吹き替え版を映画館で観ることは滅多にないけれど、本作は家族の意向もあって吹き替え版で観た。それもあってか、劇場内は小さい子供達で沢山。予告編を観た感じでは子供向けの内容だろうなと思っていたけれど、私の予想以上に子供が多かった。

潰れかけた劇場を歌で救う、という内容はそれだけだとありきたりに思える。でも、本作はステージで歌を唄う登場人物たちに細かくキャラ設定されている。それも子供を飽きさせないよう手早く。また、筋書きも登場人物たちの抱える事情をうまく演出に組み合わせ、奥行きのあるストーリー展開を展開している。その辺りの演出上の配慮には好印象を抱いた。

潰れかけた劇場のオーナー、コアラのバスター・ムーン。極度のあがり症だが音楽が歌うのも聞くのも大好きな、ゾウの少女ミーナ。彼氏と組んでパンクロックを演っている、ヤマアラシのアッシュ。父が頭目の盗賊団に行きたがらず音楽の道を目指す、ゴリラのジョニー。陽気な性格でステージデビューを遂げる、ブタのグンター。25人の子育てに奮闘しながら、自分の可能性を追いたい、ブタのロジータ。音大を出たプライドを持ちながらストリートミュージシャンで生計を立てる、ネズミのマイク。彼らは種族も境遇もそれぞれに違う。それぞれが自分の生活に苦労しながら、共通するのは音楽が好きなこと、そして音楽で自分を表現すること。

多分それは、本作で声優に起用された俳優や歌手にとっても同じに違いない。本家も吹き替え版も関係なく。今回は吹き替え版を鑑賞したわけだが、皆さんとてもお歌が上手い。音楽の好きで心の底から楽しんでいる感じがとてもよかった。特にミーナを演じたMISIAはさすがに上手かった。皆、音楽が好きで演じるのが好きで本作に起用されたことが良く分かる。

SINGというタイトル通り、本作には歌があふれている。英語圏の映画だけに、洋楽が好きな人にはおなじみの曲が何曲も登場する。1960年代のGimme Some Lovin’や My Way、そしてVenus。1980年代のWake Me Up Before You Go GoやUnder Pressure。90年代、00年代、10年代もレディー・ガガやテイラー・スイフトとか、曲名が出てこないけど知ってる曲ばかり。欧米の世代を超えて通じる曲の多さには嬉しく、そして羨ましくも感じる。

我が国には本作で取り上げられたような、世代を超えて歌われるような曲はどれぐらいあるのだろう。本作を観ていてそう思った。例え落ちぶれて身ぐるみ剥がされるまでになっても、喉が元気なうちは歌がある。そして、落ち込んだ時に唄える歌が口ずさめることは、どれだけ気が楽になるか。日ごろから忙しい生活を過ごしていると、分かっていてもなかなかそれに気づかないものだ。音楽の力とは言い古されているかもしれないが、確かにある。そしてカラオケボックスの中よりも、不特定多数の人々の前で歌い上げるという経験によると思う。人前で声を上げて自分を主張することは、人生を変える力を確かに持っている。本作は、そんな音楽の力に気づかせてくれる。

そんな余韻を味わいながら映画館を出て、家族で向かったのはパルテノン多摩。Brass Festa多摩 2017を鑑賞した。吹奏楽の祭典。ホールに音楽が響きわたる。演目の中には時代劇の有名テーマ曲があり、日本に伝わる唱歌の吹奏楽アレンジがあり。これがかなり胸に響いた。我が国にもこういった歌があるのだ。そのことにあらためて気づかされた。そしてアンコールでは観客も交えて「ふるさと」を唱和した。これがよかった。ただ聞くだけでなく、自ら歌うことの効能といったら!

本作の登場人物たちも、唄うことで、自分を表現することで自分の人生を変えようと努力している。多分それは、本作をみた観客にとっても言えることだと思う。人生はSINGすることで、良い方向に持っていけるはず!

’2017/03/20 イオンシネマ多摩センター


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