいたらその方は超人です。毎日23時には就寝して、7時に起きるという生活は、ほぼ無理と思ったほうがよいでしょう。もちろん、健康あっての“起業”ですから、健やかな睡眠は重要です。ですが、実際はなかなか理想通りにはいきにくい。難しいのです。もちろん、“起業”した職種によってその点は違います。例えば店舗を構え、来店するお客様からお代をいただくような職種の場合は、営業時間を前もって決めておくことで、規則正しい生活は維持できるでしょう。しかも作業が開店中に完結してしまうような職種の場合は、なおさらです。

でも、“起業”した当初は人もおらず、不規則な日々を逃れられないと思います。たとえばレジを締め、ジャーナルを出力し、会計を合わせ、夜間金庫に入れるためのお金を数える。これは営業時間後にやる作業です。きちんとした方は日報を書いて日々のおさらいをし、翌日の予定を立てて準備を怠らないでしょう。その時間は営業時間後に行なうため、時間も伸びます。さらにそれは、その業態で何十年後も安定したお客様が来てもらえればの話。実際は新たな商圏や商材を仕入れ、勉強する時間も必要です。起業とは常に勉強が求められるのですから。

また、曜日の感覚もあいまいになるでしょう。週休二日制が維持できるかどうかはあなた次第です。日曜日は安息日、といった能書きも“起業”すればどこかに飛んでいくかもしれません。それこそ、起業前には毎週日曜日に感染できていたサザエさん症候群が懐かしく思えるほどに。起業後はちびまる子ちゃん症候群という言葉も忘れてしまうことでしょう。“起業”すると、先に済ませられることは済ませておかねば、という思いに駆られます。なぜなら、いざ作業が重なるとどうにもならなくなるから。そのため、少し暇ができればテレビよりも目の前の作業に向かいたくなります。曜日が不規則になるということは、さまざまなことができなくなります。例えば、“起業”する前に勤しんでいた地元の少年野球のコーチ。見たいテレビ番組、生のスポーツ観戦、子供たちの習いごと送迎、その他その他。起業前に確保できていた余暇や家族との時間すら奪われかねません。

“起業”して最終的な責任者になるということは、部下や下請け業者からの相談ものべつ幕なしにやってきます。お客様からの連絡だって時間を問わずやってくるはず。家族の時間に、容赦なく仕事は入り込んできます。家族との時間は、家族を持つ方にとっては切実な問題のはずです。自由な時間を求めて“起業”したのに家族との時間が奪われる。これは、家族との時間も大切にするという本連載の意図からも外れます。実際、私もこの罠にはまりました。いまだに子供たちには悪いことをしたと思っています。

生活が不規則になる。そのことは“起業”する前は頭では想像できていても、実感としては分からないものです。我が国の場合、在宅作業はまだ根付いていません。仕事は会社でやるもの、という意識が強いです。そんな風潮にあっては、プライベートに仕事が入り込むことは、あまり歓迎されません。いくら工夫によってプライベートとパブリックが分けられるとはいえ、実際は公私混同になってしまいがちです。

それを防ぐには、前もって、ご自身のライフスタイルを見極めておくとよいでしょう。私のようにテレビ番組に興味がなかったり、定期的な課外活動に興味がない場合は、“起業”してもストレスを感じません。そして、あまり不規則な生活も苦にならないかもしれません。家族がいるか、親族の介護などは不要か、についても想定しておいたほうがよいでしょう。特に、家族とは事前にじっくり相談しておいたほうがいいと思います。私の場合は妻が個人事業を生業としていたので、理解は得られましたが。

次回も、起業の欠点について取り上げていこうと思います。


本音採用にブログを連載しています


なんどかFacebookやTwitterでは告知していますが、
昨年八月よりCarry Meさんの運用されている「本音採用」というWebメディアにおいて、ブログを連載しています。

「アクアビット航海記「ある起業物語」」と題して。

連載も長期にわたると、そろそろ一覧で記事を管理したいと思います。

本日4/19、第三十七回をアップしました。

第三十九回 新しい会社で技術力が向上する
第三十八回 転職と新たな会社での洗礼
第三十七回 新たな会社からのお誘い
第三十六回 仕事のピークとその後の反動
第三十五回 正社員として得た経験
第三十四回 家の処分に本腰を入れ始める
第三十三回 途方に暮れる家の処分
第三十二回 家の重荷
第三十一回 はじめて作ったホームぺージ
第三十回 子を持つ責任の芽生え
第二十九回 流れにまかせ正社員へ
第二十八回 Excelマクロ使いから正社員へ
第二十七回 僕が僕であるために
第二十六回 機会を逃さず飛び込む
第二十五回 自立の願いに暗雲が
第二十四回 自立した自分を悟る
第二十三回 スーパーバイザーとして働く
第二十二回 上京してまもなく
第二十一回 前半生のまとめ
第二十回 単身上京に踏み切る
第十九回 ブラック企業でしごかれる
第十八回 社会に出るために足掛かりをつかもうとする
第十七回 社会に出て自らの無力さを感じる
第十六回 社会に出て、プログラミングに触れる
第十五回 大学を出た後
第十四回 大学での生活が私の起業に与えた影響(後編)
第十三回 大学での生活が私の起業に与えた影響(前編)
第十二回 航海記
第十一回 起業のデメリットを考える その5
第十回 起業のデメリットを考える その4
第九回 起業のデメリットを考える その3
第八回 起業のデメリットを考える その2
第七回 起業のデメリットを考える その1
第六回 起業のメリットを考える その5
第五回 起業のメリットを考える その4
第四回 起業のメリットを考える その3
第三回 起業のメリットを考える その2
第二回 起業のメリットを考える その1
第一回 まずはじめのご挨拶

これからも連載はつづく予定ですが、連載の度に追加していきます。

1 2017/8/10
2 2017/8/17
3 2017/8/24
4 2017/8/31
5 2017/9/7
6 2017/9/14
7 2017/9/21
8 2017/9/28
9 2017/10/5
10 2017/10/13
11 2017/10/19
12 2017/10/26
13 2017/11/2
14 2017/11/9
15 2017/11/16
16 2017/11/23
17 2017/11/30
18 2017/12/8
19 2017/12/14
20 2017/12/21
21 2017/12/28
22 2018/1/4
23 2018/1/11
24 2018/1/18
25 2018/1/25
26 2018/2/1
27 2018/2/8
28 2018/2/15
29 2018/2/22
30 2018/3/1
31 2018/3/8
32 2018/3/15
33 2018/3/22
34 2018/3/29
35 2018/4/5
36 2018/4/12
37 2018/4/19
38 2018/4/27
39 2018/5/13


よくわかる株式会社のつくり方と運営 ’13~’14年版


法人設立にあたっては、色々本を読んだ。その最初の本が「会社は誰のものか」。記録によると2014/12/20から2014/12/24に掛けて読んでいる。つまり、私が法人化を意識し始めたのは2014年のクリスマス直前であるようだ。

「会社は誰のものか」を読み、「下町ロケット」を読み、その次に読んだのが本書である。経営者の気構えについての本、経営者が追うべきミッションや夢の本、そして法人化の手続きに関する本というわけだ。そのアプローチは今思い返しても導かれたような順番といえる。

本書は、法人化手続きの実務についての本だ。ただ、実際は司法書士の先生に安価でほとんどやって頂いたため、本書で得た知識を実践することはなかった。しかも、私が設立したのは合同会社であり、本書で主に取り上げられているのは株式会社である。

しかし、本書は読んでおいてよかった。

本書を読んでおいたからこそ、合同会社を薦める司法書士の先生の言葉も検討できた。手持ちの資金があまりなかったので、登記費が安く、公証人による公証を頂かずに設立できる合同会社は悪くない。合同会社は、れっきとした法人だ。西友もユニバーサルミュージックもシスコシステムズもApple Japanも全日空ホテルズもWWE Japanもみんなみんな合同会社である。

私の立場は社長ではなく、代表社員となる。定款で定めれば社長にもなれるが、肩書きに興味がなければ、社長である必要もなさそうだ。

営業内容についても合同会社だからといって、不便を被ることもない。結局、株式会社と合同会社を隔てるのは、手続きに尽きる。設立前も設立後も、制度や手続きといった、商いの本質と外れた部分の違いが主だ。役員や監査役を募り、署名を集める必要もない。もし、株式会社にしたければ、登記料の差額をはらえばアップグレードできるようだし。

合同会社とは、まさに法人成りを狙う個人事業主にとっては適した制度と言えるのではないだろうか。

ほとんどの起業者が株式会社を選ぶ。そんな中、合同会社を選んだ私は、多少変わり種なのだろうか。起業してから数多くの方と会わせて頂いたが、よく質問される。なぜ合同会社にしたのか?どう株式会社と違うのか?話のネタには事欠かない。さらには、株式会社にしなかったことを失敗であるかのようにとられたこともある。しかし、その辺りは問題ない。というよりも、合同会社アクアビットのような零細規模では意味のない事かもしれない。そのあたりの柔軟性を発揮できるのは、今後の私の努力次第ということなのだろう。設立したら終わりではなく、ここからが始まりであることはいうまでもない。まだまだ精進していかねば。

今回の法人化の切っ掛けは妻である。友人の社労士さんに、個人事業主の税金が高くて・・・とこぼしたところ、なら法人化しなよ!とアドバイスを頂いたのが切っ掛けだ。以来、その社労士さんから、税理士の先生をご紹介頂き、税理士の先生からは司法書士の先生をご紹介頂き・・と、次々にご縁を頂き、3ヶ月と少しの後に法人化できた。以来、いくつもの縁を繋いで頂いている。感謝感謝である。

また、人脈作りとともに、私自身の生活も変わった。法人化設立を決断する前、私は伸び悩んでいた。本は読んでいたが、レビューを書く気力が湧かずにいた。スマホゲームにもはまっていた。しかし、法人化を決めてからはきっぱりとスマホゲームは断った。一年間一度もスマホゲームに手は出していない。その分、書くことにエネルギーを使うようになった。この一年、書いたblogの量もかなりのものだ。イベントを開催し、そこでは喋らせてももらった。メディアでの連載もさせて頂けるようになった。よいご提案も頂けている。

結果として本書は、実践としては役に立たなかったかもしれないが、私の気構えには効いたといえる。本書を読んで以来、もう一つの課題であるNPO設立については、様々な本を読んだ。しかし、株式、合同を問わず法人化に関しての手続き本は一切読んでいない。手続きに関する一切は税理士、司法書士の両先生にお任せし、私は人脈作り、書き物などの自分の伸ばしたい点、売り出した点に重点をおいている。それでよいと思う。

‘2014/12/27-2014/12/29


会社は誰のものか


私が会社を立ち上げたのは、今春のこと。その際、参考資料として何冊かを手に取った。しかし、社長の気構えについて書かれた本は一冊しか読んでいない。それが本書である。他に読んだのは全て手続きにかんする実務書である。

結論からいうと、予定通り4/1に登記完了し、すんなり会社設立できた。それには安価で請け負って下さった司法書士の先生の力によるところが大きい。そのため、読んだ実務書はほとんど役に立たなかったのが正直なところだ。役に立たなかったというより、司法書士の先生がほぼ全てやって下さったので役に立てようがなかったというほうがよいか。

ならば事前に読むべきは本書のような気構えに関する本だったかもしれない。ただ、今回の法人化に当たって、一からの気構えは不要と思っていた。それは、個人事業主として山あり谷あり挫折ありの九年間の経験があったからだ。今回の法人化は、その延長上として想定していた。

法人化によって新たに事務所を構えることもなかった。新規事業に乗り出すこともなかった。参画していたプロジェクトを抜ければ良かったのかもしれないが、私の判断ミスで属人的作業を抱え、安易に抜けられなかった。それら制約があったため、当初から環境を変えぬままの法人化を意図していた。そのため、気構えに関する本はほとんど目を通さなかったのだ。実際、本稿を書いているのは、創立してから半年後であるが、納税額や私の自覚は変わったとはいえ、生活に大幅な変更はない。

だからといって本書がとるに足らなかった訳ではない。逆に読んで良かったからこそ、他の同種の本に食指が動かなかったのかもしれない。

私の職種はIT業である。ITバブルの興隆と衰退は業界の端で見聞きしていた。著者の名もIT業界の識者として存じ上げていた。ITバブルに沸くIT業界ウォッチャーとして。そして本書が書かれたのは、まさにITバブルが弾ける直前である。いわば本書は、ITの花形産業として一番華やかな頃を伝える資料である。また、私にとっては本書に書かれた事例が反面教師となるはず。そういったことを本書に期待し、手に取った。

第1章は、「ネット企業を考える」とある。本章は、2005年当時のIT業界の紹介が主だ。2005年といえば、まだSNSという言葉が全く知られていなかった時期。本書のどこにもFacebookは登場しない。フレンドスターやMySpace、さらにはmixiすらもでてこない。通信はYahooがADSLモデムを配りまくり、ADSLがISDNに変わる高速通信の規格として世に広まった時期となる。そのため、動画配信はまだマネタイズには遠く、本章にGoogleは出てきてもYouTubeは登場しない。それが2005年のITバブル終焉直前の状況だった。

しかしそのバブル期に、今のIT業界の骨格は、ほぼ出揃っていたといえる。インフラ、ソフトウェア、ハードウェア、Webの一般的利用からくる広告収入というビジネスモデル。ただ、バブル期故に目立っていた事象もある。それがIT長者の存在となる。著者はベンチャー企業がIT業界を引っ張ってきたことを指摘する。ベンチャーの創業オーナーは大株主でもあり、全ての経営判断を自ら行うことができる。その立場をフル活用し、スタートダッシュとキャッシュの保持に成功したことが強みと分析する。

また、それら企業はさらなる発展の場を金融や通信、メディア、生活インフラに求めるはずと予測する。本書はまだ、ITが集約、寡占の方向に向かうと信じられていた頃の話だ。十年後の今は、インフラがあまねく行き渡りすぎたため、情報インフラの所持が利益に結び付きにくくなっている。むしろ、全ての個人や会社に高速でしかも携帯できる端末が行き渡ったことは、情報の分散化をまねき、他方ではクラウド(この言葉も本書のどこにもない)での情報集約が実現している。

金銭感覚についてもバブル真っ只中の様子が読み取れる。そこには、会社はオーナーのもの、という文化が花開いた時代の、今となっては懐かしさすら感じる思いが付随する。

第2章では、「会社は誰のものか」と名付けられている。

①会社は国家・国民のもの
②会社は株主のもの
③会社は従業員のもの
の三つを著者は提示する。その上で今は「会社は株主のもの」が主流であることを示す。さらに、今後もそうであろうと予測する。

それらの三つの見方を紹介しつつ、本章では会社という組織が社会に産まれた成り立ちと栄枯盛衰が語られる。①は社会主義国家の失敗から成り立ち得ず、③は日本の高度成長の推進力になったことを評価しつつも、所有と占有を混同しがちになる弱点が指摘される。が、やはり著者の意見では株主主体に軍配があがる。その立場で本書も語られる。

ここで著者は企業の支払いの優先順位を引用する。この順番こそが、企業にとっての優先すべきミッションの順番でもあり、企業のステイクホルダーの順序でもある。
①売上(顧客への商品・サービスの提供)
②原材料コスト(取引先への支払い)
③製造販売費用(従業員への給与支払い)
④借金返済、金利支払い(銀行への支払い)
⑤税金(政府や社会への支払い)
⑥内部留保(成長のための再投資用)
⑦配当(株主への支払い)

最初に顧客が登場する。つまり、先にあげた①~③に上がった会社は誰のものかという問いに対し、会社は株主のものであるが、顧客第一との結論が打ち出されている。このあたりは納得のいくところである。綺麗ごとでも上っ面でもなく、実際に顧客と対面して商売を行っていると、その辺りは自然な感覚として身につく。

続いてジョンソン・エンド・ジョンソンの社訓も引用される。それによると、すべとの消費者が一番目に挙げられ、全社員が2番目に、全世界の共同社会が3番目、会社の株主が4番目となっている。つまり、株主は最後に利益を享受する。そしてそれゆえに会社に対して主権を持っている。このことがすなわち著者が本書で提示した、会社は誰のものかという問いに対する答えとなっている。

だが、本書を読んだ結果、私が設立したのは、株式会社ではない。株主不在の合同会社である。これは本章で結論された株式主権の考えと相反する。

私が合同会社を選んだ直接の理由は、登記費用の節約である。それにもかかわらず、先の①~⑦でいえば、結果として⑤のの税金、⑥の内部留保、⑦の配当を拒否した形になっている。

私にとってそのことは特にジレンマではない。⑤~⑦に支払いを回さない分、単価が削減できる。つまり。消費者、お客様への還元に回せているのだ。私は利用者の立場が長い。なので、どうしても単価を下げる癖が出てしまう。よいサービスを安く、を目指す私にとっては、合同会社は何ら矛盾しない形態となる。その場合、株式による出資が得られないデメリットも覚悟の上。

ただしその場合、株主の監視がない分、代表社員たる私の自覚が欠かせない。

その点が第3章「「会社は化け物」と心得よ」に記載されている。

ここではバブルの走りとも云える英国経済を揺るがした南海会社やフランス王立銀行の破産事件、国を揺るがした経済詐欺、近頃ではエンロン破綻とそれと結託していたアーサー・アンダーセンの事例が紹介されている。人は資本や規模に容易に目がくらまされる。

企業がその地位を悪用するのは簡単であることが、本章では述べられる。本書の1章で、ホリエモンこと堀江氏も何度か取り上げられている。例えばニッポン放送乗っ取り事件の下りなど。本書はlivedoor粉飾決算で逮捕される前に書かれているようだ。しかし本書の行間のあちこちで、堀江氏の手法についての懐疑が投げかけられている。図らずも、livedoorに関する逮捕劇が、本章の懸念を裏付けた形だ。

本書の第1章では2005年当時のIT業界をにぎわせた、かなりの数の経営者が紹介されているが、そのなかで著者が評価した人間だけが、2015年も健在である。楽天の三木谷氏、ソフトバンクの孫氏など。これは本書の評価できる点だ。他の方は10年後の今、ほとんど目立たなくなってしまった。結果論ではあるが、会社とは何か、をうまく表現できなかったのだろう。私も他山の石としてはならないと思っている。

そういった堀江氏やその他の経営者の轍を踏まないため、本章では会社と経営者の関係を整えるための信任制度について、かなりの紙数が割かれている。株主が有限責任制の下で守られていることは無論だが、それによって経営者と株主の間に情報の格差が生じ、それによって経営者の暴走が発生することもまた事実。本章では忠実義務と善管注意義務の二つが紹介されているが、この辺りは合同会社の経営者である私も肝に銘じておかねばならないのはもちろんだ。

第四章では、「企業のガバナンスを考える」と名付けられている。その中で、ガバナンスが失われやすい企業のトップ3が挙げられている。規制産業、経団連○○部、世襲企業などだ。

そして、企業ガバナンスはどういう勢力によって脅かされるかについても提示される。経営者、株主、投資家、経済団体、従業員、メディア。私の作った会社は零細過ぎて、ガバナンスを担うのは、役員である私か妻のどちらかのみ。だが、それに加えて顧客を含めても良いのではないか。顧客から経営が独立するのは勿論のこと。しかし、あえて顧客との共存を図る。つまり、顧客をもガバナンス対象として意識すればどうだろう。

第5章「新しい資本主義が始まっている」では、今までの章で株主主権主義が明確となったことを踏まえ、新たな企業形態を紹介する。それは、以下の7つ。

①持ち株会社制度が進む
②「人的資本」が見直される
③社会的責任投資が論議される
④ブランドの価値が高まる
⑤大企業が産業政策を代行する
⑥先祖がえりの可能性
⑦最後には志が問われる

私が作った小さな会社は、まだ無力な存在。設立から半年たった今、利益もとんとん、前年比売上も微増、といったところだ。そんな小さな会社でも、上に挙げた7つのどれかを目指す権利は持っている。

私は②と⑦に賭けたいと思う。特に②。自分の夢や家族との触れ合いを犠牲にすることのない会社。多分、利益は上がらないだろう。株式会社にしたところで上場など不可能だろう。でも、何かしら自分の生きた証が残せれば、と思う。それが私の志である。

‘2014/12/20-2014/12/24


会社のルーツおもしろ物語―あの企業の創業期はこうだった!


今年最初の本は、日本で一時代を築いた企業の創業期をまとめた本書。

夏に実家に帰った際に手に取ったまま東京に戻ってしまい、年末年始の帰省時に返そうと思って持ってきたので、実家にいる間に読了。

手堅く企業の草創期がまとめられていて、産業史として興味深く読めたけれど、財閥系やトヨタは紹介されているのは当然として、ダイエーが載っていることに出版時期の綾を感じた。また、阪急は取り上げられているのに東急や西武が選から漏れていることも興味深い。

まずは軽めの読書体験スタート。

’12/1/1-’12/1/2