最近、女性の仕事環境についての話題に事欠きません。

 サイボウズさんのワーキングママを応援するCM「大丈夫」の反響や、フリーアナウンサーの長谷川豊さんのブログ「保育環境を整えれば子供を産む、という大ウソ」への反論など。安部内閣も少子化問題に取り組む姿勢を見せていますし、株式会社ワーク・ライフバランスさんの活躍も目覚ましいものがあります。つい最近は、マララ・ユスフザイさんがノーベル平和賞を受賞し、講演の感動も記憶に新しいです。

 私は、色々な会社の様々な組織に身を置いてきました。その中には、私より遥か上の能力と意欲を持つ女性も少なくありませんでした。そしてそれらの方々が、結婚で退職し、一番脂の乗った時期を子育てに費やすのを
目の当たりにしてきました。また、職場が一緒だった訳ではありませんが、私の母も、妻の母も、そして妻も結婚出産を機に研究者という立場を諦めねばなりませんでした。彼女たちの心中には、男の私からは想い及ばぬ悩みや苦みがあったことでしょう。そんなこともあり、私はだいぶ以前から女性の仕事環境については関心を抱いてきました。

 上に挙げたこのところのトピック。これらは、いずれも人口問題と関わりを持っています。日本においては、切実な少子化の危機が叫ばれています。識者の意見も手段こそ違えど、少子化対策の必要性を訴えています。マララさんが訴えるイスラム文化圏に顕著な女性蔑視も、武闘勢力の視点からは、軍人増加の為の正当な理由なのでしょう。女性が社会進出すると出産や子育てに従事する母数が少なくなりますから。軍隊は軍人で成り立っています。軍人の数が少なくなることは、軍隊を組織として維持する上で危機となります。

 日本の少子化問題も実は同じような構造を持っています。このまま出生率が悪化すると、上の世代を支える下の世代が負担に耐え切れず、社会の仕組みが崩壊しかねません。戦闘にこそ従事しないとはいえ、社会基盤を支える戦士の維持という意味では、イスラム文化圏のそれとあまり違わないのかもしれません。つまり、少子化問題とは、突き詰めて考えると、組織の中の年齢層のバランスが歪なことに問題があるのではないでしょうか。子供が少ないこと自体が問題ではないようです。

 とはいえ、女性の立場に身を置いて考えてみると、今の状況の理不尽さを改善したい思いも分かります。組織の維持と、なりたい自分への思いを両立させることは困難です。

 どうやれば、女性が社会に進出でき、しかも出生率を向上させられるのか。育児施設や助成金によって、出産できるだけの基盤を国が整備することも必要でしょう。職場復帰に向けての職場の取組も大切でしょう。

 でも、私が思うにはは、一緒に育児するパートナーの理解と存在が不可欠だと思います。上に挙げたサイボウズさんのCM「大丈夫」には、それが如実に出ていると思います。最後までここにはパートナーである夫が登場しません。全ての負担が母である妻に掛かっているかのような演出になっています。ムラ社会も消滅し、近隣同士での育児助け合いが出来にくくなっている今、この演出は、実感として迫ります。

 最近は、サイボウズの青野社長を始め、イクメンと呼ばれている人々が増えつつあります。全休・半休などの育休を一定期間取り、家事・育児に協力するパパ。素晴らしいことです。しかし、一般の組織は、まだイクメンに対して意識が希薄です。積み重なる決裁書類、連続する会議、会議の前には資料をそろえ、会議の後には次の施策への準備。次々と迫りくるタスクを捌くのはその方の自己責任です。とはいえ、育休を取って、それらの業務リスクを増やすことに理解ある会社がどれほどあることでしょうか。体制を厚くし、タスクを分担して行える組織はまだよいです。しかし、実際は予算の問題で人員を増やすことは難しい組織がほとんどではないでしょうか。

 しかし、これらを克服しないと、その組織の生存すら危うくなっていることに気が付かねばなりません。組織が相手とする市場・社会が少子化によって崩壊してしまえば、その組織も生きてはいられません。今の自分が充実していれば、あとの世代は知ったこっちゃない、と吼えてみたところで、自分の一生を賭けて叩き出した成果が消滅することになっても尚、今の仕事に邁進できるでしょうか。

日本人は勤勉で、与えられた仕事に対しての責任感も高いと思います。これは素晴らしい美徳ですし、後世につなげていかねばなりません。しかし、この勤勉さが、パパさんの育休取得の妨げとなっているように思えます。それには、組織のトップや管理職の人々が垂範して、組織の考え方を変えていかねばならないと思います。

 働くママさんの社会進出と同じぐらい、働くパパさんの家庭大切が必要。そう思います。

 上に挙げた長谷川さんのブログではどちらかが専業主婦/主夫になることを提唱されていました。そこまでやる前に、まずはパパとママの二人が毎日定時に上がれ、必要な時に休みが取得できる。まずはここから始めてみないと。


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最終更新日: 12月 21, 2014

2 thoughts on “ワーキング夫婦について

  1. 水谷 学

    こちらに初めて書き込みします。
    有給休暇って何なんだろう?
    って特に最近考えさせられます。
    同じ職場に明らかに仮病?を使って午前中半日年休を頻繁に取る先輩がいます。
    定年間近ですが、仕事の能力もあり人望もそれなりにあり、上からの評価もそれなりに良いのでしょうが。
    休日返上して労働時間に当てるはずの日を前日になって有給休暇の届けを出すのも当たり前。
    ちょっとそれって人としてどうなの?思います。
    先月半ばに久びさに風邪を引きまして珍しく会社を休みました。
    年齢を重ねて風邪をひくと最後は午後になると微熱が咳が止まらなくなる傾向にあります。
    新田次郎氏の描く武田信玄の労咳の症状によく似ているので昔から気になっています。
    子供達は2人とも恐ろしく頑健で小さい頃風邪を引いて寝込むということも殆ど無く、育児休暇らしいものを取得した覚えがありません。
    子会社化された2年前以降収入が激減し、有給休暇を取って別の働き口を探そうかと思ったこともありますが、それは流石に良心が咎めたのでやりませんでした。
    女性の社会進出ですが、私の妻は結婚して会社を退職しましたが、今考えてみればもったいないことをしたなと思います。
    数年前に生死に関わる大きな手術を経てから考え方が変わったのか、PTA活動や趣味のサークル活動の実行委員をやったりするようになっています。
    お金をもらえないボランティアですが、人との結びつきからいろいろなことが学べると言う点では見逃せない利点があるものです。
    滝山城のことを調べている内に地元で城の領域を保全したり案内したりするボランティア団体があることを知りました。
    定年後にはMTBで滝山城に通うのも健康維持に悪くないなと勝手に想像して盛り上がっています。
    次回のMNY旅行の最有力候補は滝山城、次点河村城です。
    滝山城はあまりにも広大な上一度の踏査では廻りきれないらしいです。
    河村城は北条流の畝堀(山中城の障子堀のスケールを大きくした感じ)が残されていて圧巻です。
    最近加沢記という滋野一族の活躍を記した古文書の現代語訳のブログに嵌っているので、中之条あたりの真田ゆかりの城や温泉を巡るという欲望が高まっています。特に嵩山城の麓には道の駅があり、ここで車中泊をして嵩山へ登り、中山平の道の駅の温泉で汗を流すということを計画しています。これは家族連れでは流石に強行軍なのでMNY旅行で実行してみたいので如何でしょうか?

  2. 長井祥和 Post author

    水谷さんん、おはようございます。ありがとうございます。

    その先輩も、有給範囲内で取得されているのならば、それも良いかもしれませんよね。むしろそのことで水谷さんたちの負担が重くなっているのであれば、組織としてはそちらのほうが問題のような気がします。私も内情を知らないので、有効策が書けないのですが、効率化が図れるとよいのですが・・・単純事務作業をIT化できるとか。

    お体については、お互い気を付けたいですよね。私も10月の無理がたたって、この2か月は睡眠はとるようにしています。また、私も育児休暇という名目ではありませんが、娘たちの幼稚園のイベントには欠かさず顔を出すため、休みとかは頂いていたように覚えています。

    あと、奥様のボランティアですが、良いことだと思います。私も学童の役員をやったり、自治会の役員をやったりしました。特に、2年前にやった自治会の総務部長という役は、普段の仕事で深夜帰宅してからの作業となったので、かなり大変でした。でもそのお蔭で色んなつながりが出来たのは得難い経験でしたね。

    城巡り、是非とも実行しましょう。3月に延期となったのは残念ですが、春の芽生えを感じつつ山道を歩くのは喜ばしいことですね。

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