早朝から起きて前夜の仕事の続きを。こうやって旅先でも仕事ができることに感謝。昨日の旅日記の中で、9月末で常駐から解き放たれた、と書きました。ただし、常駐から解き放たれても仕事からは解放されません。むしろ旅をしながら仕事をするためには工夫がいります。それは私にとって望むところ。旅ができるのであれば旅先で仕事をすることもなんら苦にはなりません。喜んで旅先での仕事を片付けます。

さて、今日は妻の学びの日。私も久々の北海道の一人旅を満喫する日。ただ、その前に一つだけ用事がありました。それはメダイ探し。メダイとは聖母マリアが彫られたメダルのこと。私も妻もクリスチャンではありませんが、一、二回ほど夫婦で教会のミサに行ったことがあります。そして妻は方々でメダイを買います。それを首に掛けていると、メダイが妻を守ってくれるのだそうです。妻の身に何かが起こりそうになると、不思議なことにメダイがなくなるのです。身代わりのように。この旅の前にもなくしたばかり。そこで新たなメダイを買うため、教会を探すことから今日の行動は始まります。

実は前日の余市でも教会を探しました。ところが見つけられませんでした。そこで前の晩、ススキノから歩いて帰る時、教会の場所を調べて立ち寄りました。それはホテルの近くにある「北海道クリスチャンセンター」。そのため、私は2日目の車をクリスチャンセンターの近くにあるタイムズカーシェアリングで予約しました。2日目の相棒もソリオ君です。ところがホテルをチェックアウトし、「北海道クリスチャンセンター」に向かったのですが、そこには妻の求めるメダイがありません。他に売っている場所がないか尋ねたところ、紹介されたのが「カトリック北11条教会」。さすがは札幌。クリスチャンも教会が多い。妻はここで無事にメダイを入手。あとは妻を学会会場の近くまで送るのみ。メダイを得たことで旅の無事は約束されたも同然。

今年の第76回矯正歯科学会はさっぽろ芸文館、ロイトン札幌、札幌市教育文化会館の3カ所で行われています。その近くで妻を下ろします。そして私は南へと向かいます。とその時、私のFacebookのメッセンジャーに着信が来ました。実は昨夜、余市と小樽の写真をFacebookにアップしたのです。それにコメントをもらったのです。「北海道いますよ〜」と。それは仕事を介して知り合った横浜の方からのコメントでした。「どこかのCaféで偶然会うかもですね~♪」とコメントを返した私。するとそれを受けてメッセンジャーで「会いませんか?」。これにはシビれました。こういうご縁が生まれるからSNSは侮れません。この頃すでに私はFacebookへの依存度を少しずつ減らそうと考えていました。だからなおさらこのメッセージが刺さりました。このご縁をいかさない手はない。ただ、お会いするタイミングをどうするか考えねば。なにしろメッセンジャーを受け取った時、私はすでに札幌市街を抜け、真駒内公園を過ぎようとしていましたので。そこで夜に会えないでしょうか?とメッセージを返したところ、OKのご返事が。ちょうど妻とは夜に札幌で落ち合い、ご飯を食べてから千歳に向かおうと約束していました。なので、夜に急遽札幌での飲み会が決まりました。

段取りが決まったことで、私はさらに南へと向かいます。私が向かう先はアシリベツの滝。日本の滝百選の一つです。私は生涯の目標の一つに百選の滝の全制覇を掲げています。札幌の近くにある百選の滝といえばこのアシリベツの滝ぐらい。白老にあるインクラの滝も検討しましたが時間がなさそう。なのでアシリベツの滝を訪れ、その後、夕張に向かう。それが私の計画でした。

そんなふうにアシリベツの滝に向かった私ですが、そこは名うての観光地、北海道。やすやすとは私を滝に近づかせません。運転している私の前に現れたのは謎のモアイ像。「な、なんや、、、あれ?」。度肝を抜かれつつ、いったんはその場を通り過ぎた私。しかし、強烈な印象が脳内でフラッシュバックします。そして、私を強い力で引き止めます。こんなネタをやり過ごしてええんか?という潜在意識からの声。かつて、いや、今もモアイと呼ばれる私がモアイ像を見過ごしていいのか。自分の分身を無視して先に進むことなかれ、と私の中のモアイが何かを告げます。

そこでブレーキを掛けた私。引き返して真駒内滝野霊園という大きな門の前にある広大なスペースに車を停めます。門の中にも車を乗り入れられたのですが、いったん中に入ると最後、二度と戻れないのではという根拠のない予感が私にそれ以上の行動をさせません。不気味なこと極まりないモアイの立像。門の向こうに車を走らせると、必然的に入場者を見定めるように居並ぶモアイの前を通り過ぎなければなりません。待ち構えるモアイの群れ。怖い。

私は今まで何も知らずに生きていました。ところがすでにモアイ軍は札幌に侵攻していたのです。ここは何? なんかの宗教? あまりにも意図が見えず、戸惑う私。門前に車を停めたことすら、とんでもない間違いだったのではないか。私を第二の人生に導く門を、今くぐってしまったのではないか。おもむろに奥から謎の老人がやってきて、「お久しぶりです、マスター」と私を呼びやしないか。

事態がそのように進んでいたら、私が今、この文章を打つことはなかったでしょう。モアイ軍に担がれたみこしに乗ってイースター島に凱旋していたかも。そう考えると、モアイの軍勢を写真に撮っただけでそれ以上は深入りしなかったことは賢明な判断と言えます。

その日の夜にFacebookの書き込みに対し、札幌の方からコメントしてもらった情報によると、この地は札幌では良く知られたスポットであるらしい。ここを訪れてから10カ月近くたち、ようやく真駒内滝野霊園のことを調べてみました。うん、ますますわからない。安藤忠雄氏の設計による頭大仏?モアイ像?ストーンヘンジ?うーん、これは再度訪れてみなければ。不気味さのあまり、モアイ像の写真を撮るだけで逃げてしまったことが悔やまれます。賢明な判断どころか、臆病な自分に喝!

モアイ像の呪縛から逃れた私が向かったのは滝野すずらん丘陵公園。広大な駐車場に車を停め、早速滝を目指します。この公園、とにかく広い。かなり整備された公園との印象を受けます。整然とした敷地の中に紅葉した木々がぽつぽつと立っています。吊り橋とのコントラストがとても美しい。いわゆるフォトジェニックな風景がそこら中にあります。そして私に撮られるのを待っています。アシリベツの滝を見たいとの焦る気持ちもありますが、ついつい周りを見渡しながらの移動します。歩くこと十分ほどでアシリベツの滝に到着。これで私にとって24カ所目の日本の滝百選です。緞帳のような広大な崖から左右に別れた水流が、手前の朱塗りの橋の下をくぐって川となり、流れていきます。音も水量も控えめ。すでに盛りの夏を過ぎた今、最盛期には遠いのでしょう。ですが、それをおいてもやはりよい滝姿。平日のためか、公園の中ではほとんど人を見かけませんでした。ですが、アシリベツの滝では滝愛好家と思われる男性が一心不乱に滝の写真を撮っていました。私も同じく、滝の前で長い時間を過ごしました。ですが、いつまでもいるわけにはいきません。

さきほど歩いてきた道を戻ります。この公園にはあと三カ所の滝があるらしく、せっかくなので滝をめぐろうと思いながら。次に向かったのは白帆の滝。この公園は滝野と名付けられているとおり、もともと滝が集まっていた場所を公園として開発したようです。白帆の滝は小ぶりで水量も控えめでしたが、人影の絶えた滝の前で存分に滝を眺めることができました。

続いては鱒見の滝へ。道中、左側にお堂があり、立ち寄ってみました。このお堂の前には弘法大師の立像が辺りを睥睨しています。その横には牛に乗る大黒様の像が。なにやらご利益をいただけそうな感じ。私もしっかりお参りしてきました。北海道の旅が今後の私に糧となるように、と。あとで調べたところでは、このお堂は北海道八十八箇所の第七十番札所 輝光山 弘法寺奥之院というそう。鱒見の滝道場と看板が掲げられていましたが、修行者も訪れるのでしょうか。

鱒見の滝はそこからすぐのところにありました。アシリベツの滝は少し滝つぼから観瀑台まで離れていましたが、こちらは滝の間近まで寄れます。なによりも、この女性的な滝姿。一枚岩が丸みを帯び、水流もなだらか。これは私が観てきた滝の中でも優美な姿は一番かもしれません。ここでも時間の過ぎるのを忘れて見入っていました。

とはいえ、時間には限りがあります。すでに三つの滝でかなりの時間を費やしてしまいました。滝野すずらん丘陵公園はかなりの敷地の広さを持っており、滝の移動だけで数キロは歩きます。滝野すずらん丘陵公園の地図をみると、私が訪れた範囲などほんの一部。多分、公園全体の1/6にも満たないはず。また機会があればここには来たいと思います。一つだけ行けなかった滝もあったし。

さて、次に向かうのは夕張。ところがすでに時刻は3時に近い。なので、行けるだけ行ってみようと車を走らせます。夕張は一回目の北海道一周で訪れたきり。その時も寂れた雰囲気と、私と連れに起こったアクシデントで印象に残っています。そして今や、夕張と言えば全国でも最悪の財政赤字の街。JRの夕張線も廃止が決まっているとか。それまでの間に再訪を果たしたい。

そんな思いで車を走らせます。ところが慣れないため、カーナビに頼ったのが間違い。遠回りを強いられてしまいます。後で地図を見たところ、上野幌まで札幌市街にもどり、そこから国道274号線に乗って北広島に向かってました。時間のロス。長沼町を抜けて由仁に向かう道中、これぞ北海道といわんばかりの見事な地平線を堪能しつつ、私は急ぎます。ですが、どう考えても夕張まで行ってる時間はなさそう。なので由仁で断念。由仁駅を訪問し、駅と周囲を散策することにしました。駅鉄です。

今回、どこか一つは北海道の過疎駅を訪れたいと思っていました。1度目の旅では網走や原生花園駅を。2度目の一人での一周旅行では函館、森、帯広、釧路の駅前で寝袋にくるまり、稚内、岩見沢、余市、札幌、千歳、塘路、愛国、幸福の各駅を訪れました。それなのに、当時の私はあまり駅や鉄道には関心がなく。もったいないなあ、と。そこで今回はどこか一駅でも、過疎の現実をみたいと思っていました。

かつては蒸気機関車が行きかい、にぎわっていたであろう由仁駅。今は閑散としたもの。広大な駅構内には列車を待つ人の姿が皆無。それもそのはずで、平日でも岩見沢と苫小牧を結ぶこの線は、1日七本しか列車が来ないのです。室蘭本線と本線を名乗っているのに。千歳から帯広へ抜ける石勝線のルートからわずかにはずれ、完全に過疎化しています。私の求める通りに。広大な駅構内がかつての繁栄をしのばせるだけに、なおさら侘しさがにじみます。これぞ旅情と言うべき瞬間。

ただ、そんな旅情も私が気楽な旅人だから感じているだけのこと。本来はこの姿ではダメなんですよね。旅情も駅や線路があってこそ。過疎が進みすぎると、旅情も何も駅や線路そのものが撤去されてしまうのですから。特にJR北海道は全国六つにわかれたJRでも財政的に最も厳しいとか。夕張の廃線もそうだし、由仁駅もこのままでは厳しいでしょう。

もう、保有する過疎路線は廃止するしかないのか。何らかの手段で復活は見込めないものか。貨物こそが、突破口のような気がします。ドライバーの不足が深刻化する運送業界。その突破口の一つとして、鉄道貨物に光が当たっているという話を何年も前に聞いたことがあります。乗客の輸送には需要がなくとも、貨物にはまだ望みがあるのではないか。多分、由仁駅に貨物列車が停まることはもうないでしょうが、苫小牧の港湾と旭川方面をつなぐ貨物ニーズはあるかも。それが由仁駅を少しでも延命せんことを。そんなことを思いました。

なまじ、由仁駅に連結された箱物のホールが立派だっただけに。なまじ、無人の待合室に手作り感があっただけに。なまじ、駐車場の横の公園で十人ぐらうの子供の歓声が聴こえただけに。私は旅情より、由仁駅に活気が戻る日を思わずにはいられません。

すでに時刻は五時を回っています。札幌で私を待つ人がいる。帰らないと。「ヤリキレナイ川」の看板に後ろ髪を引かれつつ、同じ道を通って車を飛ばします。夕張にはきっとまた来る、と誓いながら。

妻との待ち合わせ場所は札幌駅の北口。朝に約束した方も。慣れぬ道を走りやって来たのですが、ところがカーナビ任せだとどこにいるのか全くわからず。ついには札幌の南から北へ抜ける道で迷ってしまいました。それでも何とか妻と合流し、車の荷物を全て下ろします。そこからタイムズカーシェアリングの駐車場へ。その瞬間がまさに返却予定時刻にぴったり。ギリギリでした。そこから待ち合わせている方と合流し、さらに妻とも合流します。

そして向かったのが居酒屋日本一別宴邸。場所はなんと、今朝まで泊まっていたホテルマイステイズの下。昨夜も気になってはいたけど、ススキノに吸い寄せられてしまい、このお店には行けなかったのでした。ところがこのお店がおいしくおススメなのだとか。まさに下暗し。私たちが着いた時、そこにはお二方がお待ちになっていました。そのうち一人は私も既知の方。妻にとってはみなさん初対面。新鮮な顔合わせですが、とても良い飲み会となりました。料理もお酒もおススメというだけあって見事なもの。こぼれ寿司や牡蠣など、昨夜に続いて北海の幸を堪能しました。お呼びいただいた皆様には感謝しかありません。

そんな宴だからこそ、時間は速く進みます。いつの間にか、千歳に向かうエアポート快速の時間が迫って来ました。これに乗らないと帰りの飛行機に乗れないかも。それで私たちだけ辞去することに。慌てて札幌駅に向かいエアポート快速に乗ります。楽しい北海道の旅も終わりを迎えました。最後に飲み会というサプライズも設けていただき感謝です。ちなみにここでお会いした三名の方とは、その後も横浜や東京で会っています。また、今後もお会いすることでしょう。ご縁とはかくもうれしいもの。これからも大切にしたいです。

千歳でお土産を買い求め、両手を荷物だらけにしてスカイマークの搭乗口へ。そして羽田へと。旅の終わりとはいつも寂しい。ですが羽田への機上で、私には寂しさの中にも充実を感じていました。旅を誘ってくれた妻には感謝です。また札幌でうちら夫婦をお誘いしてもらった方々にも。

実はこの記事をアップしようとしたのが、北海道の全域が停電した地震の前夜でした。アップを延期した翌朝に地震が発生。震源地はこの記事にも登場した由仁駅から45キロぐらいしか離れていません。北海道にお住いの方々や、自然、過疎化した駅がどうなってしまったか。気になっています。私にできるのは、北海道に再び人が賑わい、しかも自然が豊かであり続けること。それを願っています。


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