京極氏の本は出版された単行本はほぼすべて読んでいるけれど、この本は優れものの部類だ。

このところの氏の作品は巷説百物語シリーズに見られるように、百鬼夜行シリーズにない丁寧すぎる心理描写が目立つようになってきた。その路線の終着点が、先年著者が世に問うた「厭な小説」だと思っていたけれども、それよりも数段、本作のほうが厭な気持にさせられた。

読んでいる人の弱さやいやらしさが存分に暴かれていくような前半は厭な気持ちにさせられっぱなし。ところがパタンと衝撃の事実が明かされて以降は打って変わってその厭らしさが人のこころの不思議さへの驚きへとかわっていくからすごい。

構成といい、厭な気分にさせる筆致といい、文句なし。

’11/10/23-’11/10/25


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